加須の家 9

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南側、正面の夕景です。越屋根部分からも光が漏れてきます。
(*下記注参照)
*注;「透ける棟飾り」と「越屋根」の構成について
 
 
日本建築は、屋根が意匠的に重要であったことは言うまでもないのですが、近代の建築が、モダニズムを受け入れて以来、屋根は、弱まるか消えてフラットになるかの一途をたどってきました。しかし、郊外で伝統的な民家が景観を形成しているようなところでは、屋根のかたちが、人の住まいがあるということの象徴であり続けているのも事実です。特に屋根の頂部である「棟(むね)」は、最も人目につきやすいことと、天に近いことから、意匠が凝らされてきました。
 
そのひとつが「透ける棟飾り」で、右の写真のような例が、加須のあたりでもよく見かけます。「輪違いのし」などとよばれています。
 
「越屋根」は、もともといろりの煙を棟部分でぬくために、棟を越すように掛けられた小屋根のことです。このあたりから群馬にかけては、ダブルでついているものや、右下の写真の渋沢栄一の生家などのように、広い幅にわたって作られているものもあります。
 
今回の建物には、以上のような地域の意匠を、現代の解釈で取り入れました。そのことで、すでにある景観の文脈のなかに新しい物を造る時、その文脈を大切にしながら、新しい物が異物として排除されないように配慮しながら、新たな景観が創造されることを目指しました。