私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。
monthly column |
非電化生活を考える―埼玉・住まいの会 那須研修旅行 |
梅雨のさなかの6月30日、埼玉・住まいの会の研修旅行で、栃木県の那須方面へ出かけました。研修のメインの目的は、《非電化工房》訪問。
オール電化住宅も珍しくない今日において、《非電化》を考え実践している藤村さん一家が住むそこは、那須の山あいで、人口池を取り囲むように建つ数棟の建物から成っています。上の写真はその中のひとつ、非電化籾殻ハウス。
上左は、敷地の様子。中央奥が母屋で、始めに案内された居住も兼ねている建物。広い吹き抜けのある空間を持ち、あわせて10uもある天窓(上左)は、自然の光や風さらには熱をうまく取り込むのに役立っているとのこと。
写真上左は、左からモンゴルのゲル・籾殻の山・籾殻ハウス。ゲルはモンゴル遊牧民の移動式住居。頂点部には換気や採光に用いられるよう開閉可能な天窓になっています。上中は、非電化籾殻ハウス内部。断熱材に籾殻を使ったセルフビルドの家。材料費20万円で、4人がかりで4週間とのこと。床面積10uとコンパクトな大きさだが、さまざまな工夫が詰め込まれて、電気の力を借りずとも、快適に過ごせるようになっているそうです。上右ムーミンハウスは、フィンランド製のガーデンハウスキット(130万円)で、2,3人で3日かけて組み立てたもの。太陽電池による直流照明を利用している。冬の寒さには耐えるが、夏はちょっと暑いとのこと。
上左から、太陽熱温水器利用五右衛門風呂・非電化バイオトイレ(製作中)・アトリエ・アトリエ内展示品;アトリエ内には、試作実験を行う設備があると同時に、非電化製品や前電化製品コレクションが展示されている。非電化工房では、さまざまなワークショップやイベントを行っており、昨年からは、住み込みの弟子を受け入れるシステムも始まっているとのことで、まもなく1期生が巣立っていくそうです。
主な建物を巡ってまた母屋にもどると、カラカラ・カラカラと音を立てて煎られていた豆たちが、コーヒーと、はと麦茶になって登場。非電化(コーヒー)焙煎器による煎りたての豆で、挽きたて・淹れたてのおいしいお茶を味わわせていただきました。
時間に限りがあり、駆け足での見学となりましたが、電気に頼りすぎている日常の生活を振り返る良い機会となりました。できることからひとつずつ。
上は、昼食を取った道の駅・那須高原友愛の森(設計;長島孝一)。そこかしこに使われている地元の芦野石が雨に濡れ、しっとりと良い雰囲気でした。
帰り道、黒磯駅近辺の木造アパートを改修して使われているカフェへ。上左が外観。シャッター街と化しつつある町の中で転身をとげ、見事に復活。何がもてはやされるのか、賛否両論でしょうが、町に元気を与えていることは確かで、久しぶりの黒磯に、また近々ゆっくり来てみたくなりました。
最後に訪れた広重美術館(設計;隈研吾)。ここも駆け足でロビーまでの見学でしたが、芦屋石・杉角材・和紙・竹のシンプルな美しさは、やはり雨の中、静かに溶け合っていました。ディテールの良し悪しはさておいて、素材の持つ力は偉大です。下右はトイレ手洗所で、手洗器をはじめとして、芦屋石に囲まれたような空間でした。
(写真・文;永田博子)