熊谷を歩く


 この春、神楽坂建築塾の石井瑞穂さんの案内で、二度、熊谷を歩く機会を得ました。一度は、4月27日、彼女が主催する「まち歩きツアー」で、旧中山道沿いから南口まで、さらに熊谷女子高界隈まで足をのばした日。二度目は、5月24・25で行われた「川沿い作品展」を見に行った24日に、聖パオロ教会(上の絵)をスケッチした後、作品展の実行メンバーである彼女に、成田用水沿いを案内していただいた日です。
  まず、聖パオロ教会ですが、大正8年、アメリカ人建築家ウィリアム・ウィルソンによって建てられた煉瓦造平屋、登録文化財に指定されています。関東大震災や戦火にも絶えた、貴重な建物です。インテリアもすばらしい。ウィルソンは、立教大学の礼拝堂や校舎、埼玉県内では川越キリスト教会なども設計しています。


  さて、中山道熊谷宿は、浦和などに比べればかなり大きな宿場だったようです。でも現在では、宿場の面影はほとんど残っていません。ただ、下の写真、八木橋百貨店には石碑などが作られていて、いにしえを偲ぶことができます。この建物は旧道をまたいで(旧道の上に)建てられていて、入り口から、売り場の中を通って出口までの通路が、旧道そのものということです。


八木橋百貨店を貫いた先の商店街には、旧道の道筋が残っていました。古い建物がちらほら残っていて、うなぎの寝床のような町屋の敷地割りや、煉瓦の蔵などがありました。


  石井瑞穂さんは、熊谷のまちを歩きに歩いて、古い建物を見つけてはスケッチしています。彼女が「発見」してくれた建物は、なかなか僕達を楽しませてくれます。左は銭湯「朝日湯」、右は、南口のほうにある「旧小野里工業」の建物です。


  熊谷の名のおこりである熊谷次郎直実ゆかりの熊谷寺(ゆうこくじ)です。普段、門は閉じられていることが多いそうですが、この日(4月27日)は中までおまいりすることができました。右は、直実の墓所です。


  さて、「川沿い作品展」ですが、地元のひとたちによるささやかなイベントです。住宅地のなかを流れる成田用水にそって、民家の座敷や庭を開放してギャラリーにしたり、花をかざったりという試みが、今年で9年目になりました。


石井さんはこの「まちづくり」について、神楽坂建築塾の修了製作で発表され、それが雑誌「住宅建築」で記事となって、僕も一度見に行かなければと思っていました。左は、メイン会場のひとつ「箱田神社」で、熊谷と用水路の歴史などの展示が行われていました。右は、垣根がギャラリーになっている展示。


  下は、若原さんというお宅で、人形や、玄関を使ってのステンドグラス展示などが行われていた様子です。ハーブティーや、熊谷の小麦を使ったパンなどもふるまわれていました。ここは建築も見事。


  地元のみなさんが工夫して、用水路ぞいを美しくしつらえていました。ちょっとしたことが、まちを美しく彩ります。


  自宅の駐車場を会場にして、琴とハーモニカによるコンサートが行われていました。


  川沿いの道を生活の場にしている住民達が、その空間を愛し、無理に背伸びをするのではなく、等身大の表現をしているのがとてもいい雰囲気でした。「まちづくり」は人の和だと感じました。