アトリエ・リング 一級建築士事務所

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SMFアートのわっ!

11月21・22・23日の3日間、「SMFアートのわっ!」が、北浦和の埼玉県立近代美術館と北浦和公園を中心に行われました。去年、「アート竜巻フェスタ」というかたちで行われたイベントの、いわば続編です。硬く言うと、平成21年度文化庁美術館・博物館活動基盤整備支援事業として、埼玉県立近代美術館に事務局を置く「SMFアートのわっ!」実行委員会が主催したものです。僕はその運営委員として、春からこの企画に関わってきました。


21日(土)

11時ごろ北浦和公園に着くと、早朝からやっていた準備も終わり、天気にも恵まれて、たくさんの人々で賑わっていました。

上は、「サンドイッチアートマン おせっかい出前美術館」。越谷を拠点に活動する若い作家たちが、自分の作品をパネル化したものを展示しながら電車でここまで来るという傑作!

これは、行田のアーティスト野本翔平氏のパフォーマンス。木漏れ日が、彼が口にくわえたパネルに影を落とし、彼が感じている映像が鏡像として視覚化されているようで、興味深いものでした。

午後は、ラウンド・テーブルに参加しました。チラシの文章を引用します。「埼玉県内には、国際的な活動をしているアーティストを含め、困難を乗り越えつつ活動している・・と思います。」

二日間にわたるプログラムで、この日は午後から、開会式・オリエンテーション・各グループの活動報告が行われました。うらわ建築塾の活動についてパワーポイントで発表。上の写真は、越谷まちアートプロジェクト代表の鈴木眞里子氏のプレゼンテーションです。

会場の壁面には、各団体の活動のパネル展示などが展開されました。我々に近いところでは、PALS、宮代町の竹のアート、ヒアシンスハウスの会の展示がありました。

同時に公園では、ヒアシンスハウスの会・うらわ建築塾も関連したワークショップ「組む・つながる −自在の<き>を楽しむ」が行われました。Vフレームと木製の千鳥格子で造られたブースは、ミニFMの放送局にもなり、このまわりで、子どもたちが格子組みに挑戦しました。

また、彫刻広場の芝生のところには、「風を聴く」と題された松本秋則氏によるインスタレーションが展開されていました。高さ5メートルほどの竹20本を立てて、先端部分にサウンドオブジェを取り付けたものです。軽やかに見えながら、突き詰められた造形に、宮代町竹のアートの手島氏も感心していました。
 夜には、美術館内のレストランでパーティーがあり、多くの団体の方と知り合うことができました。


22日(日)

雨模様で寒かった日曜日。前日の公園の賑わいは消えて、小野養豚さんのブタのオブジェが、のびのびと広場に展開されていました。

音楽噴水のある池に展開された根岸和弘氏による風車も、風がなくて回っておらず、寂しげでした。

この日のメインは、午後のMOMAS空間音響ライブ。現代音楽のコンサートです。スケッチ(部分)は、演奏に先立って行われた、作曲家たちによるトークセッションの模様です。左から、司会で音楽評論家の沼野雄司氏。カール・ストーン氏。通訳の小林範子氏。フィリップ・シャトラン氏。土屋雄氏。由雄正恒氏。柴山拓郎氏です。音楽は、コンピュータなどの新しい技術を使った現代音楽ですが、日本の十三絃箏を表に出したもの(土屋作品)や、人の声(ソプラノ)を拾いながら生成されていくもの(由雄作品)、サックスとトランペットに映像表現が一体となって進行するものなど(古川聖作品)もあり、なかなか興味深いものでした。


23日(月・祝)

フィナーレの日。風車の設置作業が朝から行われていました。僕は、午前と午後にわたって、ラウンドテーブルに参加です。午前は「アートは地域に何ができるか」というテーマで意見交換が行われました。このテーマに関して座長役の僕があらかじめ示しておいた文章を引用します。

「近代芸術の歩みのなかには、抽象化というベクトルがありました。表現の純度を高めようと、具体的なものを遠ざけてきたのです。しかし今、例えば新潟の芸術祭にみられるように、具体的な場所の環境と積極的に関わろうとするアートに注目が集まっています。情報がグローバル化された時代に、あえて場所・地域と向きあうことの意味を、実際に活動されている方々と考えてみたいと思います。」

16人による討議だったのですが、参加者に建築畑の方が多かったためもあって、まちづくりに建築家の果たす役割というような話題にややシフトしてしまった気がしました。それでも、その地域に住むひとがその街に関わる場合と、他の町に関わる場合という、あたりまえだけれども整理しておかなければならない問題があると感じました。また、地域や場所は全く関係ないという表現者からの意見も、興味深く聞くことができました。

昼休みに、「回遊美術館」が行われている北浦和西口銀座商店街を見てまわりました。7人のアーティスト、あるいはユニットが、様々な表現を街に展開していました。置いてあるキューブは、工房集の障害者の方々の作品。ピカソのクイズをちりばめたのは古川勝紀氏。

「音の伝播−音の箱、光の箱」と題したインスタレーションを繰り広げたのは、三友周太氏+河村陽介氏。道行く人々が、覗いて聞いて楽しんでいました。

食事を済ませて戻ってくると、設置の終った風車の間で、創作ダンスのコラボレーションが行われていました。人によっては前が見えないくらいの観客数で、イベントの成功を実感できる時間でした。

色とりどり、3000本を越える風車が、渦を巻くように設置され、風が渡ると波のように回って光りを拡散し、子どもたちも、はしゃぎまわっていました。

美術館のなかでは、創作室とその周辺で、小澤基弘埼大教授がプロデュースした「どろせん始動!!」が行われ、子どもから大人まで、千枚をめざしてドローイングに励んでいました。

午後のラウンド・テーブルは24人に増え、鈴木眞里子氏を座長に「アートのつなぐ力」、中村誠学芸員を座長に「ミュージアムというプラットフォーム」というテーマで語り合いました。美術館サポーターの沢田氏の参加もあり、現役大学生からの幅広い年齢層が一堂に会してアートを考えるという貴重な時間が実現しました。

4時に終了して公園に出ると、浅見俊哉氏の「コピーアートペーパーで風の回廊をつくろう」がほぼ完成していて、みんなでねっころがっては、空に浮かんでいるような浮遊感を楽しんでいました。
 フィナーレの後は、風車の撤収や、会場の後始末。それも7時には終了して風車の生みの親、根岸和弘氏を囲んで、打ち上げとなりました。

メインのプログラムはこの3日で終了ですが、川口・浦和で、関連事業が行われます。詳しくは、SMFのサイトに行って、「アート楽座」・「アートの縁結び」をご覧下さい。
 (写真・絵・文;青山恭之)