第一巻 ケース・レインボー 0−1.シドニー、二〇〇〇  二〇〇〇年三月、シドニー五輪の開会式にて。  来賓席に座る老人の回想と、行進する各国代表。そして各国の現状。 0−2.スカゲラックの悪魔  一九一六年、ジュットランド。  長門率いる高速戦艦部隊による突撃とその結末、ナガト・ショックを描く。 1−1.安寧  一九三九年。世界は束の間の平和に身を委ねていた。  戦時の影薄い中、次の戦いに向けて牙を研ぐ各国の一線部隊と、  繁栄を極める日米英、そして復興を遂げつつある新生ロシアの姿。 1−2.準備段階  合衆国では、次の一戦に向けた両洋戦略──レインボープランが立案されつつあった。  そして、日英と合衆国が抱える対立の萌芽が顕在化し始める。 1−3.対立構造  利権や貿易を巡る対米摩擦に人知れず苦悩する外務省。  そこに、豊後水道で起きた事件の知らせが届く。 1−4.暗天  ワシントンで続けられていた日英米調整交渉はついに決裂。  そして合衆国は、日英露に対し最後通牒を突き付ける。 1−5.ガンズ・レビュー  対米仏蘭開戦は必至の情勢となった。  各国の軍備は、戦時体制作りに向けて歯車を廻し始める。  その視線は、ひとえにただ一度の「決戦」へと向けられていた。  そんな中、トハチェフスキー露大統領が列強の大戦略に一人警鐘を鳴らす。 1−6.決戦海面  ついに大戦勃発。中東・西太平洋で小競り合いが始まる中、  日米海軍主力は決戦への態勢を整えて中部太平洋に集結した。  そして、彼我六四隻の戦艦群が激突する。 1−7.ケース・レインボー  手のつけられない乱戦となったマーシャル沖の戦い。  隊形を立て直して挑んだ第二ラウンドで、日本艦隊は決定的な損害を受け敗走する。  そして合衆国は、第一段作戦の総仕上げに取り掛かろうとしていた。 第二巻 血染めの海面 2−1.波紋  マーシャル沖の敗北は海軍に深刻な衝撃を与えた。  大本営では戦略の建て直しを否応なく迫られる。  一方、米太平洋艦隊はマーシャルの外郭に取り付くべく、  攻略部隊をハワイに集結させつつあった。 2−2.ゼーゴイセン  オランダ東インド艦隊と米アジア艦隊の連合部隊が、  南シナ海の通商線を遮断すべく出撃。  続出する船舶被害に、イギリス極東艦隊は一計を案じる。  「敵戦力を一点に集中し、撃滅する」  インドシナ沖に、決戦勃発! 2−3.指令  大本営はマーシャル放棄の決断を下した。  軍属・民間人まで合わせて数万に及ぶ人員と装備を避退させるべく  かき集められた船腹は二百隻、一六〇万トン。  だが、米太平洋艦隊のニミッツ新長官はその退路を遮断すべく、  七〇隻におよぶ潜水艦隊を放とうとしていた。 2−4.西退  海軍通信班が米軍の攻勢準備を察知。  これを受けて、大本営はマーシャルからの撤収作戦を発令する。  だが、護衛艦艇の数が極端に不足していることが判明。  苦しい台所を遣り繰りすべく、艦隊型駆逐艦までが駆り出された。 2−5.ターゲット・バリュー  マーシャル東端のマロエラップ環礁に米軍が来襲した。事態は一刻の猶予もない。  メジュロ基地から撤退する二七隻の船団を護衛するのは、  装甲巡洋艦吾妻と旧式駆逐艦六隻で編成された寄せ集めの戦隊。  トラック泊地までの道程に待つのは、鋼鉄の鮫の群だった……! 2−6.血染めの海面  メジュロ撤収船団と米潜水艦隊の戦いは続く。  次々と放たれる魚雷の前に、海没する艦船が続出。  牧童の義務を果たすべく死闘を重ねる将兵の血で、内南洋は紅く染まって行く。 2−7.贖罪  幾多の犠牲を出しつつ、マーシャルからの撤収は完了。  だが、開戦から三ヶ月で日本が失った人命は五万に及ぼうとしていた。  「この度の戦、軍民問わず失われた全ての命が英霊である」  悲嘆の中で、戦いの決意が誓われる。 第三巻 ソロモン・トラップ 3−1.緊張  マーシャルに腰を落ち着けた米軍は、半恒久的な中継兵站基地の建設に取り掛かった。  対する日英は戦力の回復に努め、トラック〜エニウェトク海域を最前線として  両軍がにらみ合う状態が現出した。 3−2.進軍  内南洋ルートが膠着したと見た米軍は、搦め手からのカロリン攻略に取り掛かる。  新たな進撃目標は、南太平洋ソロモン諸島。  豪州の外堀を埋めるべく、戦艦七隻と新造空母三隻を中核に、  五〇隻以上の船団を擁する攻略部隊が編成されようとしていた。 3−3.設営隊  ソロモン方面に注目していたのは日英豪も同様だった。  豪州軍の設営隊と守備隊が各島に散り、飛行場と監視基地の設営を進める。  だが、その最中ガダルカナルに米海兵隊一八〇〇〇人が来襲。  以後三年近くに渡り鉄と血を飲み込み続ける泥沼の戦いが幕を開けた! 3−4.ソロモン・トラップ  海兵隊一個師団に続き、陸軍二個師団をガダルカナルに増強して橋頭堡と為した米軍は  続いてブイン・ニュージョージア方面への進出を企図。  しかし、日英も指を咥えて見ているわけには行かない。  ソロモンからの米軍駆逐を企図する「鉄格子」作戦が発動した。 3−5.迫撃  三百万トンに及ぶ輸送船腹に物を言わせてソロモンに大量の補給物資を運び込む米軍。  これを叩くには、兵站線の遮断は必須とされた。  陸攻、空母、潜水艦。ありとあらゆる手段によって通商破壊が試みられる中、  装甲巡洋艦部隊による泊地襲撃作戦が現場部隊の判断によって実行に移される。 3−6.決断  装甲巡洋艦による夜襲は大きな効果を挙げたが、同時にそれは米軍の水上戦力配置の強化をも惹起した。  これを打ち破るべくラバウルに集結したのは、戦艦十四隻をはじめとする日英豪連合艦隊。  エスカレートする戦いが、ついに巨獣の激突を引き起こす。 第四巻 北洋燃ゆ 4−1.