5月9日。水。晴れ。室蘭。2689/6キロ。
移動距離6キロは、宿からフェリー乗り場までのもので実質走行は0。
昨夜は本州最後の夜ということと、翌日はフェリーの旅で自転車は休みなので、久しぶりに少し飲んだ。地元の「ほっけ焼き」で「田酒」を冷で二杯。
乗船待ちで自転車は私一人だった。お爺ちゃんが異様な格好をしているから、乗客案内をしている事務長さんの好奇心を引いた。トランシーバー片手で、仕事の合間を縫って、会話が弾む。「うわ〜っ!沖縄から!72歳ですか?」十分に敬意を払って頂いた上、最後に制服に身を固めた事務長さんの先導で、静々とVIP待遇の乗船をした。
船は6700トン。津軽海峡は波一つ無く、水鳥が低く舞っている。まず風呂に入り2700キロの垢を落とし北海道700キロの英気を養う。ゆったりとした客室の船窓から右手に下北半島を眺め、「はるばる来たぜ」の感慨に浸った。
乗船6時間半。午後8時前、下船準備をしていたら、先ほどの事務長さんの姿が見えたので、室蘭の宿をお尋ねしたら、近くて手ごろなホテルを紹介してくれた。ところが、それを耳にした船客の方が、「そこは満員です」と教えて下さる。下船準備で忙しい中を案内所のお嬢さんが、次々と電話して宿の予約を取ってくれた。
PHSの圏内に入ったのか、私の携帯電話のベルが鳴った。札幌の友人「阿鬼三角」さんが、宿の心配をして電話をくれたのだ。
四国は真夏日だというのに、ここ北海道の山には雪が残っている。北へ行くほど気温は下がる。しかし人情の温度は反比例する。はるばる来た北海道は「外地」ではないようだ。
鳥低く 津軽海峡 春の風
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