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     ワックスのちょっと難しいお話

 

ワックスを染みこませる原理

滑走面にワックスを載せてアイロンで暖めると、滑走面は熱膨張します。滑走面の分子の数は熱膨張しても変わらないので、分子と分子の隙間が開くということになります。結晶部分は隙間がせまいのでアモルファスの部分の隙間に小さなワックスの分子が入り込むというものです。

時間が経つほど染みこむ量が多くなりますが、ある程度時間が経つと一定になります。温度により熱膨張の程度、つまり分子の隙間が開く量が決まっているからです。また温度が高いほどその量は多くなりますが、温度を上げすぎると、滑走面が溶けたり、変質(正確にいうと結晶化)したりしてしまい、逆にワックスが染みこまなくなります。

 

 

ワックスを深く染みこませるには

ワックスを塗ったら20分以上、できれば一晩中冷やしてからスクレイプ、ブラッシングし、それからさらにワクシングすることです。ワックスの種類は、最初は滑走面の保護のために低温で溶けるベースワックスや、暖かい雪用の柔らかいワックスから始め、徐々に硬くしていきます。

その期間と量は、1週間から4週間かけて9回以上から50回までとワックス会社は推奨しています。

 

 

クリープ現象の利用

物体は何でも力を加えると変形し、その力を抜くと元に戻る"弾性"があり、限度を超えると、たとえば引っ張った場合は延びたままになるか、または切れてしまいます。限度以内の力であれば、伸びたものから力を取りされば元に戻ります。

ところが、ポリエチレンを含めたプラスチックには"クリープ"という弾性があります。それは、たとえば引っ張る方向に力をかけていると、それが限度内であっても時間とともに少しづつ伸びていくという性質です。それで、熱で広がった滑走面の分子は、冷えて元に戻ろうとするときにワックスの分子が入っているため元に戻れず、時間が経つにつれて元に戻ろうとする力がなくなってしまうと考えられています。

その状態で加熱すると、ワックスの隙間はまた決まった量だけ開き、さらにワックスを吸収していくものと思われます。

 

 

ワクシング

ワックスは滑走面の溶けるギリギリ(130℃前後)が一番染み込むのですが、ここを狙っていくと滑走面の溶ける温度135℃を超えてしまうこともあります。この温度を超えて140℃くらいになっても、滑走面は溶けて流れてしまうわけではないですが、ワックスの染みこむ大事なアモルファスの部分が結晶化して、ワックスが染みこまなくなってしまいます。こうなった滑走面は、生っぽいツヤでなくガラスのようなツヤを持つようになります。

 

 

スクレイピング

ワックスが冷えたら、プラスチックのスクレイパーという板でワックスを落とします。方向はトップからテールの方向です。滑走面のケバが後ろになびいて、前に進む無場合の抵抗にならないようにするためです。通常アクリル樹脂などが使われていますが、これはシンタードよりも硬いので滑走面を削ってしまわないよう注意が必要です。

 

 

ブラッシング

スクレイプの後は、ブラッシングでストラクチャーの間に詰まったワックスを取り除きます。これもスクレイプと同じようにトップからテールに向かって行います。理由はワックスが厚すぎることによる抵抗を除去するためと、滑走面のケバを除去し、滑走面表面を滑らかにするということです。

 

 

ポリッシング

最後にスコッチブライト(ファイバーテックス)で磨きますが、白色以外のものは研磨剤が入っていて、滑走面が削れてしまうので、この目的のためには研磨剤の入っていない白くて柔らかいものを使います。ポリッシングとしてはこの後、さらにクリーニングペーパー、ファイバーレーンなど柔らかな不織布で磨き上げて、仕上げ完了となります。

 

 

スキージャーナル(株)スノーボードニッポン別冊12月号より抜粋