出師  フランス大西洋艦隊出撃の虚報に踊らされ続けていた英本国艦隊。  例によって、今回の情報も大方デマではないか。その憶測に反し、フランスは動いた。  だが、投入された戦力は旧式戦艦三隻という中途半端なもの。  これが陽動だとすると、彼らの真の狙いとは一体……!? 4−2.セカンド・ジェネレーション  チェサピーク湾は無数の艦艇で埋め尽くされていた。  大西洋を東に向かって押し渡るべく集結したのは、  第二次三年計画で建造された十二隻の戦艦をはじめとする総計六〇隻余りの大艦隊。  「作戦目標、英本国艦隊」  大西洋に向けて繰り出される合衆国の牙は、あまりにも鋭い一撃となろうとしていた。 4−3.北洋燃ゆ  PASO軍の真の狙いは、米大西洋艦隊による英本国艦隊の無力化だった。  フランスへの抑えをジブラルタルの大西洋艦隊に任せ、本国艦隊は全力で東進する米艦隊の迎撃に出る。  決戦海域はグリーンランド南方。ファーベル岬の沖合に十六インチ砲の咆哮が木霊した! 4−4.動向  勝つには勝った。だが本国艦隊主力もまた大きな損害を受け、少なくとも半年間作戦不能との判定を下された。  「これでイギリスは片付いた」  合衆国大統領ルーズベルトは不敵な笑みを漏らす。  同時刻、フランス大西洋岸のブレストでは、巡洋戦艦ストラスブールの出撃準備が整えられていた。  これを受けて大西洋正面のデフコンを急上昇させる英本国軍。だが、連合国の次の一手は──!! 4−5.宣戦  ドイツ・イタリア・スペイン、そして東欧諸国を始めとする欧州枢軸連合が、一斉に日英露に対し宣戦。  同時に、陸兵を満載した船団が地中海北岸から一斉に出発する。  北アフリカではリビアのイタリア軍がエジプトを窺い、東欧連合軍はロシアへなだれ込んだ。  一気に拡大した戦線を前に、各国はどう出るか!? 4−6.海防  ドイツ大西洋艦隊が誇る大戦艦カイザー・ヴィルヘルム二世が、  僚艦ヴァイセンブルグと共に母港ヴィルヘルムスハーフェンを出撃した。  アイスランド航路を遮断されれば、英本国にとっては死活問題となる。  満身創痍の本国艦隊の総力を挙げた追撃作戦が発動。その顛末は── 第五巻 灼熱の死闘 5−1.消耗戦域  鉄と命を際限なく飲み込み続けるソロモン戦域。  投入されては傷だらけになって帰ってくる艦艇群にたまりかねた海軍は、  虎の子の高速戦艦部隊の投入を決断する。  だが、彼らの目の前に姿を現したのは、想像を絶する怪物だった──! 5−2.到達指数  地中海マルタ島の英艦隊は、フランス・イタリア本国から北アフリカへの兵站線に対する最大の妨害要素だ。  その中でも四隻のI級巡洋戦艦は、最強の機動戦力として仏伊両海軍を悩ませていた。  補給船団の平均到達率が六割を切る惨状に業を煮やした仏伊は、合同で戦艦戦隊を編成して  マルタ掃討作戦「ドラゴン・クエスト作戦」を発動する。 5−3.寸断  中部地中海の制空・制海権は完全に交錯し、英軍・仏伊のどちらも  地中海を越えての兵站線を確保できないという事態が現出した。  この状態を解決すべく、双方は地中海戦域にある限りの水上・航空戦力を投入して  大船団による地中海打通を図ろうとしていた。 5−4.灼熱の死闘  北アフリカに派遣された日本陸軍二個師団。これに英陸軍六個師団を合わせた九万の兵力が、  モントゴメリー大将麾下の守備兵力の全てだった。  これに対して、米独仏連合陸軍の兵力は十一個師団十四万。  一進一退の攻防が続く中、日本軍陣営で起きた動きが戦局を変えようとしていた。 5−5.砂の大海  前線で行方不明となった牟田口中将の後を継いだ東條中将は、  収拾のつかなくなった広大な戦闘正面の整理に取り掛かった。  だがそこに、迂回攻撃中のモントゴメリー大将率いる主力の危機が伝えられる。  一方そのころ連合軍司令部では総司令官ド・ゴール大将と  戦車兵団を率いるパットン中将・ロンメル少将の意見対立が深刻化していた。 5−6.北天急変  快進撃を続ける東欧連合軍は瞬く間にベラルーシとウクライナの西半分を併呑した。  だが、彼らの前にドニエプル大要塞線が立ちはだかる。  その頃サンクトペテルブルグでは、新鋭戦艦ロシアの初陣に向けた出師準備が着々と整えられていた。 第六巻 破局の戦線 6−1.コロニー  北アフリカ戦線で敗色濃厚な同盟軍。その戦況に、中近東〜アフリカ地域の友好国・植民地が動揺を見せる。  この状況を見た連合側は、次の一手に出た。すなわち、大英連邦の切り崩しである。  最初のターゲットのうち一国はエジプトと定められた。そしてもう一国とは── 6−2.崩落の日  地中海の入口を扼する要衝の中の要衝ジブラルタル。守るは精鋭大西洋艦隊。  だが、その戦力は仏伊両国が仕掛けた波状攻撃によって見る影もなく消耗しきっていた。  そして、ジブラルタル攻略のための最終段階がついに開始される。 6−3.避けえぬ奈落  大西洋艦隊主力の壊滅とジブラルタルの完全な孤立化によって、大英帝国の領域は東西に分断されることとなった。  英本国宰相チャーチルは臍を噛みつつも次善の一手を模索する。そして下される結論。  「本国の工廠の建艦速度を可能な限り上げよ」  一見自滅への道とも思える指令の真意とは? 6−4.破局の戦線  ジブラルタルを手中に収めた欧州枢軸の次の狙いは、「竜の棲む島」マルタ島。  四匹の竜ことI級巡洋戦艦撃滅の使命を帯びた仏伊両海軍が放つは、新鋭戦艦八隻を含む大艦隊。  これに対し、イギリスはスエズから呼び寄せた援軍と合流して必死の防戦。  そしてティレニア海に炎の花が咲く。 6−5.防人の島  守備艦隊を退けた枢軸軍は、ついにマルタ島攻略部隊をトゥーロンとナポリから放つ。  防戦計画の立案に苦慮する英軍司令部は、しかしそこに一筋の光明を見た。  