ラジオドラマ・宇宙戦艦ヤマト(第4部)

キャラクター説明 オリジナルキャスト
古代 進 18歳 ヤマト戦闘隊長。島大介とは同期、熱血漢。 富山 敬
沖田十三 52歳 ヤマト艦長。冷静沈着 納谷悟朗
島 大介 18歳 ヤマト航海長。古代よりクールな面がある。 仲村秀生
太田健二郎 18歳 ヤマト航海班。レーダー担当。 安原義人
相原義一 18歳 ヤマト通信班長。 木場 剛
真田志郎 28歳 ヤマト工場長。古代守とは同期である 青野 武
佐渡酒造 47歳 ヤマト艦医。大酒飲みのオヤジ。 永井一郎
徳川彦佐衛門 65歳 ヤマトの機関長。ヤマトクルー最高齢
アナライザー 分析ロボットアナライザー 緒方賢一
藪 助治 ヤマト機関部員。イスカンダルへの残留希望で謀反 野島昭生
加藤三郎 18歳 ヤマト戦闘機隊長。(出番は1言です) 神谷 明
森 ユキ 18歳 ヤマト生活班長。 麻上洋子
古代 守 28歳 冥王星海戦で行方不明だったが・・・。 広川太一郎
デスラー総統 ガミラス総統。冷血な独裁者 伊武雅之
スターシャ イスカンダル星の女王 平井道子
ナレーション 広川太一郎

基本配役 8:2 5:2での配役
4:3での配役
5:1(2)での、通し配役一覧
♂1 古代  進/副長/声A/将軍C
♂2 沖田十三/真田志郎/スピーカーの声/乗組員A/ヒス/ガミラス兵士B/
♂3 島  大介/佐渡酒造/アナウンス/声B/ドメル/将軍A/ガミラス兵士/藪
♂4 太田健二郎/アナライザー/徳川/シュルツ/声C/デスラー/ガミラス兵士A/加藤
♂5 ナレーション/相原義一/古代守/乗組員B/声D/ゲール/将軍B
♀1 森 ユキ
♀2 スターシャ/相原の母
台本の見方
この台本は、効果音・BGMを流して出来るように書かれています。下記に説明を良く読んで下さい。
緑ラインは、効果音・BGMに台詞がかぶります。おおよそ縦に引かれた緑ラインまで音が流れます。
基本BGMが流れてから、台詞を読んで下さい。
赤ラインは、ブリッジBGMなど台詞にかぶりません。音が消えてから台詞を出して下さい。
黒ラインは、BGM終了ラインです。これ以前に台詞が終わっても、次の台詞には行かないでください。
「間」の指示の時は多少の間を取ってもらいます。
ほかにも指示があります。ご注意下さい



1 SE-01 BGM
ナレーション 「ラジオドラマ・宇宙戦艦ヤマト 第4部」
古代 「西暦2200年6月5日。今日の日記は第一艦橋の自分の席で書いている。
もうすぐ夜明けだ。窓の彼方には真っ赤な朝焼けが少しずつ少しずつ広がろうとしている。
歴史的な偉大な瞬間は確実にヤマトの前にある。オレたちは手を伸ばしてそいつを掴みさえすればいい。
興奮して夕べから誰も眠っていない。用が無くても第一艦橋をうろつき、いつもの3倍もおしゃべりになってあの星の噂をする。
駄目だ、やることがいっぱいある、日記なんかとても書いてはいられない」
ナレーション 「14万8千光年の宇宙の旅を乗り切ったヤマトは、白銀のように輝くイスカンダルへグングンと近づきつつあった」
「高度500キロ、着陸点を探すため水平飛行に移る。
ハァ〜、よし太田、観察報告を続けろ」
太田 「はい。イスカンダル星、直径およそ1万7千キロ。地球に似た地質の大陸と海が認められます。
大陸と海洋の比は、陸地が3に対し、海が7、水の多い星です。
北極と南極に、雪と思われる物無し、氷河らしいもの無し。星全体のの気候はおそらく温暖・・・」
相原 (叫ぶ)
「入りました! スターシャからの誘導電波が回復しました!」 
古代 「相原! メイン・スピーカーに切り替えろ!」
相原 「はっ!」
スターシャの声 「こちらイスカンダルのスターシャ。ヤマトの皆さんを歓迎します。
皆さんにはイスカンダル星のマザータウンの海へ降りて頂きます。
着陸の誘導を、私の指示に合わせて下さい。
現在、地上の気圧は1113ミリバール、温度・・・・・・・」
10 ナレーション 「こうして遂にヤマトはイスカンダルへ着いた。ギリシャのエーゲ海を思わせる美しいマザータウンの海。
ヤマトはそこに静かに浮かんでいた。そよ風は優しい音楽を奏で、降り注ぐ陽は甘いぶどうの香りがした。
彼方のマザータウンはまるで宝石細工の都市であった。
その中心、クリスタルパレスにスターシャはいた」

