日本民家園
  神楽坂建築塾の2月のフィールドワークは、川崎市立日本民家園。講師は佐奈芳勇氏と僕の二人。実は佐奈
氏は伊郷吉信氏のピンチヒッターで、伊郷氏が突然の戸張公之助氏の葬儀により、参加できなくなったのであ
る。ちょうど2年前のフィールドワークでは、戸張氏と伊郷氏にこの民家園を案内していただいた事が、不思議な
巡りあわせのように思えてならない。伝統技法研究会代表で古民家調査・修復の第一人者であった戸張氏とは
去年の10月27日、建築学会埼玉支所主催のシンポジウムで民家の話を伺い、その帰りの電車で御一緒させて
いただき、民家の保存の問題など、隣に座った僕に熱心に語って下さったのが最後になってしまった。合掌。
  僕にとってこの民家園は、様々な思い出がある。武蔵野美大の建築学科に入学して初めての建築史の授業
が宮上茂隆先生によるこの民家園の見学であった。宮上先生も、故人となられてしまっている。その授業で民家
に興味を持ち、夏休みのデッサンの課題にここの太田家を選び、猛暑の中、一週間通った。それが上の絵であ
る。大きさはB1。その時の相棒が、上記の佐奈氏であった。大きな木製パネルを持って毎日浦和から生田まで
往復するのは大変なので、新宿の佐奈氏の自宅に置いてもらったものだ。
 その後も幾度となく訪れ、専門学校で建築史の授業を受け持つようになって、民家園見学は、はずせないメニ
ューとなった。かつての級友、笠原健至氏がここのボランティア活動をされているのに出会った思い出もある。
  さて、今回の建築塾のフィールドワークは、ぽかぽか陽気の暖かい日だった。じっくり見ていったら丸一日あっ
ても足らないので、神奈川県下の古民家4棟の比較に重点を絞った。近世民家成立の頃(17世紀後期から18世
紀)、神奈川県下という限られた時間と空間のなかに生まれた民家を比べて見ていくと、それぞれの建築として
の姿が際立って見えてくる。そういう比較ができるのが、ここの民家園の大きな特徴なのだ。遅い昼の後スケッ
チしたのが下の絵、神奈川グループのうちの岩澤家である。(絵・文;青山恭之)

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