「各個撃破の機会は十分にある」  マルタに残された航空兵力は二〇〇機余り。彼らは防人の任を全うすることができるのか。 6−6.ブリゲード・ウィング  開戦劈頭に合衆国によって占領されたバミューダ諸島。  それ以来拡張を続けられてきた航空基地に、巨鳥の群れが降り立った。  「これでイギリスも終わりだ」  陸軍戦略航空団のルメイ少将は、一人不敵な笑みを浮かべる。  新鋭爆撃機B−29を含む一〇〇〇機以上の大航空団は、アゾレス諸島へ向け回航の途についた。 第七巻 バトル・オブ・ブリテン 7−1.発火点  ついに英本土の戦いが始まった。手始めとして戦爆連合一五〇〇機の大編隊がフランス各地を飛び立ち、ドーバーを越える。  迎え撃つは、英本土防空戦闘機隊九〇〇機。その中には、日本陸海軍の遣英航空隊一〇〇機余りの姿もあった。 7−2.賽を投げる者  中型爆撃機中心で開始された英本土攻撃は、フランス空軍に多大な出血を強いていた。  一向に戦局の帰趨が見えない中、合衆国陸軍の遣仏航空隊が到着。  「フランスもイギリスも取るに足らん。戦争のやり方を教育してやる」  ルメイ少将の目が冷たく光る。 7−3.バトル・オブ・ブリテン  英本土航空戦は米軍航空隊の参戦によって第二幕へと移った。  次々と飛来する大型重爆の群れに手を焼く防空戦闘機隊。  だが、英国に救世主あり。新型迎撃機フューリー、スパイトフルの投入が辛うじて間に合った!  一気に押し返すかと思われたその矢先、連合軍もまた新型戦闘機を投入。その翼には鉄十字の紋章が…… 7−4.東方の獣  いつまでたってもドニエプル河線を抜けない東欧連合軍の不甲斐なさに業を煮やしたドイツは、  ついに陸軍主力兵団の東部戦線投入に踏み切った。  数頼みの東欧連合とは比較にならない強力な機甲兵力の前に、ひとたまりもなく蹂躙される要塞線。  だが、ロシア軍もまた新型KV−3Sで編制された重戦車師団を次々投入。  その中には、シベリアから馳せ参じた日系移民兵たちの姿もあった。 7−5.決定的崩壊  マルタ島を奪取した仏伊連合は、ついに地中海戦線の総仕上げに取り掛かった。  最後の目標はアレキサンドリア、そしてスエズ。  リビアから一気に迫る陸軍と、地中海を東進する戦艦部隊。  日英軍も最後の粘りを見せるべく踏み止まる構えを見せるが、その矢先に足元のエジプトで政変が── 7−6.ジュットランド再び  英本土の航空戦力がドーバー方面に釘付けとなったのを見た独海軍は、ついに主力中の主力・大海艦隊の投入を決断した。  「エルベ演習」作戦のもとキールを出撃したのは、戦艦十二隻を中核とする総計六〇隻余りの一大戦隊。  これに対し本国艦隊も、新造戦艦ヴァンガード、ヴィクトリーを含む五〇隻をスカパフローから出撃。  三十年前の因縁の対決が、今また蘇る。 7−7.亡国の幻影  革命によって樹立されたエジプト新政権は、そのまま連合国側に立って日英に宣戦。  スエズ東岸に逃れた残存兵力をかき集めた同盟軍は、パレスチナに抵抗線を引いて防戦の構えを見せる。  だが、レパント海には英地中海艦隊の残存兵力が取り残されていた。そこに迫る仏伊艦隊。  絶体絶命のそのとき、思わぬ国から救いの手が差し伸べられた──! 第八巻 英霊の在処 8−1.熱病のごとく  日英豪米各軍は、熱病に浮かされたかのように次々とソロモン戦域へ兵力を投入。  双方がこの海域に送り込んだ戦闘艦艇は延べ一五〇隻を超え、  ガダルカナルとサンタイサベルの両島には両軍合わせて十二万人の大兵力が展開していた。  次々と損傷しては内地に回航されてくる艦艇群には浮きドックの増勢で対応していたものの、  このままでは早晩限界が訪れる。  各地の工廠が上げた悲鳴を受けて海軍は民間と手を組み、神戸・長崎の造船施設の能力向上に走る。  だが、この決定は総力消耗戦という最悪の展開への一里塚でもあった。 8−2.英霊の在処  ソロモン戦域で生じた人的損害は、既に日英豪合わせて一万を超えようとしていた。  特に深刻な課題は、沈没艦船および未帰還となった陸攻隊の生存者の救出。  これに対処すべく、大艇と潜水艦による捜索救難部隊が編成された。 8−3.レスキュー・ソルジャー  ソロモン戦域に投入された飛行艇・潜水艦部隊は  最初の一週間で五〇名近くの行方不明者を救助してのけ、その価値を実証した。  だが、この部隊の存在を察知した合衆国軍は、エスピリッツからガンシップと対潜哨戒機を飛ばし、  捜索救難活動の妨害、さらには遭難者を囮とした救難機の要撃を開始した。  偽電、陽動、伏撃に至るまであらゆる術策を駆使した救難部隊同士の死闘が続く。 8−4.被害曲線  捜索救難活動をめぐる両軍の戦いが続く中、妨害による救難効率の低下のために  両軍の人的損害は甚大な規模に膨れ上がっていった。  「このままでは押し切られる」  危機感に迫られた同盟軍は、オーストラリアにストックしていた予備航空兵力を投入しての勝負に出る。 8−5.集中  ガダルカナルの米軍航空基地を無力化した日英は、続いて戦艦戦隊に護衛された上陸部隊を送り込む。  大口径砲による艦砲射撃に続く二個旅団の上陸、同時に行われた大攻勢によって、飛行場は同盟軍の手に落ちた。  だが、態勢を立て直した米軍は、二個連隊もの機械化火力を投入して内陸からの反撃に出る。  軽装備主体の同盟軍は、これを支えきることができるか── 8−6.凶報  ラバウルから急行した空母機動部隊の支援の元、ガダルカナルの戦いは同盟軍の辛勝で幕を閉じた。  追い落とされた米軍は、サンタイサベルとモロタイの拠点を足掛かりに再起を図る。  好機を逃さず掃討作戦に出ようとする日英だが、その直後に大西洋から連合軍英本土上陸の報が届く。  