私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。
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旧日本赤十字社埼玉県支部社屋 |
10月7日の日曜日、建築学会関係の先生方と車で秩父へ小旅行をした折、嵐山町を通るというので、16年前に訪れたことのある、旧日本赤十字社埼玉県支部社屋を再訪しました。明治38年、埼玉県庁の北に建てられた建物です。子どものころの、おぼろげな記憶があります。昭和57年に浦和から嵐山町に移され、鎌形小学校として生まれ変わりました。今回訪れたところ、小学校は廃校となり、鎌形幼稚園に役目を変えていました。
上のスケッチと写真は、以前(1996年)に訪れた時のものです。
下の写真は今回のもので、園庭の芝生と遊具、背景のグリーンに変化が見られます。下見板のブルーの色が、少し変わったでしょうか。
木造平屋、基礎は煉瓦造。正面は左右にウィングを伸ばし、中央と左右のウィングに妻飾りが立ち上がって、赤十字が掲げられています。軒裏のディーテイルなど、細やかです。
背面は、開放された柱廊がコロニアル風に庭を囲みます。その、パノラマ写真です。「埼玉県明治建造物緊急調査報告書」に掲載された平面図では、柱廊の先に六角形平面のトイレが描かれています。その建物は、現在、おとなり小川町の小川正十字病院で健在だそうです。
窓から中をのぞいてみると、窓枠や天井など、建設当時の意匠を伝えています。洒落た照明器具。その基部には、左官の技を見ることができます。
場所を変え、機能も転々としながら、愛され続けている建築だというのがよくわかります。隅々まで手入れが行き届いて、かくしゃくとした老看護婦長といったところでした。(埼玉県指定有形文化財 埼玉県比企郡嵐山町大字鎌形2230-1)(スケッチ・写真・文;青山恭之)