私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。
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春日部、香取神社再建 |
2010年10月21日、春日部市の香取神社が放火で全焼しました。埼玉県東部の神社を狙った、数日の間に5件におよぶ連続放火事件でした。11月に入って犯人は逮捕されたものの、地域の人々にとっては、代々受け継いできた拠り所を失うという大変な出来事でした。
その後、地域の守り神をなんとか建て直そうと氏子の方々が力を合わせ、さいたま市見沼区のM工務店に工事を依頼。M工務店は、我々の自邸+事務所を施工していただいたところで、そんなご縁から、この神社再建のプロジェクトの建築確認業務を、アトリエ・リングで行うことになりました。
2010年12月20日
お話をいただいて初めて、春日部市大沼の敷地を訪れました。基礎のみを残し、建物全てが失われてしまった跡地に、仮の遥拝所が設けられていました。敷地内に建つ石碑には、沼地同然だったこの地を、耕地として開いてきた先人の営みが記されていて、この神社が人々の支えで在り続けてきたことを知ることができました。
新築になる神社の建築は、いわゆる日本建築の手法で、M工務店が設計。我々はそれをCAD化し、役所との打ち合わせを重ねて、確認図書としてまとめていきました。
2011年2月7日
地鎮祭。同28日には確認が下りて建築工事がスタートしました。
4月7日
M工務店の作業場にて、仮組み中の小屋です。曲がった松丸太の上に、微妙な曲面を描く屋根がかかります。現場での建て方の前に屋根のある作業所の中で仮組みをして、細かな取り合いなどを調整しておくというのは、建築のなかでも工芸に近い意識を感じました。やはり日本建築の技術のなかでも社寺というのは、住まいというより、厨子に近いのかなとも思いました。
4月23日
上棟式は、あいにくの雨でした。それでも、消失から半年で、全体像が見えるところまで来たということです。3月に震災があって、建築業界そのものも大きく揺れましたが、一歩一歩工事は進んできました。
6月7日
屋根の木工事も大詰めを迎えていました。奥行きの深い建物なので、破風の部分が大きく人目につきやすいために、慎重な作業をが続きます。
8月28日
竣工報告祭、場所を整えましたので降りてきて下さいという祭事です。写真は、新たに収められた御宮。この日は、氏子の方々や建築関係者が大勢建物内部に集い、椅子を並べていては入り切らないので高齢者以外は起立の姿勢で、祭事がおごそかに執り行われました。あれから1年を待たずに復興が実現したのは、関係諸氏の並々ならぬ尽力の賜物と思われます。我々もその仕事に一部ながら関わることができて、光栄でした。
冒頭の写真も、この日のものです。(写真・文;青山恭之)