2 SE-02 波の音
スターシャ 「サーシャ!」
ユキ 「あっ・・・・・、いいえ。私は森ユキと言います」
スターシャ 「あ・・・・、ごめんなさい。遠くから見た感じでは、地球へ使いをやった妹のサーシャかと思って」
古代 「サーシャって・・、すると、あの、火星で亡くなった方が・・・」
スターシャ 「えっ? サーシャは死んだのですか?」
古代 「おそらくガミラスの攻撃によって・・・・。
ボクが抱き上げた時、既に息は絶えていました」
スターシャ 「アナタは?」
古代 「宇宙戦艦ヤマト、艦長代理・古代進です」
スターシャ 「ようこそ・・・・・。
すると、妹は命がけで私の使いを果たしてくれたんですね・・・」
20 古代 「地球の恩人です」
スターシャ 「しかし、地球を救うのは結局はあなた方です。はるばるイスカンダルまでやって来させ、あなた方の勇気と力を試したりしてスミマセンでした。
でも、明日の幸せというものは、自分の力で獲得するものですからね」
3 SE-03 BGM
ナレーション 「スターシャは放射能除去装置をヤマトにプレゼントした。
それは総量12トンにもなる巨大な装置で、部分品の形でヤマトに積み込まれた。
本来ならイスカンダルで組み立てて、試運転を完了していくべきだが、航海のスケジュールの遅れはそれまでの滞在を許さなかった。
放射能除去装置は、帰路に艦内で真田技術班長が組み立てる事にし、ヤマトは荷物の積み込みを急いだ。積み込み完了次第出発の予定であった」
真田 「よーし、次の荷物からは3番ハッチだ、気を付けろ!」

4 SE-04 風の音
ナレーション 「その頃、マザータウンを彼方に見るイスカンダルの墓地に、ひっそりと葬儀を行う3人の人影があった。
膝まづいて祈るスターシャと、後ろに佇む古代とユキであった。
スターシャの前には、真新しい墓標があった。風が何度もスターシャのケープを吹き上げたが、スターシャは目を閉じて身じろぎもしなかった。
風は幾百万とある墓標の腹を虚しく吹き渡った。

