♪僕が音楽に目覚めたのは小学生の時♪ ♪兄が聴く洋楽レコードを後ろで聴いていたのがキッカケです♪ さて、そんなASLAN中村の今回のえこひいきな音楽評論は June Tabor/ジューン テイバー ☆評論 派手さは無いけど、じわじわその人の持ち味が伝わっていくような音楽を総括して、「スルメイカのような」音楽と呼んでいる人がいました。その人の言葉を借りるなら、ジューンテイバーは正にスルメイカのような、地味だけどしっかりした歌を伝えてくれる人です。 ジューンテイバーの歌の特徴はなんといってもアカペラを効果的に使ってくる事です。しかも通り一遍のアカペラではありません。エコーや効果音等、レコーディング環境をうまく取り入れてアカペラにバリエーションを持たせています。だから1つのアルバムのほとんどがアカペラでも、あまり派手な楽器編成を組まなくても、違和感無くまた飽きること無く聴く事が出来るのです。 また、もう1つの特徴として挙げられるのが、「場」の空気感をCDに取り入れるのが得意な事です。 演奏する音と一緒にその場の雰囲気まで録音されているような状態です。アナログファンの方ならおわかりいただけますよね。ジューンテイバーを聴くと、僕は「場」の3D体験をしている錯覚に陥ってしまいます。CDプレイヤーの向こう側で今、正に聴いている音楽がジューンテイバー達によって演奏されている。窓の外を見渡したら、人気の無い海辺近くのヒースの丘が一面に広がっていそうな。実に不思議な感覚です。もちろんこれにはジューンテイバー本人だけでは無く、エンジニア、プロデューサーの手腕も必要ですし、近年の彼女の作品にはこの辺りの感覚が少し無くなったような印象を受けるので残念ではありますが、それにしても、まだまだこんな体験をさせてくれるミュージシャンって今のデジタル時代には稀な存在だと思います。 蛇足ながら、ジューンテイバーの最初の作品であるシリーシスターズ(マディプライアとのデュオアルバム)発表から20数年経過しましたが、彼女がプロとして活動しているのは10年ほど前からの事です。それまではアマチュアとして作品を発表していました。理由は色々あったようですが(家族の事、本業の事、etc)それにしても、アメリカもそうだと思いますが、イギリスという国は、才能がある人には、色々な意味でこんなにも受け入れる間口が広いんだという事を認識したような気がします。我が母国、日本もこういう状況だったらなぁ(←まぁまぁ、、、) ☆お奨めのアルバム3枚 ♪Abyssinians/アビシニアン(1983年) ジューンテイバーの「静の世界」を堪能するならこれ! 参加メンバーは ジューンテイバー(ボーカル) デイブブリストー(ピアノ、シンセ) リックサンダース(フィドル) マーティンシンプソン(ギター) この4人のみ。しかも全員でフル演奏している曲はほとんど無し。 トラッドファンならお馴染みの彼らを効果的に配置させる、ジューンテイバーの才能は圧巻の一言。フェア ポートコンベンションだと、デイブスォーブリックの後釜の為か地味な印象を受けてしまうリックサンダースの「痒いところに手が届く」フィドルの音が心に染みる!! (でもフェアポートでのリックサンダースのフィドル結構イケてるからね。デイブがちょー凄すぎるの!) ♪AQABA/アカバ(1988年) 前作のAbyssiniansとほぼ同じメンバーで製作された。時間がゆったり過ぎていくような、前作同様ジュー ンテイバーの「静の世界」が展開される。これほど前作と同じ世界が展開するという事は、自分のコンセプ トによほどの自信があったのだろう。納得。特にアルバムタイトル曲では、マーティンシンプソンとの緊張感 溢れる音の駆け引きが展開される。二人の職人芸が冴えるこの曲だけでも聴く価値有り! ♪ANGEL TIGER/エンジェルタイガー(1992年) AQABAと本作の間に数枚作品があるが僕は全く聴いたことが無い。なので、どういう流れかはわからないが、この作品では明らかにジューンテイバー風のポップ寄りな音をねらっている。カルテット程度の弦楽器編成や、パーカッションが導入されているのだ。AQABAとは全く別なコンセプトの作品と断言できるがそこは彼女の才能、相変わらずフル演奏はさせずにあくまで音楽的な効果を狙った音の配置にしてある。そのセンスの良さには脱帽。ANGEL TIGERはジューンテイバーがプロとして製作した1枚目だが、本作のコンセプトがよほど気に入ったのか、あるいは「本当にやりたかった事はこれなのよ。」とでも言いたいのか、以後の作品の基本的な音が全ANGEL TIGERに集約されている。それはレコーディングスタッフのクレジットからも推測できる。AQABAに参加したメンバーがプロデュースチームも含めてほとんどいなくなっているのだ。正にガラリと代わっている。そしてANGEL TIGERの布陣で現在も引き続き活動しているのだ。 追伸 ジューンテイバー様 あなたの初来日公演をいつも夢見ております。 ASLAN中村 |