四万積善館
■ 3月末、上州四万温泉への小さな旅で積善館に泊まりました。元禄時代創業の古い湯宿で、現在は、川にそった部分から丘の上へ、3群の建物がレベルを変えて地中のトンネルでつながっている構成です。下から、寛政12年・1800年(あるいはさらに前)の建築で明治に三階を増築し、県の重要文化財にしていされている「本館」。その川に接して、昭和5年建築で国登録文化財の「元禄の湯」があります。中間のレベルに、昭和11年の建築で、国の登録文化財・群馬県近代化遺産に指定されている「山荘」。一番上が、RC地下1階地上4階の「佳松亭積善」です。僕等が泊まったのは「山荘」一階の突き当たり「萌黄の1」という部屋で、4尺半の縁側をL字にとった12畳の座敷。次の間と、近年増築された風呂等の水周りを併せ持っています。書院等の装飾に見るべきものがありました。上のスケッチは、その縁側から、暮れなずむ本館ごしの温泉街風景を描いたものです。
■ ここを有名にしているのはレトロな雰囲気の「元禄の湯」なのですが、その「元禄の湯」を一階に、二・三階に縁側を巡らせた建物の外観を、赤い欄干の橋から眺めた感じが、「千と千尋・・・」の「油屋」にそっくりなのに初めて気づきました。古い建物がていねいに使われ、時間がゆっくり流れる環境に出会った旅でした。(絵・文;青山恭之)