長い沈黙が過ぎて、スターシャはようやく顔を上げた」
スターシャ 「古代、ユキ。お葬式に参列してくれてありがとう。
これで妹のサーシャの霊もイスカンダルの大地に還る事が出来ました」
ユキ 「あの・・、スターシャさん」
スターシャ 「なぁに?」
ユキ 「私たち、イスカンダルへ来て方々見せて頂きましたけど、あなたの他に人に出会った事がありません。
みなさん、何処にいらしゃるんですか?」
スターシャ 「ここですわ」
30 ユキ 「え?」
古代 「この何百万とある墓標が・・・」
スターシャ 「そうです。イスカンダルは科学が到達しえた一つの極限とも言うべき理想郷でしたが、残念ながら星としての寿命もまた終わりに近づき、その影響で人々は絶滅していきました。
王家の娘である私とサーシャが最後のイスカンダル人でしたが、妹を失った今、イスカンダル人は私しかいません。
放射能除去装置を組み立てた形で地球へ届けて差し上げられなかったのも、その為です」
スターシャ 「タウンへ帰りましょう。引き合わせたい人があります」
古代 「ええっ? この星に誰かいるんですか?」
スターシャ 「地球の方がひとり・・・」
古代 「地球の人?!」
ナレーション 「古代とユキは驚いて顔を見合わせた。スターシャはもう先に立ってロボット・カーへ向かっていた。
慌てて後を追った古代とユキは、スターシャにクリスタル・パレスの奥深い居室に案内された」
5 SE-05 BGM
ナレーション 「もはや、日は暮れていた。夕闇の中で瞳を凝らした古代はそこが病室である事に気づいた。
ブルーのシャドーライトの中で、ベットに1人の男が臥していた。
男は人の気配に目を開け、近づいて来た古代進を見つめた」
古代(進) 「兄さん?  まさか・・・!」
40 「す、進じゃないか!」
古代(進) 「生きていたんだね! 兄さん!」
「進っ! お前!」
ナレーション 「ふたりはひしと抱き合った。兄は弟の、弟は兄の身体に流れる熱い血潮の音を聞いた。宇宙の果てに今、生きて巡りあった兄と弟はただ涙、涙であった。
もらい泣きをしていたユキは、スターシャがそっと部屋を出ていくのを見た。スターシャは灯りもつけず、自分の部屋でただひとり泣いていた。

スターシャ 「(泣いている)」
ユキ 「スターシャさん・・・」
スターシャ 「あ、ユキ」
ユキ 「黙って入って来てごめんなさい」
スターシャ 「ううん、いいのよ。
あの方は、古代守さんはね、ガミラスが研究の為かなんかで、捕虜にしたらしいんです。所がその輸送船ロケットも難破したらしくて・・・。
イスカンダルの近くを漂流してらっしゃるのをお助けしたんだけど・・・・、ええ。それはひどい怪我と宇宙病でした。
でも、もう大丈夫です。地球へ帰れます。私、ベストを尽くして御看病しましたから」
ユキ 「スターシャさん・・・」
50 スターシャ 「え?」
ユキ 「アナタ、古代守さんを愛していらっしゃいますね」
スターシャ 「・・・・」
ナレーション 「ふたりの女は見つめ合った。スターシャはユキに妹の面影を感じ、ユキはスターシャに姉を感じた」
ユキ 「アナタも地球へいらっしゃいませんか? スターシャさん」
スターシャ 「ありがとう、ユキ。
でもそれは出来ません。滅び行く星でも私はこの星から生まれた女です。
よその星で生きるよりも、この星に抱かれて死にたい・・・」
6 SE-06 BGM
古代(日記) 「西暦2200年6月8日。兄を迎えたヤマトは大騒ぎになった。
兄と同期生の真田さんが音頭をとり、酒好きの佐渡先生があおりだす。
沖田艦長の部屋で大パーティになった」
佐渡 「かんぱぁぁぁい! 古代守君の生還を祝して、かんぱぁぁぁぁい!
いやぁ、めでたい、めでたいなぁ」
沖田 「古代! いや、キミじゃなく兄さんの方だ。ややこしくなるな、これから・・・。
古代守、もっと顔を見せてくれ! もっと!」
古代(日記) 「また今夜も眠れそうにありません。お父さん、お母さん、見えますか? ボクの幸せで興奮しきった様子が・・・。
こんな風に書きながらもひとりでに顔が笑ってしまいます」

