宮原一美さんとは神楽坂建築塾で知り合いました。
彼女は高山在住の家具作家で、塾生として、神楽坂ま
で通われていました。ご夫婦で「桐風舎」という木工
工房で活動されながら、高山近辺の民家や風景のスケ
ッチでも腕をふるわれています。去年の7月、アユミ
ギャラリーで「木の家具とスケッチ展」を開催された
時には、ご主人の素一郎さんともお会いすることがで
きました。
この春、国分寺のswitch・pointでの展覧会の折、彼女
作の木の額を購入したいと言ったら、高山の自然が香
るような水彩画のおまけ(?)をつけていただいて、
とても恐縮してしまいました。その御礼にという訳で
はないのですが、高山への帰路の前日、ご夫婦で、浦
和の我家に泊まって頂きました。彼等に見ていただき
たいものがあったのです。
それは、今住んでいる家の前身建物で使われていた、
桧の戸板です。大学二年まで過ごした私の部屋にあっ
た一間幅の押入れで使われていたもので、上下二段に
分れた合計四枚の框戸で、桧の一枚板が入っています。
それを私の母が大事にとっておいたのです。その家は、
彼女の父が大工として戦前に建てた家で、その家の形
見を何か再利用できないかと、だれか木工をされてい
る方に相談してほしいと言われ続けていたので、この
機会に、宮原さんご夫婦に見ていただいたという訳で
す。
戸板をお見せして主旨を説明すると、彼等も、そう
いった再生のデザインを是非やってみたかったという
ことで意気投合し、その板を高山に積んで行って頂く
ことになりました。その時ワゴンに積んであった椅子
を今度は母が気に入って、めでたくご購入。
それが左の写真の椅子です。写真では解りにくいの
ですが、座面は適度なザラザラに仕上がっています。
やさしい肌合いと、強靭な構成を合わせ持ったいい椅
子です。

「桐風舎」の作品は、以下のページでも紹介されて
います。
http://ultra.m78.com/

(写真・文 青山恭之)

update 20020423