夜の冒険
夜の森は不気味な静けさ。
すぐそこの暗闇に何かが潜んでいそう。
バササッ!!
不意に梟(ふくろう)が近くの木から飛び立った。
僕等は身を寄せ合い悲鳴を押し殺し、耳を欹(そばだ)てる。
何かの気配がする?
夜が支配する森は昼間とはまるで別世界。
たとえそこに闇の生き物がいても、不思議じゃない。
攻撃するなら、炎を操る僕か光を操るガーヴェの仕事だ。
僕とガーヴェは互いに目配せをした。
何が来たって、負けはしないさ!
サエナが不安そうな顔で、そんな僕等を見ている。
…その時、リルーが大きな黒い目を闇の向こうへ向けた。
鬱蒼(うっそう)とした繁みがそこに影のように広がる。
「向こうに、何かいるわ…!」
彼女が緊張した声で密やかに囁く。
同時に、僕の目にも繁みの向こうで何か大きな影のようなものが動くのが見えた。
僕等の真の冒険はついに始まったようだ!
高鳴る鼓動。耳が熱い。
ガサッ
!!
繁みが音を立てて動いた瞬間、すでに準備していたガーヴェが目晦ましの光を召喚した。
一瞬、そこだけ昼間に戻る。
目を庇(かば)って身を寄せ合った僕等の耳に、繁みの向こうにいた謎の生き物のうめき声が──!
「…こらあ! お前達、こんな夜更けに何をやっとるかあっ
!!」
次いで降ってきたのはそんな怒声。
それは確かに人間の言葉で──。
びっくりしてもう一度見てみると、そこにいたのは……。
「じ、じいちゃん……」
そう…それは僕の祖父、そしてこの“マジックシード”の長その人だった。
こうして僕等の夜の冒険は幕を下ろした──。