睦月とはかんなの前に飼っていた猫でした。
睦月とは不思議な出会い方でした。
5階にある私の部屋の前で何やら「にゃーにゃー」うるさいので覗いて見ると、一匹の猫がうろうろしていました。
扉を開けると少し後ずさりします。
そばへ寄っていくと逃げるのですが、じりじりといった逃げ方で、廊下の行き止まりまで追い詰めて捕まえてしまいました。
暴れるかと思ったのですが、意外や意外。腕の中でゴロゴロいい始めたのです。
お腹が空いているだろうと思い、茹でた鶏肉をあげたらぺロリとたいらげてしまいました。
模様は牛のような白黒で、鼻の下にはひげのような黒ブチがありました。
愛嬌があり、可愛い猫で一目ぼれしてしまいました。
6階の人があまりにも「にゃーにゃー」うるさいので覗きに来たので、
「この猫はお宅の猫ですか?」
と聞くと、違うとの返答がありました。
その日のうちにトイレやエサなどを揃えてしまいました。
前にどんな名前がついていたのかが分からず、そう呼べばいいのか一ヶ月ほど迷いました。
そんな時、友人が来た月の日本読みで呼べばいつ来たのかがすぐ分かるよ、と教えてくれました。
一月に来たので「睦月」と名付けました。
母親は「睦月なんて、おむつのようだ」と笑いましたが、私は気に入ってました。
仕事に行かなくてはならないので家をよく空けるせいか、寂しがり屋の睦月はコタツ布団によく粗相をしました。
その度に近くのコインランドリ−に走りました。
人懐っこくて友人が来ても愛想を振りまき、まるで犬のようだと言われていました。
ずっとこんな生活が続くと思っていたんです。
「睦月、お前がいなくなったら私は悲しくってしょうがなくなるよ。だから長生きしてね」
と言い聞かせたりもしていました。
ある日、クッションの好きな睦月にピッタリのクッションを見つけました。
だけど次の日が丁度給料日だったので、翌日にそのお店に寄って買って帰って来ました。
部屋に入ると、いつもならすぐに足元に来て帰りが遅い事に抗議をしまくるのに、その日に限って来ません。
あれ?と思いながら捜してみると、ダンボールで作った猫の家の中に入っていました。
私を見上げてゴロゴロ言うのですが、一向に出てきません。
出してやると、首が後ろへそっくり返りフラフラしています。
これはおかしい、とすぐさま獣医へ連れていきました。
原因は不明で何かの中毒かもしれない、と言われそのまま入院しました。
翌日の朝、獣医へ行くと状態は良くなるどころか悪化していました。
意識不明(何をやっても反応が無い)で、時々痙攣発作が起こりました。
血中のバランスがめちゃくちゃで、とりあえずはその補正をしている、と先生が説明をしてくれました。
それまでペットロス症候群はペットが亡くなってから起こるものだと思っていたのですが、入院してしばらく会えない
間にすでにペットロス症候群にかかっていたようです。
部屋に帰ってきても、睦月がいないのに堪えられず、ずっと泣いていました。
最期に会ったのは入院して6日目でした。
その日、仕事を終えてから面会に行き、診察の終わる時間に帰りました。
その頃は最初の頃よりちょっと落ち着いてきた頃でした。
獣医から帰ってきて夕ご飯をたべようか、と思ったその時に電話が鳴りました。
睦月の呼吸が止まった、という内容でした。
すぐに獣医へ行きましたが、その時はもう冷たくなっていました。
原因が分からず、いろいろな検査をしたのですが、結局原因が分かったのは亡くなってからの解剖でした。
獣医が痙攣発作から脳に異常があるということで、頭を開いたところ一匹のフィラリアが見つかりました。
もしかして、と胸も開けて見たところ心臓にも一匹いて、肺が充血していて、直接の死因は肺梗塞だったようです。
今は近くのペットのお寺にいます。
テレビの上に写真を飾っていつまでも忘れないよう、心がけています。
具合が悪くなったのが私が「死んだら悲しいから長生きしてね」と言い聞かせていた翌日だったので、今の子には言わないよう
にしています。
心残りなのは、なぜクッションを一日早く買ってこなかったのか、という事です。
給料日など待たずにすぐに買っていたら、少しでもクッションを使う事が出来たのになぁ。
睦月の事は絶対に忘れないからね。