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今月の1点 2001年11月 |
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永年の画商生活の中で、印象に残る作品や作家がいる。その中から、毎月1点の作品を思い出とともに語ってもらおう。
![]() 「Packed Coast, Project for Little Bay, Australia (Collage)」 1969年 鉛筆、布、糸、チャコール、パステル他 71x56cm クリストの初期(1958-69)の作品展が、ただ今ベルリンのバウハウス美術館で開 催されている(9月8日〜12月30日)。この作品「Packed Coast, Project for Little Bay,Australia」は「Wrapped Cans」とともに、この展覧会に出品展示されている。 私の画廊では過去に6回のクリスト展を開催しているが、2回目からは毎回、クリス ト夫妻が来廊された。カタログも毎回制作している。 私は最初、クリストを極めて筆力のあるシュルレアリスムの画家であると思ってい た。なぜならニューヨークの高層ビルを布で包んだドローイングを見て、これは現実 にはあり得ない絵だ、と思ったからである。ところが何と、実際に包んでいるのを知っ て強い衝撃を受けた。これまでの私の美術の理解は崩壊し、私の現代美術への開眼と なったのである。 クリストのしごとは最初、缶の梱包(1958)から始まり、シドニーの岬を包み (1969)、パリのポン・ヌフを包み(1985)、ベルリンのライヒスタークを包んだ (1995)。包むというコンセプトは拡大され、サンフランシスコ近郊のランニングフェ ンス(1976)、茨城県とロスアンジェルス近郊を舞台にアンブレラ(1991)のプロジェ クトを実現させた。そして現在はアメリカ合衆国で2つのプロジェクト(「The Gates, Project for Central Park,N.Y.」と「Over the River, Project for the Arkansas River,Colorado」)を準備中である。 クリストは多面的な芸術家である。画家、立体造形家、建築家、そしてイベント・ パフォーマンスの作家である。しかし一言で言えば、彼のしごとはプロジェクトを行 なうこと、ということに尽きる。 このプロジェクトは事業である。当然そこには事業計画と資金計画が必要である。 またこうしたプロジェクトは、クリスト1人では成立しない。妻のジャンヌ=クロー ドという宿命的パートナーがいなければ、彼のしごとはできない。宿命的、と言った が、2人はともに1935年6月13日生まれなのである。私は彼らのパスポートを見て確認 した。まさに魔術的で宿命的なパートナーである。 クリストとジャンヌ=クロードのプロジェクトは数週間で消える。例えばライヒス タークのプロジェクトは、準備に24年の歳月を要した。ドイツ連邦議会で正式に承認 されたのが1994年2月、実現したのは1995年6月24日で、7月7日まで2週間公開された。 ベルリン市の公式発表ではこの間に500万人の観客が押し寄せたという。ここで大事 なことは、このプロジェクトが展示後、建物を元通りの姿に戻すところで終了すると いうことである。2週間のために24年の歳月がある。ここにクリストとジャンヌ=ク ロードの美学がある。 こうしたプロジェクトには恐ろしいほどの資金が必要である。ライヒスタークのプ ロジェクトには10億円を超える費用を要したそうだが、これはすべてクリスト夫妻が 調達する。ドローイングなどのクリストの作品を売り、銀行からの借入れで賄う。寄 付は一切受け付けない。ここにマネージャーであるジャンヌ=クロードの姿勢があり、 それを見つめているクリストの姿が見える。 クリスト夫妻のプロジェクトはエネルギーに満ちている。プロジェクトは数週間で 消えるが、その行為、パフォーマンスは神話として後世に伝えられる。芸術の本質は 人間に力を与え、エネルギーを引き出してくるものである。その典型がここにある。 *佐谷画廊で作成したクリスト展ポスター(クリストサイン入り)が、まだ若干あり ます。ご興味おありの方は販売いたしますのでご連絡ください。 ![]() 「Wrapped Roman Wall (Collage)」 「Wrapped Statues, Project for Der Glyptothek,Munchen (Collage)」 1974年 1984年 鉛筆、布、糸、チャコール他 72x57cm 鉛筆、布、糸、チャコール他 71x56cm ![]() 「Wrapped Cans(one can and one wrapped can)」 1958年 ラッカーペイントした布、紐、カン 25x11.5cm |
11/15/2001
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