そして米軍も、ソロモン海域にさらなる戦力を投入しようとしていた。 第九巻 ライオン・ハート 9−1.ルール・ブリタニア  第二次ジュットランド海戦の結果、英本国艦隊は作戦能力をほぼ喪失するに至った。  この機を逃さずフランス海軍大西洋艦隊が英本土西側とドーバーを抑え、一個師団の兵力が英仏海峡を押し渡る。  ヘイスティングス〜ブライトン阻止線での激闘が続く中、英国政府は予定通りエジンバラへの遷都を実行した。  この状態で暫く持久すれば、脱出のための態勢を整えられるはず。  だがその頃、カレー〜ノルマンディーに至る航空基地には、米陸軍の大航空団が…… 9−2.巨鳥の眼下  制空権崩壊の結果、米陸軍の戦爆連合四〇〇〇機による昼夜を問わぬ猛烈な戦略爆撃が開始された。  スコットランド国境まで一気に押し込まれた本国政府は、急遽本土脱出の予定を繰り上げる。  スカパフローでは、本国艦隊と脱出船団が出港準備に追われていた。  だが、その頭上に忍び寄る影が。 9−3.挟撃  オークニー空襲さる。下手人は、アイスランド航路から進出した米大西洋艦隊の空母機動部隊だった。  補助艦艇および輸送船舶に甚大な被害を受けたことにより、本土脱出計画は大混乱に陥る。  エジンバラの港湾施設も、連日の空襲によって大幅な機能低下に見舞われていた。  グラスゴーの航空隊が絶望的な抵抗を試みる中、軍民の溢れる混沌と化した街に空陸からの銃火が迫る。  さらに、そこへ追い討ちを掛けて信じられない凶報が届く。  スコットランド地方政府でクーデターが発生。新政府は連合王国からの離脱を宣言した! 9−4.南下航路  修羅場と化したエジンバラを脱出したのは、戦艦十四隻をはじめとする戦闘艦艇四三隻および輸送船舶四八隻。  その殆どは損傷艦であり、さらに彼らが取るべき進路は大西洋を縦断する最も過酷なルートしか残されていなかった。  行く手には絶対阻止の命を受けた米仏両艦隊による追撃の魔手が迫る。  脱出艦隊の苦難の旅路が幕を開けた。 9−5.後方  脱出艦隊阻止に燃える仏海軍は、最新鋭艦ラングドックをはじめ戦艦六隻からなる打撃部隊を放った。  損傷に鞭打って迎え撃つは、十八インチ砲搭載戦艦・V級四隻。  「王立海軍の誇りにかけて、ここは通せない」  そこへ船団後衛から敵艦隊発見の至急報が…… 9−6.魔王の淵  米大西洋艦隊は、首尾よく脱出艦隊の後備に喰らいついた。  「雑魚に構うな、突破しろ!」  インガソル長官の号令を受け、旗艦以下十一隻の戦艦が猛進する。  その進路へラミリーズをはじめとする護衛部隊の老兵達が立ちはだかった! 9−7.ライオン・ハート  ケープタウンにたどり着いた脱出艦隊は、エジンバラ出航時の半数にまで討ち減らされていた。  「だが王室の誇りある限り、英国は決して諦めない!」  チャーチル首相の宣言の元、オーストラリアでは亡命政権が成立。  その頃日本では、各地の工廠群から次々と新造艦が産声を上げ始める。  一方合衆国は、英本土の占領運営に対して非情な決定を下そうとしていた。 第十巻 呪われた環礁 10−1.ダイレクト・アプローチ  膠着状態が続く南洋戦線への梃入れとして、合衆国は戦略航空団を投入。  ニューヘブリジーズに拠点を置いたB−29をはじめとする重爆隊は、  ニューブリテン、東部ニューギニア、オーストラリア東岸への執拗な戦略爆撃を繰り返した。  たまりかねた日英は竣工したばかりの新造艦まで投入してエスピリッツ攻略作戦を計画するが、  そこに予想外の隙が生まれようとしていた。 10−2.予備兵力  米本土西海岸のサンディエゴには、新顔の艦艇が続々と集結していた。  「トラックの守備は手薄だ。今なら抜ける」  ソロモン戦域からサンタクルーズまで伸びきった同盟軍の戦線。  これを根本で分断すべく、戦艦九隻を中核とする攻略艦隊が海兵一個師団を乗せて西を目指す。 10−3.アフター・バーナー  ニューヘブリジーズから叩き返された同盟軍は、日本本土から新造戦艦伊予を呼び寄せた。  これにトラック駐留艦隊から戦艦八隻を付けてのリターンマッチ。  対する米艦隊は前回の戦いから完全には立ち直っておらず、健在なのは世代の古い戦艦が五隻。  今回は同盟軍の勝ちが動かないかに見えたが……!? 10−4.戦略的目標  南洋に戦力を傾注し過ぎたツケが一気に廻ってきた。  新造艦を含む米戦艦九隻がトラックを目指して進撃を開始。  対する同盟軍が揃えられた戦艦は、トラックに残された新造艦大隅と旧式艦日向・比叡のみ。  海空にわたって緊張が走る中、上陸部隊が迫る。 10−5.赤道の陥穽  戦略拠点ネットワークの心臓部への一撃によって、同盟軍の領域は東部を南北に分断された。  豪州への連絡線の幹線を遮断された日英は、南シナ海〜蘭印〜西部ニューギニア経由ルートの  構築に追われることとなる。  その一方トラックに陣取った米軍は、次の作戦に向けて本格的な拠点化に着手するため  隣接戦域の制圧と無力化に取り掛かろうとしていたが、  そこには日英が総力を挙げてかき集めた航空隊と潜水艦隊が牙を剥いていた。 10−6.クロスファイア  西のマリアナ、北のウェーク、北東のエニウェトク、南のラバウル。  トラック環礁を包囲するように配置された日英の基地航空隊は、総計八〇〇機の一大戦力だ。  繰り返し加えられる空襲は、次第に在泊する米艦隊の抵抗力を奪っていく。  そしてマーシャルからの兵站線に、潜水艦隊の牙が向けられようとしていた。 10−7.呪われた環礁  連日の対空戦闘と緊急出航により、米艦隊の燃料と弾薬は危険な水準にまで目減りしていた。  窮余の策として大々的な空輸作戦も決行されたが、  トラック上空にはほぼ常時同盟軍の電探哨戒機が張り付き、  空輸便を捕捉しては近海を遊弋する空母部隊からの戦闘機を呼び寄せた。  