私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。
monthly column |
きたもとアトリエハウス |
2月23・24の両日、北本市荒井にある「きたもとアトリエハウス」のオープニングイベントがあり、僕は24日の午後、参加してきました。 2010年の10月10日、SMFのイベントの一環で北本をめぐるアート散歩の時に来て以来です。 上のスケッチ(クリックで、拡大画像が開きます)で左側の納屋は、当時から「ナヤノギャラリー」として使われ始めていましたが、今回右側の母屋の建物が、アーティスト・イン・レジデンスなどに活用する「アトリエハウス」として改装されました。
場所は、北本市の西端、荒川沿いの田園地帯で、北本自然観察公園に接した、豊かな自然環境にあります。 北本からバスに乗って「自然観察公園前」で下車。公園に入り、自然学習センターを横目でみて雑木林をぬけたところにある、普通の農家です。 そこを、北本市がキタミン・ラボ舎というNPOに運営を委託し、アートの拠点として生まれ変わらせたのです。自然観察公園を訪れた人がついでに覗いていくそうで、お休みどころとしても運用が検討されているとか。
この写真は、「ナヤノギャラリー」二階の様子です。 建物は、築100年を経ているそうです 。改修設計は小泉雅生さん。 この日は、西尾美也さんによるパッチワークのアートプロジェクト「People’s House」の展示・販売が行われていました。
ここが、「オモヤハウス」一階の、いちばん大きな空間です。 住宅として使われていた時にあった間仕切り壁や天井を取り払って、明るい空間が生まれました。 南に張り出した、サンルームのトップライトが効果的です。床も、ラフな感じのフローリングで統一されました。
リフォームにあたって、この住宅が鉄骨造だったことが空間の性格を大きく決定づけている気がします。 間仕切りを取り払っても、鉄骨の骨組みには手をつけていないので、構造な問題には触れずに済んでいるかっこうです。 普通の木造だったら、もっと柱が残って、このような大空間は実現しなかったろうし、「民家風」というイメージがついてまわっていたかもしれません。 リフォームを担当した「L PACK」という二人組のアーティストが建築出身だったというのも、うなずけるところです。
二階は、レジデンスのための個室が3部屋。 ルーフテラスに出てみると、すばらしい里山の風景が広がっていました。 門の先に広がる畑も、食に関わるアートのたてのスペースです。
さて、今日のメイン、トークイベント「きたもとアトリエハウスを考える − アーティスト・イン・レジデンスの視点から」です。 キタミン・ラボ舎代表の吉田武司から、ごあいさつと活動全体の紹介があり、キュレーターで翻訳家の辻憲行さん(上の写真)にバトンタッチ。 辻さんは、秋吉台国際芸術化村という、磯崎新設計の、今になってみるとバブリーな施設で、アーティスト・イン・レジデンスのプロジェクトに関わってこられました。 豊かな海外経験も踏まえて、現代美術の歴史をたどりながら、アーティスト・イン・レジデンスの今日的な意味に迫ろうという展開。 興味深かったのは、タイのチェンマイの田園地帯で、自給自足に近い生活をすることそのものをアートプロジェクトとして提示している、タイ人アーティスト、リクリット・ティラバーニャの試みです。 アートが限りなく日常に近づくとでもいうのでしょうか・・・。
最後に、参加者の質問から始まった議論のなかで、「アートは、規制のコードを壊すものだが、壊したからそれがアートだとは言えない。」という辻さんの考え方には、共感できました。
そして、オープニング・パーティーです。 上の写真で左端が、EAT & ART TAROさんという食をテーマに制作しているアーティストです。 彼が作った北本産の野菜のピクルスがテーブルに並びました。 藝大の熊倉純子先生も加わり、あちこちで交流の輪ができていました。
ここを拠点に、北本らしいアートをどんどん発信していってほしいと感じました。(スケッチ・写真・文;青山恭之)