アトリエ・リング 一級建築士事務所

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さいたま芸術劇場見学

さいたま芸術劇場外観

梅雨が明けた(とされる)翌日の7月15日、埼玉大学工学部の建築学概論の授業で、さいたま芸術劇場を見学しました。香山壽夫氏の設計で、平成6年にオープンした建築です。今まで何度かコンサートは聞きに来ているのですが、今回、敷地の条件から、全体の計画、それぞれのホールの性格付けや統合する動線など、建築の全体を大きくとらえることができました。最初の写真は、与野本町駅から、たつみ通りに沿ったアプローチを経て、交差点に面した姿です。タワーがランドマークとなり、アーチの連続が、奥行き方向へといざないます。

上の写真が、「ロトンダ」。地上から緩やかにワンフロアー上がって、主だった3つのホール共通のアプローチが分岐する空間です。たつみ通りがくの字に曲がるところで、この円形平面が、扇の要のように角度の調整を引き受けています。

大ホール

まず見学したのが、この大ホール。776席は、ここの最大です。2000人といういわゆる大ホールの規模をさけ、肉声での演劇を主眼としてこの規模を選択したのが、この芸術劇場最大の特徴でしょう。主舞台と同じ面積の舞台が後ろと右に、さらに主舞台の半分の舞台が左に控えている、スリーハーフという本格的な仕様のプロセミアム型劇場です。本格的オペラまでが想定されていて、主舞台とほぼ同じ面積の平場の客席を、二層のバルコニー席が囲んでいます

大ホール

上の写真は、劇場の赤岩主査に説明を受ける学生たちです。

次は、小ホール。同じ演劇用ホールですが、プロセミアムがなく、座席を変化されることで、円形劇場に遡るような、客席に囲まれた舞台が形成されています。前衛的な現代演劇やファッションショーなど、様々な演出に対応できそうです。最大346席)

 そして、音楽ホール。座席数は604で、一般的には中ホールといえるような規模で、室内楽を中心に考えられており、オーケストラも小編成なら可です。いわゆるシュスーボックスタイプの箱型空間で、壁面など、細かい凹凸のあるデザインで、2秒という長めの残響時間をもつ音響設計がなされています。演劇用のホールが、床まで黒で押さえられていたのに対し、木を前面に出し、暖色系の色使いで、天井からは間接的に自然光がおりてくるような、やわらかい空間が実現しています。舞台に上がってみて劇場の赤岩主査から教えていただいたのは、床のフローリングの貼り方が、客席に対して垂直方向であること。音が、客席の方へ流れていくからだそうです。学生達は、声の響きなどを実感していました。

 ここから舞台の袖に入り、楽屋などの裏周りを見せていただき、「ガレリア(写真上)」に出て、そこから、稽古場や練習室への動線を確認しました。この「ガレリア」は、普通だと裏周りとなっていまう楽屋動線を、一般の動線とあえて重ねて、出演者と客との出会いを用意しているとのことでした。明快な軸を持った空間です

 ここを通って円形の「情報プラザ(写真上、ロトンダの下部)」に出、今日は見ることのできない映像ホールやライブラリ、カフェへから外部へとつながるの空間などを見て、最後に質問などのやりとりをして解散としました。普段の教室より、学生たちが生き生きと振舞っているのが印象的でした。(写真・文;青山恭之)