60 ナレーション 「その夜、一つの事件が起こった。藪という名の機関助手が10人の仲間と共謀して、ダイヤモンド大陸の一角を占拠したのだ」
相原 「藪機関士から通信です。メイン・スピーカーに切り替えます」
藪の声 「古代! 艦長代理・古代いるか!」
古代 「オレだ! 古代だ!」
藪の声 「我々はこの星への残留を希望する。許可されたし!」
古代 「そんな許可が出来るか! 既に多くの仲間を失い、ヤマトの運行にはひとりでも余計に手の欲しい所だ、命令だぞ、直ぐ艦に戻れ!」
藪の声 「戻る意志は無いね」
古代 「君たちは地球の人がどうなってもいいのか!」
藪の声 「それを考えるからこそ脱走したんだよ。ヤマトの航行スケジュールは大幅に遅れているんだ。
地球に着いたとき、人々が生きている保証はあるかね?
第一ヤマトが無事に帰り着くという保証も無い。
オレたちがここに残っている限り、ヤマトに事故があろうと、地球に何が起ころうと、人類が子孫を失うことはない!」
古代 「藪機関士、頭がおかしいんじゃないのか? 男ばっかり居残って、どうやって子孫を残すんだ」
70 藪の声 「心配するな、花嫁はいる!」
ユキの声 「古代くん!」
古代 「ユキ!」
藪の声 「ユキはまだ全面的に承知してくれた訳では無いが、こういう事は時間が解決するもんだ。そういう訳だから、我々を攻撃しようなんて気を起こすなよ」
古代 「くそぉ、人質に取ったな、汚いぞ!」
太田 「艦長代理! 地震計に異常な動きがあります。マントルに大きな滑りが発生したんでしょう。ダイヤモンド大陸の下のマントルです!」
古代 「何! じゃ、藪達のいる大陸は?」
真田 「今夜中にも海の底へ沈む・・・・・」
7 SE-07 地震 災害
相原 「地震だ!」
太田 「津波が来ます!」
80 古代 「島! ヤマトを浮上させろ。艦載機全機出動! 藪達の救出に向かう!」
ナレーション 「津波が襲いかかり、地震と相まってダイヤモンド大陸はいくつにも裂け、そこから溶岩が吹き出した。
大陸は傾き、信じられないスピードで流れるように海へ沈んで行く。
古代等の必死の活動にもかかわらず、藪達を助ける事は出来なかった。ただひとりユキだけは、藪が溶岩に身を焼きながら古代の手に送り届けた。
藪もまた、優しい男であった」
8 SE-08 BGM ブリッチ
9 SE-09 波の音
真田 「古代艦長代理、放射能除去装置の全パーツの積み込みを完了した」
古代 「よぉし、出発だ!」
ナレーション 「ヤマトには、スターシャが訪れていた」
沖田 「スターシャさん、本当にありがとう。地球の全人類は永久にアナタを忘れません」
スターシャ 「帰りもどうかお気をつけて。古代守さん、いつまでもお元気でね」
「あぁ アナタも・・・」
ナレーション 「ヤマトの艦側にはロボット・ボートがスターシャを待っていた。古代達はスターシャを送って外へ出た。
第一艦橋に続く長い階段を、進、守、スターシャ、ユキの順序で降りて行った」
Z SE-追加BGM
ナレーション 「誰も何も言わなかった。あまりにも大きな感慨が4人の口を重く貝の様に閉ざした。
下近くまで行った時、ユキがスターシャを呼び止めた」
90 ユキ 「スターシャさん」
スターシャ 「なぁに、ユキ?」
ユキ 「いいんですか? 古代守さんを連れて帰って・・・・・」
スターシャ 「・・・・」
ナレーション 「スターシャは目を伏せた。まつ毛が震えているのは海風のせいだけではなかった」
ユキ 「運命を受け入れるだけじゃ愛は実りませんわ。アナタは私たちにおっしゃったじゃありませんか。
明日の幸せは、自分の力で獲得するものだって」
ナレーション 「スターシャは答える代わりに目を伏せたまま歩き出した。仕方なくユキは続いた。下には古代等が待っていた。
スターシャは進とユキの頬に別れのキスをした。守の番になった。スターシャは守を見つめた。守もまたスターシャを見つめた。
いつの間にか、スターシャの目には涙が潤んでいた」