残骸で埋まった自軍の滑走路に「強行着陸」しては次々と撃墜・地上撃破されていく輸送機。  環礁入口に張り付いた潜水艦の雷撃で撃沈され、水道を閉塞していく船舶。  「駆逐艦用の重油が尽きたら最期だ」  緊張の走る艦隊司令部に、哨戒線の潜水艦から敵艦隊接近の報が届く。 10−8.自沈  既に戦艦と巡洋艦は身動きもままならなかった。水道を全て閉塞されて退路を失った艦隊を、  同盟軍は航空攻撃と戦艦部隊による砲撃で完膚なきまでに打ち据えた。  戦艦八隻、巡洋艦十一隻、駆逐艦二二隻、各種船舶六〇隻、そしてなにより二万名近い将兵を  一度に失った米軍の痛手は計り知れない。  「だが、ここで引き下がるわけには行かない」  太平洋艦隊の戦力はまだ十分に残っている。  総力を挙げた第二段作戦の発動は、すぐそこまで迫っていた。 第十一巻 パシフィック・インフェルノ 11−1.量産  「太平洋艦隊は使い潰して構わん」  無尽蔵とも言える合衆国の工業力が、ついに戦時体制に完全移行した。  次々と建造ドックから吐き出される巡洋艦と駆逐艦。戦艦の建造も恐ろしい速さで進捗し始める。  そして海軍造船局では、極大とも言えるプランが誕生しようとしていた。 11−2.全面攻勢計画  トラック失陥と駐留艦隊全滅、そしてゴームリー長官戦死の報に沈む間もなく、  太平洋艦隊は弔い合戦とばかりに中部〜南太平洋戦域における全面攻勢作戦「パワープレイ作戦」を発動した。  ハワイに集結した三七隻の戦艦、三三隻の巡洋艦、九〇隻の駆逐艦、十二隻の空母が  三つのタスク・グループに別れ、同盟軍領域の三拠点を目指す。  「失陥が許される拠点はひとつもない」  同盟軍首脳は全力での対応に苦慮していた。 11−3.パシフィック・インフェルノ  太平洋のみならずインド洋の防備を犠牲にしてまで掻き集めた同盟軍兵力。  戦艦二五隻を始めとする総計一〇〇隻余りの戦闘艦を、中部太平洋各地に三分割で配置することとなった。  だが、主力艦戦力の不足は隠せない。苦悩する同盟軍大本営に、救いの手が差し伸べられる。  英本土から逃げ延びた本国艦隊残存から、八隻が馳せ参じた!  そして、ついに米艦隊先陣が決戦海面へと姿を見せる。 11−4.前哨ウェーク  巡洋戦艦五隻を主力とする米艦隊第一陣は、ウェークに艦砲射撃を浴びせると西北西へ進路をとった。  その行く手には小笠原が。予想進路の逆を衝かれた同盟軍がこの方面に持つ戦力は戦艦三隻を擁する第三戦隊のみ。  指揮を執る鈴木中将の懸念の的は、米艦隊が擁するヨークタウン級巡洋戦艦エンタープライズだった。  「あの戦闘力を何とかしない限り、我々の勝ちはない」  対抗策として用意されていたのは、拡大巡洋艦改装の大型重雷装艦二隻。果たして、これで食い止められるのか── 11−5.助攻サンタクルーズ  タラワを経由した一群が目指したのは、英インド洋部隊と豪州海軍の合同艦隊が守るサンタクルーズ。  互いに所属する主力艦は旧式が揃っているが、ここで退くわけには行かない。  かたやソロモン再占領への足がかりを得るために。かたや豪州東岸を安定化させ、カロリンへの道を守るために。  老兵たちの意地を懸けた戦いが幕を開ける。 11−6.強攻エニウェトク  米艦隊の主攻軸は、正攻法でエニウェトクに向けられた。  対する同盟軍も、日本艦隊に英極東艦隊および本国艦隊残存の全力を合わせて迎撃。  双方が戦場海域に持ち込んだ戦艦は新旧合計五一隻。  太平洋全域に渡って繰り広げられる大海戦は、ここにクライマックスを迎えようとしていた。 11−7.龍は鎮まるか  ジョージア級戦艦七隻、オハイオ級戦艦四隻を中核に据えた米艦隊の布陣は必勝の構えだった。  合計二五〇門を超える十六インチ砲の咆哮が、文字通りの弾雨となって日英艦隊を襲う。  だが、その中から日英戦艦が撃ち返す一撃は強烈な威力を秘めていた。  日英合計十一隻の十八インチ砲搭載艦が猛然と吼え、重防御を誇る米戦艦を打ち据える。  さらに際立って重い一撃が炸裂。新戦艦美濃の二十インチ砲九門が、実戦で初めて火を噴いた! 第十二巻 鉄量あるのみ 12−1.宴の址  同盟軍戦艦部隊の圧倒的な打撃力の前に戦艦二十隻を失ったパワープレイ作戦。  「もはや十六インチ砲搭載艦では限界だ」  海軍は建造中の十八インチ砲搭載艦の工事を前倒しし、同時に新型戦艦十二隻・巡洋戦艦八隻の建造を計画する。  だが、その建造予算にホワイトハウスの閣議で待ったが掛かった。  「こっちは戦艦などとは次元が違うのだ」  得意げに語るアーノルド陸軍航空軍総司令官の発言の真意とは。 12−2.再編  来寇した米艦隊に多大な損害を与えて撃退したものの、同盟軍もまた七隻の戦艦を失った。  だが、彼我の戦力差はこれで一時的に逆転したといっていい。  「米国はもたついている。今が好機だ」  美濃級戦艦二番艦・甲斐の建造が、そしてV級戦艦九番艦・ヴァンキッシュの艤装が、突貫工事で進められていた。 12−3.再会  中東戦線は後退を続けていた。増援を受けて一時は十五万を数えた兵力も、たちまち半分にまで減少した。  優勢な物量と兵力、そして強力な機甲部隊を敵に回して、中東派遣軍総司令官・東條大将の苦闘が続く。  パレスチナに続いてメソポタミアを失った同盟軍は、イラン高原をひたすら東へ退くしかない。  そしてインダス河畔へ辿り着いた彼らを救援の知らせが待っていた。インド軍四個師団が増援として到着。  だが、ボラン峠の向こうに姿を現した連合軍は、戦車三〇〇〇輌、総兵力七〇万人の大軍に膨れ上がっていた。 12−4.