アトリエ・リング 一級建築士事務所

私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。

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展覧会「住まいからまちへ」

青山恭之のコーナー クリックで大きな画像へ

この6月22〜27日に、神楽坂のアユミギャラリーで、神楽坂建築塾に関わる7人の建築家による展覧会「住まいからまちへ」が開催されました。上の写真は、僕のコーナーです。 対照的な二つの住宅のパネルと模型で、「住まい」と「まち」の関係を示しました。メインのテクストを、以下掲載しておきましょう。下の写真は、今回のお知らせはがきの表と裏です。

お知らせハガキ クリックで大きな画像

住まいからまちへ、まちから住まいへ

− 住まいの空間を「定位」させるために −

今回の、『住まいからまちへ』というテーマを僕の関心に引きつけると、『住まいの空間を「定位」させる』と言い換えることができるでしょう。「定位」という言葉は、ある空間が、他の空間との間に、関係をもって位置づくという意味で使っています。


人間は、個の存在の周囲に、衣服・部屋・家・庭・街・自然と、幾重にも重なった空間に包含されて生きています。もちろん、個の存在の内側にも、意識・無意識といった包含関係を見出すこともできます。 それらはタマネギのような同心円状のモデルで考えるとわかりやすいでしょう。旅などで世界を横断したとしても、いつも戻ってくることができる安定した場所をもつこと。波風が立たず、水が澄んでいる状態が、「住む」こと語源のようです。

そんな世界の空間性のなかで、住宅は、ある人間が特定の場所に住みつく空間的なありようを決めてしまうので、「まち」のなかに「住まい」をどう「定位」させるかということが関心の中心になります。

「まち」に対して、「住まい」を閉じ、隔絶された空間として確保するという生き方もあるでしょう。しかし僕は、「まち」という環境との相互関係のなかに、より豊かな「住まい」が形成されると期待したいのです。 そこで、相互を繋ぐための建築的な手法が必要となります。定位のために、空間相互を構造づけることです。


「定位」という観点から、今回は二つの住宅でやや対照的な空間相互の構造づけの例を見ていただきたいと思います。


浦和の家、断面パース クリックで大きな画像

『浦和の家』では、「通り庭」という手法で、「まち」に「住まい」を定位させました。 南北に長い敷地で、北側が前面道路。東西に高い建物が建っているので、建物を東西に分け、中央に南北に細長い「通り庭」を作ってそこにすべての部屋が向き合うという構成です。「住まい」のなかに、「まち」を引きこんでくるかたち。 三世帯住宅の共有スペースとして、セミ・パブリックともいえるような都市性を与えたいと考えたのです。

「まち」からの視線は奥まで通るのですが、距離によってやわらかにプライバシーが保たれています。さらに植栽が「通り庭」の空間を制御していて、門の結界の外に植えられたヤマボウシは、「住まい」から「まち」の側へ働きかけています。


神明台の家、断面パース クリックで大きな画像

『神明台の家』では、「まち」から「住まい」へ、さらに「へや」までを結びつけるスクリーンあるいはフィルターのような層を、幾重にも重ねて、閉じたり開いたりと自在に変化させるという手法を取り入れました。

ここは南が前面道路で、生活の向きは南を向くことになります。この道、車の交通量は少ないのですが、近所の中学校に通う生徒や犬を散歩させる人など、人通りが多いために、視線を調整することが求められたのです。 具体的には、「まち」側から挙げると、透けている塀・植栽・庭・玄関前の庇のかかったコート・パーゴラのあるウッドデッキ・雨戸・サッシ・雪見障子・吹き抜け・ロールスクリーン・個室の扉の半透明な建具など。 これらが、一日のなかでの時間や天候、季節、住まう人の気分によって多様なしつらえを生み出します。