私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。
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SMF@入間市博物館 |
SMF(Saitama Muse Forum)の事業で、秋の三日間、入間に通いました。事業の名前は、「方丈庵・<き>がわりの假具で自在の間を楽しむ」で、全体を目論んだのは、うらわ建築塾でごいっしょしている建築家、三浦清史氏です。假具(かぐ)というのは、假、すなわち休日にだけ仮説的に使う家具のようなものという、内田祥哉氏による造語だそうです。西洋における建築はハードで不動な力の象徴ですが、日本建築の伝統の中には、より仮設の状態に近い、別の場所に移して使うという一面がありました。その日本建築における仮設性を現代建築の問題として考えてみようというのが、三浦さんの意図でした。入間市博物館は、お茶の博物館としても知られ、そこの「秋のお茶まつり」にあわせて、博物館のロビーに、新旧の囲いを合体させた茶室をつくり、そこでダンスなどのパフォーマンスを行うというプログラムです。
10月23・24日の二日かけての組み立て作業でした。新旧の囲いの、「旧」のほうは、京都の建築家安井清氏による方丈庵。彦根の西澤工務店の大工さんたちが組み立てました。「新」のほうは、建築家内田祥哉氏考案のアルミVフレームと木製千鳥格子を組み合わせた濡れ縁のような空間。こちらは、我々の制作で、ものつくり大学の学生にも加わってもらいました。方丈庵の柱にあらかじめ埋め込まれたVフレームに、金具をナットで止めながら組んでいきました。
25日の本番は、様々なプログラムの連続でした。準備のため午前中から参加しましたが、昨日までの悪天候がうそのように晴れ上がり、博物館のある丘からは、素晴らしいパノラマがひろがっていました。正面に狭山丘陵。狭山湖をのせた台地です。右手には、丹沢の山々が望まれます。
午後一番から、博物館に隣接する東野高校のキャンパス見学会で、講師は、文化財の保護に取り組んでいる津村泰載氏。ポストモダンの時代に、クリストファー・アレグザンダーによって設計された、学校建築です。僕は初めてだったので、興味深く見ることができました。パターン・ランゲージを手法としたことで話題を集めましたが、学校という一まとまりの建物ではなく、様々な個性をもった建物郡として構想されているところは、集落を見るようです。
博物館にもどり、ダンスユニット「転々」による舞踏「囲いで踊る」。幾つかの素敵な舞踏が方丈庵を中心に展開されましたが、そのなかのひとつで、テーブルと椅子をこの茶室に持ち込んだものがあり、とたんに普通の部屋のスケールになってしまうあたりも、おもしろかった。(写真は、午前中のリハーサルの時のものです)
続いて、講座室において、方丈庵の安井清氏とVフレームの内田祥哉氏の対談。の、はずが、安井氏が体調を崩して参加できなくなりました。でもそれが前もってわかっていたので、あらかじめ大阪で対談してもらったビデオが流されました。その後、三浦さんに進行していただいて内田先生と客席で議論をするというスタイルをとりました。
最後に、方丈庵で、入間市茶道連盟の方々による煎茶Hako手前が行われ、お茶の里ならではの催しなりました。方丈庵は、10月いっぱいまで、博物館におかれる予定と聞きました。(文・写真;青山恭之)