スターシャ 「守・・・・」
「さようなら、スターシャ・・・」
スターシャ 「・・・いいえ・」・
100 「何だって?」
スターシャ 「行かないで、守・・・・、お願い・・・・、愛してるわ・・・・!」
ナレーション 「嗚咽の顔を覆い、スターシャはタラップを走り降りてボートに飛び移った。守も後を追って走った。
進が兄の名を呼んだ時、ふたりは既にボートの中だった」
古代 「兄さん!」
「進・・・・・、許してくれ!」
ユキ 「お兄さんとスターシャさんは新しいイスカンダルのアダムとイブになるのよ。
滅び行く星と言っても、それまでには何千年とあるわ。人生には長過ぎる程の時間よ」
0 SE-10 ボートの発進音
古代 「兄さぁん! 元気でね〜!」
「お前も・・・・、お前も、がんばれよぉぉぉ!」
ユキ 「さよなら〜ぁ」

= SE-11 BGM  ガミラス艦音
ナレーション 「ヤマトはイスカンダルを出発した。2200年6月15日であった。放射能汚染の進行による、人類滅亡のタイムリミットまであと90日。
ヤマトは艦内で放射能除去装置を組み立てながらワープに次ぐワープで地球へ急いだ。
帰路は戦闘行為のないことがスケジュールにとってただ一つの幸いだった。
7月にはヤマトは銀河系に接近して来た。


それはある小惑星の傍を過ぎてワープに入ろうとした時の出来事だった。
小惑星の影から、一隻の宇宙戦艦が現れたのだ!」
BGM終わってから
110 デスラー 「波動砲用意!」
ナレーション 「デスラーだった。ガミラス陥落の日、崩壊する司令部の下敷きになったと見えたデスラー総統だが、実は死んではいなかった。
司令部の中に仕組んだロケットで脱出したデスラーは、被害をまぬがれた最後の戦艦で決戦を挑んできたのである」
デスラー 「波動砲発射!」
^ SE-12 波動砲発射
ナレーション 「だがワープ予定に入っていたヤマトは、一瞬の差でデスラーの視界から消えた。
いらだったデスラーは、直ちに追跡のワープを命じ、それは実行に移されたが、
チョットした計算の狂いからヤマトの艦尾にデスラー艦の艦首が突っ込むという形で衝突が起こってしまったのだ」
¥ SE-13 衝突 BGM
古代 「何だ! どうなったんだ?」
「いやぁ、判らん! ワープそのものは成功した筈なんだが」
  BGM流れてから
加藤の声 「戦闘隊長! 艦尾の格納庫へガミラス兵が突入してきた!」
古代 「ガミラス兵が・・・?」
ナレーション 「デスラーは衝突で2つの艦がつながったのを幸い、一気に勝負をつけようと白兵戦を挑んできたのだ。
ガミラス人は放射能の中でなければ生きられない。突入に先立ち強力な放射能ガスがヤマトの中に送り込まれ、続いてデスラーに率いられたガミラス兵が突入した」
Q SE-14 警報音
ナレーション 「戦闘隊長古代は、反射的に第一艦橋を飛び出し、戦場となっている後部格納庫付近へと走った。
放射能ガスに気づいたのはその途中であった」

