10月22日午後、講師をしている神楽坂美術塾のスケッチで、井の頭公園を訪れました。木々も色づきはじめ、好天に恵まれた休日で大変な人出。とても落ち着いて絵など描けそうになかったので、動物園(正確には、東京都井の頭自然文化園)に入ってしまうことにしました。分園から、小動物などをクロッキーしながら進み、本園に入って、象などを見ながら熱帯鳥温室まで。その後、各自、好みの題材を求めていったん解散しました。遊具のあるところは子供たちで大賑わいでしたが、それ以外は静かで、特に最も奥の彫刻園あたりは、落ち着いて絵が描けます。
僕は、長崎の平和祈念像で有名な彫刻家・北村西望のアトリエを描きました。それが上のスケッチです。何度も来ているところなのですが、正面に腰掛けてかたちを取ろうとして、初めて、南北両面の中央の高窓が、同形なことに気付きました。南の玉川上水沿いの道(園の外)から見た印象と、この北面との印象は、今までは別物のように感じられていました。この建物をぐるりと回って、南面・北面を連続して認識できなかったためでしょう。このスケッチの位置、真正面から見て初めて、南北の窓の重なりが認識されるのです。
スケッチは、あるまとまった時間を一定の場所のなかで過ごすために、その場所への認識が深まり、その空間をより味わうことができます。そんなことを感じながら仕上げた後、集合して全員の絵を並べて講評。この日は、花あり、動物あり、鳥あり、人物あり、建物ありと、それぞれの多様な空間・モチーフが、豊かな彩りを咲かせていました。(絵・文;青山恭之)
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