学 科 問 題


 平成15年11月2日(日)に神奈川県相模原市総合体育館にて実施される、神奈川県東部地区剣道段位審査会(剣道三段以下)における学科問題です。
 初段は一問です。二段・三段共通問題は必ず出題されます。もう一問はそれぞれの段位の出題から一問出されます。


初段(必須)
○道場や外での感じのよい挨拶のしかたを記しなさい。

 挨拶は、私たちが人間として社会生活をしていく上で円滑油となる、非常に大切なものの一つです。
自然体から相手を注目し、上体を静かに約30度(会釈は15度)前に傾け、相手への敬意を示す動作です。
 挨拶の挨はひらく、拶は迫るの意があり、心を開いて相手に迫る、押し合うと云うことであるので、剣道でもそうであるように、相手が挨拶をしてくれるのを待っているのではなく、先をとって挨拶をしたいものである。
 また、「形は心をあらわし、心は形にあらわれる」というように、ただ形式だけの挨拶になってはいけません。剣道は昔から「礼に始まって礼に終わる」と言われてきたように、剣道を通じて身体を鍛えるとともに心を養い、道場だけでなく、どんなところでも、どのようなことがあっても、他人を侮ったり、卑屈になったり、傲慢になったりするようなことがなく、どのような人に対しても、敬い尊び、礼をつくし、心のこもった挨拶を心がけたいものです。

二段・三段 共通(必須)
○剣道で礼儀を大切にするのはなぜか。
 剣道のような対人関係の武道は、打突するたびごとに非常に刺激が強く、ややもすると原始的な闘争本能のみの単なる打ち合いに陥りやすい。そのために礼儀によって人間的に統率し相手の人格を尊重することが大切になるのである。また、自分の弱点を打突してくれたとき、自己の力の不十分さ、技術の足らないところを深く反省して、相手が自分を直接教えてくれたという感謝の気持ちをもつことが重要で、そのために相手に対する礼儀を大切にしなければならないのである。
二段(二問中一問出題)
○かけ声について述べよ。
 剣道におけるかけ声は、次のような効果があります。
  大きな声を出すことにより、自らを励まし、気勢を増し、恐怖の心をなくし、攻勢に出られる。
  相手に驚きや恐れを与える。
  無心になることができる。

  心気力の一致をはかれる。
  打突の瞬間に声を出すことによって速く、強く冴えた打ちになる。
 気合いとは、全身に気力を充満させ、少しの油断もなければ邪念もない状態をいう。
 初心のうちは、相手に威力を感じさせるくらい、力のこもった、腹の底からの発声を心がけることによって、気合いが徐々に育成されるのである
○五つの構えについて記し各々を簡単に説明せよ。
 構えには次の中段・下段・上段・脇・八相の構えがあり、「五行の構え」といいます。

中段の構え
 
「常の構え」、「正眼の構え」といわれるように、攻防に最も都合がよく、理想的な構えです。剣先を相手の中心に付け、自然体の姿勢から右足を前に出し、左足をへその前に置き、握り拳ひとつぐらい出すようにします。
下段の構え
 「守りの構え」といわれますが、八方の敵に応じることのできる構えといわれます。相手に隙があれば直ちに攻撃に転ずることが可能な構えでなくてはなりません。中段の構えから竹刀を下げ剣先を延長線が相手の両膝の中間に付けるようにします。
上段の構え
 「火の構え」といわれる最も攻撃的な構えです。相手の技の起こり頭を一刀で制する気持ちで構えます。中段の構えから竹刀を頭上に上げ両腕が顔の前で三角形を作るようにします。左上段、右上段ともに双手と片手がある。 
脇構え
 「陽の構え」といわれ、相手の出方に応じて竹刀を長くも、短くも使い分けることができる構えです。中段の構えから右足を一歩引き、手元を右脇に引き寄せ竹刀の先を水平よりやや下げ、剣先を身体にかくして相手から見えないようにし、竹刀の長さを知られないようにします。
八相の構え
 「陰の構え」といわれ、自ら攻撃を仕掛けるのではなく、相手の出方によって攻撃に変わる構えです。中段の構えから左足を一歩踏み出すとともに左拳を右乳頭部の前に、右拳を口元の高さにします。 抜いた刀と鞘が八の字をなすから八相という。また、瞬時に八方の敵に対応できるから発早とかく流派もある。
三段(二問中一問出題)
○三つの隙について述べよ。

 相手が油断したり剣道で言う四戒などの気持ちを持ったときの「心の隙」、この隙が現れないように不動心・平常心でを養うことが大切です。 相手の技の起こり頭や技の尽きたときなどの「技の隙」、打とうとうところや出るところ、退くところなどで隙が生じないように気を持って攻め隙を作らないようにすることが大切です。・技を出したり、打突に失敗したときなどに体勢が崩れ、充分な残心がとれないようになった「身体の隙」を三つの隙と言います。

○懸待一致について説明せよ。
 「懸」はかかりで打突していくこと、「待」はまつで応じることである。「懸待の一致」とは攻撃と防御が表裏一体をなすもので、攻撃中も相手の反撃に備える気持ちをうしなわず、防御にまわっている時でも常に攻撃する気持ちでいることの大切さ、柏手を攻め打突する技がそのまま防ぐ技となるように、また防ぐ技がそのまま攻める技に変化するように心がけなければならないことを教えたものである。


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