行田、それぞれ


1、古代蓮の里

7月のある日、行田に小さな旅をしました。行田蓮(古代蓮)は、市の天然記念物に指定されており、原始的な形態を持つ1400〜3000年前の蓮と言われています。今から約2000年前、「古代蓮の里」一帯は、たくさんの水生植物が茂る湿地帯だったそうです。そこには、蓮の花も咲いていて、そのとき咲いていた蓮の実が地中深くもぐり、長い長い眠りについたようです。1971年(昭和46年)、行田市が始めた小針地内に新しい焼却場施設を建設するための造成工事により水がたまって池となり、地中深く眠っていた蓮の実が目覚めたことをきっかけに、今にいたる蓮の里が、人の手により形作られてきたとのこと。古代蓮会館の展示も興味深く、蓮池の水面から花茎が立ち上がっている様子をイメージしたという高さ50メートルの展望タワーからの眺めは、関東平野を取り囲む山並みや、行田市全体を一望できるはずの360度の大パノラマでした。

秋から冬にかけて空気の澄んだ季節がおすすめとのこと。

2、忍城・郷土博物館

忍藩十万石の歴史を伝える、展示を備えた建物。行田は何度か訪れてはいたものの、足袋のこと以外はあまり知らなかった事に気づかさ れた小さな旅でした。(写真・文;永田博子)


行田の裏通り

ものつくり大学の設計の授業の関係で、行田の街を歩き回った時、くねくね続く裏通りを抜けて、写真の場所に出会いました。左がかつての足袋工場、右手は行田八幡の社です。この交差点に、既視感を伴った、不思議な場所性を感じたのです。都市空間を、街路沿いに連続していくひとつながりのものと経験するなかで、このような特異点(ランドマークというよりノードに近い)の存在は、街を豊かなものにする大切なものだと思います。行田の街は、裏通りがおもしろい。

(写真・文;青山恭之)