Wing of Sinner
細い紙燭の光の下、筆を進める。 彼が戻って来るまでに、出来る限り書き進めておかなければ。 そう思いながらも、彼女はやがてその手を休めてしまう。 ずっと筆を握っていられるだけの体力が、もう彼女にはなかったからだ。 それに── 彼女は心に決めていた。今、書き綴っているこの物語は決して誰の目にも触れさせない事を。 これは彼女自身の為の物語。 近い未来、彼女が犯すであろう、贖う事の出来ない罪へのせめてもの祈り──。 + + + 〜終〜 |
After Writing
そんな訳で、ボーナストラックとして書き下ろしたディスパーの婚約者サイドの外伝です。
つまりディスパーは罪人となる前は結構名の知られたリディ=メンタールだったという……。
(その辺りの才能も買われて、ファムルーに仕える事になったのですが、まあ作中ではあまり関係ないのでそこまで書きませんでした)
彼女(結局名前をつけてあげられなかったな・汗)は、実際の所人一人(しかも最愛の人)の人生を転がしてしまった、かなり自分勝手で迷惑この上ない人ではあるのですが、出してしまった後で何となく、思ったのですよ。
もし、不治の病にかかったとして、死ぬまで苦しい思いをしなければならない、しかもその苦しみが何時まで続くのかわからないって状況で、『幸せな死に方』を想像しない人っているんだろうか、と。
縁側でぽっくり、ってのは無理だとしても、誰だって苦しみたくはないはずで(マ●じゃなければ・汗)
それでも苦しみから逃れる方法がなければ、何を考えるだろうと。
そんな訳で、この話で語られるのは彼女が思い描いた『幸福な死に方』です。
歪んでいるし、間違っているけど、それが彼女の願った終焉。
ただディスパーの人生を狂わせただけじゃなくて、彼女も彼女なりに葛藤があったって事が書きたくて書いた話です。
…完全なる悪人ってのは私には書けないのカモ(−▽−;)