国立天文台野辺山 特別公開 1999.9.23 AM10:00〜PM4:00   戻る

 台風通過前日の9月23日、国立天文台 野辺山電波観測所に行って来ました。先日来の雨で上宝−安房トンネルルートが通行止め。富山−糸魚川−大町−松本−小淵沢ルートを選びました(というより、これしかない)。10時の公開開始に間に合うように、まだうす暗い朝5時に出発。途中、自動車道の管理舎に寄って道路状況などを尋ねたりしながらも、指定されていた野辺山スキー場の駐車場に着いたのは9時45分ごろでした。
 そして心配された天気も曇り時々晴れ、屋外でのイベントも予定通り行われていました。

 入り口近くにある、電波観測所(緑の部分)の全体案内図。
 青色の大きな丸は45m電波望遠鏡、小さな6個の丸は10m電波望遠鏡。この日は10m電波望遠鏡の位置が案内図とは違う配置でした。
 V字の赤い線は10m電波望遠鏡が移動するための軌道で、斜めの線が南北レール、横の線が東西レールです。レールのそばにあるオレンジの部分は10m電波望遠鏡の固定台で、観測のテーマ(?)によってどの固定台に10m電波望遠鏡に設置するか選ばれます。

 10m電波望遠鏡を南北方向に移動させる南北レール(左側の長いレール)。
 上の案内図の斜めの線の左下端の位置から、45m電波望遠鏡に向かって撮影。

 こちらは東西レール。
 東西・南北レールからさらに固定台(ステーション)まで、短いレールが敷かれています。この上を1基40tぐらいある10m電波望遠鏡を乗せて移動する子台車があり、東西・南北レールを移動する台車がそれらをまるごと乗せて動くというシカケ。
 東西レールと南北レールのつなぎ目には転車台(ターンテーブル)があって、そこで向きを変えて移動します。


 太陽電波観測棟前広場で行われた電子工作コーナー。
 太陽電波の検出器の製作です。回路はいわゆる倍電圧検波回路で、簡単ですが基板の一部加工と小さい部品のハンダ付けは結構大変。
 出来あがったら実際に太陽電波を受信し、動作確認をしてもらいます。パラボラアンテナの受信した電波を検出器に通して電圧の変化に直し、それをパソコン処理・グラフ化します。



 私が作った検出器と動作成績グラフ。測定は、空の電波レベル・電波吸収体のレベル・太陽の電波レベルを測っておこないます。
 測定値は空の電波レベルを基準として電波吸収体が4.8、太陽が9.0。で、2つの比をとって300倍するとおよそ160となり、これに測定に使ったアンテナの性能などの係数90をかけると14400となりました。
 このときの測定は12GHzの周波数でおこないました。これは太陽では彩層とコロナの間から出ている電波だそうです。そして14400という数字はその部分の温度ということになります。ま、だいたい誤差の範囲内ということらしいです。


 太陽電波へリオグラフのアンテナ群。いつも太陽の方向を向くよう動いて受信しています。通称ヒマワリアンテナ(と言うかは定かではない)。
 案内図では、東西レールが敷かれている横にのびた敷地とそこから上に突き出た細い敷地とに点々と描かれ、ちょうどT字を逆さにしたような配置になっています。直径80cmのアンテナは10m電波望遠鏡と比べてずいぶんと小型ですが、東西500m南北220mに合計84基並び、直径500mの電波望遠鏡と同じほどの解像度があるそうです。
 上の写真は45m望遠鏡解説コーナー付近から、左は干渉計観測棟付近から撮影しました。
 ここは電波へリオグラフ観測棟(太陽電波観測棟)の中。ヒマワリアンテナ84台の信号をここで処理しています。左側にある(写真には写っていない)コンピュータで処理、画像化しています。

 直径10mの電波望遠鏡。ミリ波干渉計と呼ばれています。6基あって、配置により最大600mの電波望遠鏡に迫る解像度が出せるそうです。このとき、人間の視力に換算して60にもなるそうです。ちなみに、45m望遠鏡は人間の視力にすると4だそうです。
 それぞれ受信した電気信号を、写真右側にある観測棟で処理します。
 ミリ波干渉計観測棟にある装置。望遠鏡の方向制御装置らしい。
 45m望遠鏡と連携してさらに性能アップができるそうです。こんなふうに活用できるのも、電波望遠鏡ならではの特長です。
 これは電波望遠鏡から得られた膨大な量の信号を処理する心臓部。
 説明を聞いてもやたら難しくて「???」 ・・処理、解析、そういうようなことする部分なんでしょう。装置の中にはこの基板が何枚も使われているそう。4〜5cm角ぐらいかな?放熱器付きの大きなLSIが印象的です。