ただ復仇のため  ウクライナ、ベラルーシからサンクトペテルブルク・アルハンゲリスクまでを併呑した連合軍は、  勢いのままスモレンスク・ブリャンスクを突破して一気にモスクワを突いた。  総崩れの状態で潰走するロシア軍はそのままゴーリキーとカザンまで失い、ウラル西麓に抵抗線を引く。  一方、舞台裏ではコーカサス・中央アジア諸国の連合国引き込み工作が本格化していた。 12−5.マンハッタン  海軍の再建予算を分捕ってまで続けられていた陸軍の新兵器開発。  「完成すれば、通常爆弾の数千倍の威力となる」  「もはや戦艦は不要。大型爆撃機によって戦争は決する」  アーノルド航空軍総司令官のビッグマウスは留まるところを知らない。  だが同盟軍の反攻の早さは、新兵器の完成を待ちそうにはなかった。 12−6.スターク・プラン  建艦予算にケチを食らった海軍だが、艦隊兵力の再建を諦めてはいなかった。  東西海岸に擁する造船施設の総動員体制は、既に確立されている。  「同盟軍を一気に引き離せ」  三年間で戦艦二六隻の新造を含む大建艦計画が策定されようとしていた。 12−7.ソドムの灯  中部太平洋への再侵攻作戦に間に合わせるすべく、最終開発と弾頭の製作が急ピッチで進められるマンハッタン計画。  だが、再侵攻の主力たるべき海軍主力艦群の損害回復が遅れていることから、作戦計画の立案も遅々として進まない。  痺れを切らした陸軍は、新型重爆B−29Dおよび増加試作中の反応爆弾三発の早期投入を決断。  「新型爆弾を以ってすれば、現在前線にある海軍艦艇だけでの逆侵攻も可能だ」  だが、その会議の席に急報が飛び込む。 12−8.鉄量あるのみ  研究施設で発生した原子核分裂の臨界反応は、合衆国最高の原子物理学技術者たちの大半をこの世から消滅させた。  開発は長期に渡る停滞を余儀なくされ、陸軍が立てていた航空軍による決戦を軸とした戦略は根本から破綻する。  「もはや、戦争を決定するには鉄量を以ってするしかない」  合衆国の意思は固まった。そして、同盟軍の反攻開始はすぐそこまで迫っていた。 第十三巻 死戦の島 13−1.反撃  マーシャル諸島奪還の任を帯びた同盟軍の大艦隊がエニウェトクに集結しつつあった。  その数、戦艦四〇・空母十六・巡洋艦二九・駆逐艦七一。  これに各種輸送・補助船舶八五隻と直衛艦三二隻を加えた総数三七三隻の大艦隊が、東南東へ針路をとる。  「緒戦の屈辱を晴らすときが来た」  意気揚がる同盟軍に対し、米海軍はマンハッタン計画に起因する再建の遅れを取り戻せていなかった。  そして、マーシャル沖に二度目の砲声が轟く。 13−2.奪回  米艦隊を一撃で撃破した同盟軍は、マーシャルの主要根拠地に対して次々と攻勢を掛けた。  ウォッゼ、クェゼリン、ヤルートと片端から奪回が進む中、最大の根拠地であるメジュロへの上陸作戦が間近に迫る。  だが、四年の歳月が流れる間に、米軍はメジュロ環礁を難攻不落の要塞と化していた。  艦砲射撃を生き残った砲陣地が、そして戦車部隊が、上陸直後の同盟軍に襲い掛かる! 13−3.矛先  遅れ馳せながら西海岸で竣工した新造戦艦群を呼び寄せた米軍は、ハワイに戦力を集結させて応戦の構えを見せる。  一方マーシャルを攻略した同盟軍の矛先は、タラワとナウルに向けられた。  孤立した米軍守備隊は航空隊の全力をあげて迎撃。さらに、真珠湾からハルゼー機動部隊が救援に駆けつけた! 13−4.ポリネシア・キャンペーン  中部太平洋の制海権を奪われた米軍は、ジョンストン、ミッドウェイと立て続けに拠点を失った。  そして戦艦三八隻を含む同盟軍の大艦隊がメジュロを進発。目標は米太平洋艦隊の根拠地ハワイ。  この動きを察知した米軍もまた迎撃態勢を敷くが、投入の間に合った戦艦は十八隻止まり。  「此処が死に場所か」  覚悟を決めたニミッツ長官の眼前に、同盟軍の水上砲戦部隊が現れる。 13−5.強襲  太平洋艦隊主力に完全にとどめを刺した同盟軍は、ついにハワイ攻略に着手した。  陸軍二個師団、海兵隊一個師団が守るオアフ島に、同盟軍は四個師団を投入。  着上陸支援の駆逐艦と海岸に陣取ったカスター重戦車が激しく撃ち合う中、  フォード島で、ワイキキの砂浜で、砲火の応酬が繰り広げられる。 13−6.死戦の島  戦場はオアフの内陸へと移りつつあった。各地の飛行場を巡って血みどろの争奪戦が繰り広げられ、  海岸近くで抵抗を続ける米軍部隊の頭上には艦砲の雨が降り注ぐ。  揚陸された重砲による制圧砲撃と艦載機による爆撃を受けたホノルル市街は瓦礫の山と崩れ落ち、  そして真珠湾軍港に特務輸送艦の任を帯びた装甲巡洋艦の戦隊が突入した! 13−7.楽園追放  軍港一帯と艦隊司令部建屋を制圧して沿岸部をほぼ押さえた同盟軍は、続いて内陸部の完全制圧に乗り出した。  山岳地域へと至る丘陵に最後の抵抗線を引いた米軍だったが、  強力な航空支援を受けた同盟軍の前に重装備の大半を失い、為す術なく北部の平地へ叩き出されてしまう。  ワイアルア郊外に集結した残存兵力一万人あまりは、そこで脱出船団の到着を待つ。  だが、東西からは追撃を掛ける同盟軍が猛進していた。 第十四巻 ターニング・ポイント 14−1.偽りの決戦  ハワイの戦いは決戦ではなかった。少なくとも、合衆国にとっては。  潜水艦と航空機による偵察、そして諜報活動により得られた情報は、確かにその意味を語っていた。  東西両海岸の造船所で次々と建造される艦船群。そして、全土の工場で日産何百機と製造される航空機。  「勝負は、これで終わらせてはもらえない」  同盟軍の参謀たちは、あまりにも異質な大工業力の前に戦慄する。 14−2.建艦  北米西海岸に、三度巨大な艦隊兵力が出現しようとしていた。サンフランシスコ、ロングビーチ、サンディエゴの  各工廠がフル稼働し、次々と新造艦を洋上へと吐き出していく。  