120 古代 「艦内の隔壁を閉めろ! 放射能ガスの艦前方への拡散をくい止めるんだ!」
ユキ 「古代くん!」
古代 「格納庫へ行く!」
ユキ 「だめよ! 艦尾は放射能ガスが充満しているわ! 古代くん! 古代くん!!!」 
ナレーション 「古代は駆け去った。古代が死ぬ。ユキの頭をよぎったのはその一言だった。
どうすれば良いのか、ユキは途方にくれた。だが次の瞬間名案が浮かんだ。
艦の中央部には放射能除去装置が組み上がっていた。アレを動かせばいい・・・・。ユキは走った!」
W SE-15 放射能ガス充満
真田 「馬鹿な! まだテストも済んで無いんだぞ! どんな結果が出るか判らないんだ!」
ユキ 「じゃ、これをテストにすればいいじゃない! どいて下さい!」
真田 「ユキ!」
ユキ (泣き叫)
「だって・・・古代君が、古代君が死んじゃうぅぅぅぅ!」
ナレーション 「この一言が真田をたじろがせた。
放射能探知ランプが点滅しはじめた。
放射能ガスがここまで侵入してきたのだ。
ユキは自分の手で、工場とコントロール・ルームを隔てるシャッターのボタンを押して、真田を外へ押しだし、放射能除去装置に取り付いた。
今は真田もユキを成功させたい一心でコントロール・ルームの窓越しに叫んだ」
130 真田 「そうだユキ! AZのメインボタンをセットしたら、起動原子の振幅の確認だ、急げ!
ユキ (泣いたまま)
「真田さん、ありがとう」
ユキ 「振幅針85、準備操作完了。スイッチ・オン!」
E SE-15-2 放射能除去装置始動
ナレーション 「一瞬にして放射能ガスは消えた。艦尾ではデスラーが悶えていた」
デスラー 「いかん、引き上げろ。体制を立て直してもう一度決戦だ!」
R SE-15-3 デスラー艦退却
ナレーション 「真田は成功の喜びに胸躍らせ、コントロール・ルームと工場を隔てるシャッターを上げようとして、背筋の凍る光景を見た。
ユキが放射能除去装置の操作台からゆっくり床へ転げ落ちたのだ。
ユキは死んでいた。」
T SE-16 ヤマト艦内音
古代 (静かに、それで力強く)
「ユキ!」
真田 「ユキは、キミを助けたい一心で放射能除去装置を動かした。その、心の美しさを現すかのように、空気もまた、美しくなりすぎてしまった。
一時的な酸素の分解が起こったのだ」
古代 「ユキ!」
真田 「ユキは身をもって、放射能除去装置の操作上の問題点を教えてくれた。それは解決出来る。
古代! ユキの犠牲によって全人類は救われるのだ」
140 古代 「ユキ! ユキ! ユキぃぃぃぃぃ!」
ナレーション 「西暦2200年7月12日。古代にとって、もう航海スケジュールはどうでもよかった。
天国は何処にあるのか、古代は魂を失ったようにさまよい、いつしか艦長室を訪ねていた」
Y SE-17 ヤマト艦内音
沖田 「古代、もっと傍へ来い」
古代 「艦長、教えて下さい。艦長は愛するご家族を失われて、どうしてそんなにたくましく生きておれれるのですか?」
沖田 「私は、ひとりぼっちではないからだ」
古代 「え?」
沖田 「私には、地球の全ての人が家族であり、恋人なんだよ・・・・。
なぁ古代。お前の気持ちはよくわかる。悲しかったら思いっきり泣け。
そして涙が枯れ果てたら、こんな風に考えて見ろ。
お前のその悲しみは、お前が人を愛したという証拠。お前の中に、人を愛する能力があったという証拠だ。
その心で、次は地球の人全てを愛する様に努力するのだ。いや、地球の人だけじではない、宇宙のありとあらゆる命あるもの全てを・・・」
ナレーション 「7月末、、ヤマトは太陽圏に入ろうとしていた。
この時、デスラーの艦が再び襲って来た。
ヤマトの気を突いたデスラーの艦は、ヤマトの横っ腹へ真っ直ぐに波動砲を浴びせた。
ヤマトのあらゆる攻撃が間に合わなかった。
しかし、古代は少しも慌てず、一つのボタンを押した。それは技術班長の真田が最近開発した磁力メッキであった。
ヤマトの艦体は瞬間にして白銀に輝くメッキが施された。
そこへデスラーの艦から発射された波動砲のエネルギーが当たった。
エネルギーは光がカガミに反射する様に宇宙空間へ散った。その一部は、デスラーの艦へ跳ね返った。
デスラーの艦を宇宙から消滅させるには十分な量であった」
U SE-18 デスラー艦 爆発
爆発後
デスラー 「うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!」

