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《大地の芸術祭》 越後妻有アートトリエンナーレ2009 |
『限界集落』という言葉をご存知ですか?
このことばと縁を切っては語れない地域のひとつである新潟県の南端に位置する十日町市と隣の津南町が、この夏の終わりに、埼玉住まいの会の研修旅行の際に訪れた《大地の芸術祭》越後妻有アートトリエンナーレの会場です。垣間見た、ほんの少しをご紹介します。
9年前の2000年にスタートし、3年ごとに開催され、今年で4回目となるこの芸術祭は、夏休み最後の週末ということもあってか、行く先々でにぎわいを見せていました。
いろんなメディアで紹介されているせいか、なんとなく解っているつもりでしたが、初めて行って見ると、参加者・作品の数も半端ではなく(大げさではなく、地域のいたるところに作品が点在していると言えるほど)、この越後妻有地区で年月をかけて築き上げられてきたものが、力強く存在していました。と同時に、こめられている問題の多さもじわじわと伝わってきました。
日本有数の豪雪地帯でもあり、人口の減少は、とどまるところを知らないこの地域に、ともに考える新たな外部の人々が加わることにより、様々な影響を及ぼしてきています。
良いことばかりではないかもしれませんが、ひとりでも多くの人間が、自分の身の回りより少し遠いところのことも、同じように思いを馳せて、大切に思う心をもてば、長い年月をかけてこつこつと培ってきたものを、一瞬にして失うようなことだけは、なくせるのではないでしょうか。
《祭り》に一生懸命力を注ぎつつ、地元の人々が、ふともらす不安のことばを消し去るために、我々にできることは何か・・・。
人によっていろいろな関わり方ができるのでしょうが、できることからひとつずつでもと、まずは手始めに<棚田オーナー>の制度について、調べているところです。旅の途中、美しい棚田のところどころに、草ぼうぼうのところを見つけたこともあり・・・。
今度訪れる時には、見渡す限り・・・となるには、私ひとりの力では無理ですが、何もしないでいる事だけは、決してしてはいけないとの思いを強くしています。
<家の記憶>塩田千春。 空家プロジェクトと言って、使われなくなった民家を、様々に利用するもの。今は住む人のいないこの家中のあらゆる空間を、蜘蛛の巣のように張り巡らされた毛糸が埋めつくす。家の持つ思いや記憶を編み込むかのように。
<黎の家>東京都市大学手塚貴晴研究室+彦坂尚嘉。これも空家プロジェクトのひとつで、集落の営みの歴史を吸い込んだ調理器具が部屋一杯にぶらさがる。墨で黒く塗られた空間は、レストランとしてオープン。
<越後松之山「森の学校」キョロロ>手塚貴晴+手塚由比。松之山地域を森から学ぶ自然科学館。蛇をモチーフとした長さ160メートルの鋼鉄製の建物は、潜水艦のような構造で、冬には高さ34メートルの塔だけが雪の中から顔を出す。その塔の先端から、遥かかなたまで森が見渡せる。
<松之山プロジェクト>川俣正。2000年の大地の芸術祭以来継続的に松之山に関わり続けるアーティスト。恒常的に活動する拠点づくりのための「住み込むプロジェクト」を実施。遊歩道が会場の道案内となっている。
<越後松之山体験交流施設 三省ハウス>。旧三省小学校の木造 2 階建ての校舎を活かし、2006年に宿泊施設として生まれ変わった三省ハウス。教室を改装し、2段ベッドが置かれた客室に泊まった。
広い会場のそこかしこに点在する作品の群れ。風景の一部になりきっている。
会場から少し足を伸ばして、柏崎市高柳の荻ノ島かやぶき集落へ。田んぼを囲んで、かなりの数のかやぶき屋根が、ひっそりとたたずむ。 (写真・文;永田博子)