その数、戦艦六・空母三・巡洋艦十二・駆逐艦四五。  「太平洋艦隊の再建は何度でもできる。あとは敵の息切れを待つだけだ」  フォレスタル海軍長官の自信は揺るがない。  だが、この動きは同盟軍の新たな作戦を呼び起こそうとしていた。 14−3.無限の幻像  同盟軍は米本土攻撃──葬送作戦の発動を決意した。  西海岸の巨大な生産力を叩き潰さない限り、太平洋での勝利すら覚束ない。  落としたばかりのハワイに集結した兵力は、戦艦二五・空母二三・巡洋艦二十・駆逐艦六四。  「かくなる上は、米国の生産力を直撃するしかない」  最初から銃尾の破壊を目的として砲火を揮うという最後の一線。それは、戦争の本質を転換する決断となった。 14−4.東進  再編途上の太平洋艦隊司令部に、同盟軍ハワイ出撃の報が届く。  だが、その陣容と目標が掴めない。一体どれだけの規模の部隊がどこに向かって進撃しているのか。  第一目標をサンディエゴ、第二目標をパナマと仮定した米軍は、サンルーカス岬西方沖に艦隊兵力を集結させる。  しかし、同盟軍の作戦目標と規模は彼らの予想をはるかに上回るものだった。 14−5.空爆  シアトル市街とボーイング本社工場に、二百機近い同盟軍艦載機が襲い掛かった。  続いてサンフランシスコとバークレーにも猛爆が加えられる。  さらに、哨戒中のカタリナがグアダルーペ島沖を東進する戦艦部隊を発見。  直ちに太平洋艦隊は全力を急行させたが、その直後にパナマから至急報が。 14−6.絶滅への謳歌  グアダルーペ島沖海戦は一方的な殺戮劇に終わり、米海軍太平洋艦隊は戦力としての存在を失った。  さらにサンディエゴおよびロサンゼルスの軍港と市街地に対して大規模な艦砲射撃と空襲が行われるに及んで、  西海岸の主要な軍事・軍需施設はことごとく破壊し尽くされた。  そして、パナマ運河に対して行われた艦載機三百機による攻撃が合衆国の東西を結ぶ大動脈を中央から両断。  こうして葬送作戦の所期の目的は果たされたかに見えたが、これによって思いもよらぬ動きが生まれ始めていた。 14−7.ターニング・ポイント  北米西海岸の生産力を壊滅させることに成功した同盟軍だが、代償はあまりに大きかった。  それまで自軍の戦死者の発生に消極的であった合衆国の国内世論がこの攻撃によって一気に沸騰。  「本土攻撃によって失われた十五万の命の復仇を為せ!」  戦争への支持が盛り上がり、東海岸の造船所が、各地の航空機工場が、猛烈な勢いで稼動する。  そして平穏がもたらされたかに見えた太平洋にも、次の嵐が迫りつつあった。 第十五巻 東方への狂奔 15−1.ウロボロス作戦  東太平洋方面の反撃ルートが当分使用不能となったのを受けて、連合軍は新たな侵攻ルートを策定した。  合衆国から送り込まれた工兵団が、戦闘で破壊されていたスエズ運河の復旧と拡張に取り掛かる。  同じ頃アレキサンドリアには、戦艦十二隻を中核とするフランス・イタリア両海軍の遠征艦隊が集結。  その舳先は、インド洋へ向けられようとしていた。 15−2.放たれた凶獣  開通したスエズを通った連合軍艦隊は、紅海を南下してアデンとジブチに拠点を構えた。  現地情報員からの連絡で報を受けた同盟軍だが、艦隊主力は葬送作戦による消耗から立ち直っておらず、  直ちに回せる戦力では連合軍部隊の阻止は覚束なかった。  「せめて情報だけでも掴まなければならない」  インド洋の守りは寄せ集めの巡洋艦部隊、サイクロン戦隊に託された。 15−3.孤艦奮迅  サイクロン戦隊所属のカヴェンディッシュ級大型偵察巡洋艦、HMSホーキンス。  本国艦隊の生き残りの一艦である艦齢三十年近いこの老嬢が、戦局の行方を担おうとしていた。  セイシェル諸島北方を単艦で哨戒中の彼女の電探が、大規模な水上反応を捉える。  ただちに急行して敵情の確認を行うべき状況であり、彼女は直ちにそれを実行に移した。  だが、北上したホーキンスの眼前に現れたのは、仏戦艦ノルマンディーをはじめとする連合軍の主力艦隊。  反転した彼女を巡って、一大追撃戦が幕を開けた。 15−4.即応兵力  日本海軍主力は、ようやくのことで葬送作戦による消耗から回復しつつあった。  再建なった第一艦隊主力を投入すれば、ノルマンディー亡き今、仏艦隊を鎧袖一触に出来ることは確実だ。  だが、そこへ気がかりな情報が飛び込んできた。  合衆国が、再建された大西洋艦隊主力をホーン岬経由で太平洋に廻航しようとしているという。  さらに、進出の遅れていたイタリア艦隊主力がソコトラ島に集結。  インド洋のパワーバランスが一気に崩れ始めた。 15−5.東方への狂奔  戦力の充実を見た仏伊艦隊は、ついにインド洋東部制圧を目指して動き始めた。  日英の主力は未だに太平洋から動けず、対応は後手に廻ったものとなる。  その隙に仏伊艦隊は連合国陸軍の進撃に呼応してゴアにまで進出し、チャゴス諸島にも三色旗が翻った。  有効な反撃ができない同盟軍の混乱を見てとった連合軍は、続いて東部インドへの侵攻を開始。  戦争の焦点はヒンドスタン平原とベンガル湾の二点に集中しようとしていた。 15−6.ベンガル攻防戦  東部インド洋の守りの要として、同盟軍は再建途上の兵力から戦艦ヴァンキッシュを中心とする一個艦隊を捻出した。  数の不利を性能と雷撃能力で補った同盟艦隊は、アンダマン西方沖で連合軍との決戦に臨む。  だが、仏伊艦隊の実力は予想を超えて上昇していた。別働として現れた新鋭戦艦ランヌ、ネイ両艦の砲撃を受け、  同盟艦隊は旗艦ヴァンキッシュを初動で轟沈された。そして、勢いに乗る連合軍は嵩に着て総攻撃を開始。  戦艦部隊が動きを封じられる中、同盟軍水雷戦隊の苦闘が始まった。 15−7.