 離れて見ても近づいて見ても、やっぱり45mは巨大なアンテナ。鏡張りにして太陽光湯沸し機にできないかとか、巨大雨量計になるんじゃないかとか、想像は尽きません。

 望遠鏡付近は大勢の人でごった返していました。また、建物の中でも人でムンムン。係りの人も大変そうでした。小さい子供たちもたくさん来ていました。将来、科学者になる人たちがたくさん出てくれるといいな。

 この望遠鏡は、海外の電波望遠鏡とも協力して観測することもできます。そうすることで、地球規模の巨大な電波望遠鏡の解像度が得られます。受信データは磁気テープに記録して、他の研究所などとデータ交換します。記録するデータが膨大なので、放送局用のデジタルVTRに収められます。これはたしか、D−1規格だと思いましたが。
 大人気の、45m望遠鏡に「おさわり」コーナー。表面の精度が0.08mmとかで、たたいたりかじったりしてはいけません。
 近くで見るとたくさんの反射板を並べて作ってあり、その板と板との間は隙間を開けてありました。たぶん設計ミスで反射板を小さく作ったためでしょうが(それはウソです)、これでは雨水をためることはできません。
 この板、厚さが10cmほどありますが、内部はハニカム構造で、軽くて丈夫な造りになっています。
 これは45m電波望遠鏡内の設備。左の写真、白熱灯に照らされて赤みがかった色に写っている装置は野辺山電波観測所が誇る、世界最大の5×5マルチビーム受信機。宇宙空間に漂ういろいろな分子が出す電波を捉えることができる装置です。液体ヘリウムで−270℃ぐらいに冷却されて動作しています。この装置によって、宇宙にはいろいろな物質があることが分かってきました。また、地球上にはない物質もあるらしいことがわかってきました。

 45m鏡の後部のようす。半円形のギアによって上下に向きを変えます。扇型の板がアンテナのバランスウェイト。水平方向は台ごと回転し、台には上の写真にあるような設備が収容されています。今日は1階部分が公開されています。
 なお、クジに当たった人は係員に引率され、写真に見える階段を登り、さらに上のアンテナのそばまで行けました。私は残念!外れでした。

 強度・偏波計。電波ヘリオグラフ観測棟の東側にあり、太陽電波関連の観測をおこなっています。

 他にも、この日だけの特別講演やミニロケットの打ち上げコーナー、星座早見盤の製作、スタンプラリーや電波ヘリオグラフクイズもありました。クイズは10問あって、7問以上正解すると特製写真絵葉書がもらえます。私は6問は自分で考え、1問は友人と相談し、残る3問は説明パネルの中から探し出し(カンニングし)て全問正解でした。 ワッハッハ
 見ずじまいだったものもたくさんあって、とても1日では回りきれませんでした。また、電波望遠鏡などにあまり興味のない人でも楽しめるよう企画されていたと思います。


 早朝出発のための寝不足のせいか、それとも高所(標高1400mほど)のせいか、軽い頭痛がしていました。それにずっと歩きどおしで、午後2時半を過ぎるとみんな(3人)かなり疲れてきました。ほんとは干渉計観測棟など、もう一度回りたいところがまだあったんですが、引き上げることにしました。
 入り口駐車場の一角にお店屋さんがあったので、そこでおみやげを買い、出発をしたのは午後3時半前。道路交通情報では安房トンネル−上宝ルートの通行が再開されたようなので、そちらを回って帰ることにしました。順調に走れたんですが、家に着いたのは午後8時過ぎ。朝のルートよりずっと近いはずなのに、かかった時間はたいして変わらず、意外でした。
 続いていた頭痛もいつのまにか治っていて、あれはやっぱり高山病の兆候だったのだと思うことにしました。

 ・・・だらだらと読みづらいでしょうが、1ページにまとめてしまいました。

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