加藤 「おーい! 地球が見えてきたぞ!」
150 相原 「地球だ!」
太田 「地球だ!」
出演者男全員 「ガヤ」 (アドリブ)
ナレーション 「8月10日、ヤマトの前方に豆粒のような地球が現れた。
誰もかれもが、地球を見ようと第一艦橋へ、艦の上部へ殺到する中を古代はひとり流れに逆らって医務室へ向かった。
その冷凍庫にはユキの死体が冷凍保存されていた。
ユキをどうしても地球に連れて帰りたいという古代のたっての希望でこうしたのだ。
ユキは恋人の口づけを待つ白雪姫の様に可憐に眠っていた」
I SE-19 BGM 
古代 「ユキ、一緒に地球を見ような・・・」
ナレーション 「古代はユキを抱き上げ、第一艦橋の方へと歩いて行った」
古代 「ユキ、初めて会った時の事覚えているかい?
地球防衛軍の司令部で出会った時から、ボクはキミを忘れられなかった・・・。
ヤマトへ一緒に乗り組めたら・・・、そう想い続けていたんだ。
でも、ヤマトの使命を考えると、それが出来なかった。
しかしユキ、キミはボクの心の中でどんどん大きな存在になっていったんだ。
人生の中で一番大事なことは、愛だ。それがあるから全てが始まるんだ。
それなのに、ボクをひとりぼっちにして、キミは何処へ行ってしまうんだ・・・、ユキ・・・・」
ナレーション 「第一艦橋の上の艦長室では、沖田が医師の佐渡に付き添われて地球を見ていた」
沖田 「佐渡先生・・・・」
佐渡 「はぁ?」
160 沖田 「人間の命は、死んだら何処へ行くのかねぇ?」
佐渡 (涙と鼻水をすすり)
「縁起でも無いことを言わんで下さいよぉ」
沖田 「いや、ワシは今ふと、人間は死んでも、命というものは無くならないんじゃないか、と、そんな気がしたんだよ」
佐渡 (力無く笑う)
「は、ハハ・・・・」
沖田 「佐渡先生・・・、ワシをしばらくひとりにしてくれんかね・・・・」
佐渡 (寂しげに)
「艦長・・・・!」
沖田 「命令だ」
佐渡 (涙声で)
「ハッ!」
ナレーション 「佐渡の去った後、ひとりになった沖田は、枕元にある家族の写真を取り上げ眺めいった。
いかつい指が、いつくしむように写真を撫で、白い髭の頬には涙がしたたり落ちた。
やがて沖田の目は、再び前方の地球を見つめた」
沖田 「地球か・・・・、何もかも、皆懐かしい・・・・・」

170 ナレーション 「いつか、沖田の目は閉じられていた。眠っているようであった。
力を失った指から写真がヒラリと床に落ちた。
宇宙戦艦ヤマト、艦長・沖田十三は・・・・・、死んだ」
O SE−20
ナレーション 「第一艦橋で、ユキを抱いて地球を見ていた古代は、不思議な感触を覚えた。
ユキのカラダに体温が戻り、心臓の鼓動さえ始まったのだ。
唇は既に呼吸を開始していた」
古代 「ユキ!」
ナレーション 「古代は愕然とした。ユキは甦ったのだ。
驚きと喜びが交錯して古代は震えた」
ユキ (かすかに、もうろうと)
「古代くん・・・・、わたし、夢を見ているのかしら・・・・?
地球が・・・・・・、見えるわ・・・・」
古代 「ユキッ!」
古代(日記) 「西暦2200年9月5日。ヤマトは地球の大気圏に突入しつつある。
もう多くは書けない。
お父さん、お母さん。赤く焼けただれた地球が元の青さを取り戻すのはもうすぐですよ!」
BGM終了 第4部  END