ストーム・エクステンション  ベンガル湾を巡る戦いに勝利した連合軍は、続いてダッカ、チッタゴンを奪取。  海岸地域から追い落とされた同盟軍は、ビルマの山岳地域を防衛線として体制の立て直しを図る。  だが、それを見透かしたかのようにアンダマン海を海上機動した連合軍は、一気にサンドウェーを攻略。  アキャブで孤立する友軍を救援すべく、マンダレーに集結した日本陸軍部隊がインパール方面へ突破を開始する。  そして、海上の戦いはマラッカ海峡の制海権を巡るものへと変化しつつあった。 第十六巻 インディアナ・ロード 16−1.征西兵力  マラッカ海峡の制空権を巡る航空戦に勝利を収めた日英は、  それまで日本本土に温存していた戦略予備である陸軍二個師団を用いての反攻作戦を立案した。  だが、そのためにはどうしても取り除かなければならない障害があった。  アンダマン諸島に展開する連合軍航空兵力と、高速型潜水艦多数を擁する海中打撃部隊。  これを排除するべく、スマトラ〜南緬方面に基地航空隊が集結する。 16−2.船団  インパールを巡る戦いは包囲機動を成功させた日本軍の勝利に終わり、  サンドウェーに孤立した連合軍一個旅団は降伏に追い込まれた。  一方、戦線そのものはインド・ビルマ国境を挟んで一進一退の膠着状態に陥る。  兵站の限界に悩む連合軍と絶対的な戦力の不足に苦しむ同盟軍、両者の結論は図らずも一致した。  ベンガル湾の覇権も定まらぬ中、上陸作戦部隊同士の交錯という空前の戦いが始まる…… 16−3.インディアナ・ロード  連合軍上陸部隊を撃破した同盟軍は、セイロン・南東インド方面への反攻作戦の再興に着手した。  策源地シンガポールに集結したのは、 16−4.多重阻止線 16−5.マドラスの炎 16−6.橋頭堡 16−7.標準戦艦 第十七巻 夢宴の醒めるとき 17−1.余剰兵力 17−2.攻勢防御 17−3.ホーン航路 17−4.東方の守り 17−5.サブ・ディサイシブ 17−6.途絶 17−7.夢宴の醒めるとき 第十八巻 祖国への道 18−1.托生 18−2.亜大陸戦線 18−3.セラミック・ロード 18−4.祖国への道 18−5.カスピの辺にて 18−6.紅海打通作戦 18−7.メソポタミアの混沌 第十九巻 顎は開かれた 19−1.シナイの顎 19−2.コーカサス・ポケット 19−3.豹変 19−4.アナトリアの盟友 19−5.兵站路 19−6.カイロ争奪 19−7.顎は開かれた 第二十巻 海嘯作戦発動 20−1.黒海の胎動 20−2.中継基地 20−3.オールズ・スティール 20−4.偵察 20−5.スエズ航過 20−6.海嘯作戦発動 20−7.回天の階 第二一巻 レパントの復讐 21−1.イオニア暴風空戦録 21−2.参陣 21−3.世代 21−4.レパントの復讐 21−5.潰走 21−6.脱落 21−7.エンカレッジ・フォース 第二二巻 砂塵の狭間にて 22−1.砂塵の狭間にて 22−2.激戦トリポリ 22−3.ガベスの鮫達 22−4.ティレニア強行突破 22−5.東地中海工廠 22−6.チュニス陥落 22−7.太陽の翼 第二三巻 首都炎上 23−1.南からの脅威 23−2.抵抗 23−3.パイロマニアック 23−4.容赦せず 23−5.成層圏 23−6.矜持 23−7.首都炎上 23−8.戦備 第二四巻 アトラスの城門 24−1.アルマダの末裔 24−2.術策 24−3.和議 24−4.シー・ハイウェイ 24−5.威風堂々 24−6.回帰そして戦雲 24−7.アトラスの城門 第二五巻 北回帰線戦役 25−1.センチュリー・フリート 25−2.戦闘正面 25−3.策源地 25−4.ホーム・アイランド 25−5.北回帰線戦役 25−6.センチュリー・ファイター 25−7.魔鳥が墜ちた日 第二六巻 遥かなるアルビオン 26−1.遥かなるアルビオン 26−2.統治 26−3.荒廃の王都 26−4.遠い仲間 26−5.二つの敵 26−6.王の帰還 26−7.時の果てのアルビオン 第二七巻 戦線崩壊 27−1.意地の開発 27−2.エスカレーション 27−3.北仏機動戦 27−4.ロアールの守り 27−5.バスクの烽火 27−6.戦線崩壊 27−7.直接対決 第二八巻 北海の嵐 28−1.Zの子ら 28−2.精兵参集 28−3.義勇艦隊 28−4.戦機熟す 28−5.北海の嵐 28−6.最強の魔龍 28−7.パリと呼ばれた地 第二九巻 炎の鉄十字 29−1.祖国回復 29−2.ランツェット・レーヴェ 29−3.目標はベルリン 29−4.秋霧作戦 29−5.最後の栄光 29−6.猛攻アルデンヌ 29−7.陸獣激突 29−8.炎の鉄十字 第三十巻 天空讃唱 30−1.大洋はるか 30−2.恐怖の翼 30−3.大陸の力 30−4.X−DAY 30−5.もっと高く 30−6.天空讃唱 30−7.徹底抗戦 第三一巻 讐心は吾等に 31−1.外交工作 31−2.大西洋航路 31−3.空中戦艦 31−4.彼岸からの奇襲 31−5.讐心は吾等に 31−6.ジェノサイド・サーキット 31−7.攻勢計画 第三二巻 鋼の暴風 32−1.戦艦のいないオークニー 32−2.流浪の艦隊 32−3.カリブ大要塞 32−4.フラッシュ・ポイント 32−5.鋼の暴風 32−6.バハマの落人 32−7.加州宣戦 第三三巻 巨人の黄昏 33−1.満載 33−2.鉄牛ここにあり 33−3.陸嘯迫る 33−4.国境線 33−5.ゆっくりと南へ 33−6.アース・ドミネーター 33−7.巨人の黄昏 第三四巻 虹の果つる処 34−1.シーパワー 34−2.蹂躙 34−3.慈悲なき銃尾 34−4.希望潰える 34−5.忘れられた平和 34−6.熾火は残った 34−7.虹の果つる処