宇宙戦艦ヤマト2199 第3話「木星圏脱出」より   沖田十三 ♂ 古代 進 ♂ 島 大介 ♂ 真田志郎 ♂ 徳川彦左衛門 ♂ 森 ユキ ♀ 新見 薫(ヒルデ・ラーレタ) ♀ N1(シュルツ・太田・兵士・榎本・加藤・南部)♂  N2(ガンツ・相原・アナライザー・藪・遠山・佐渡)♂ +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ (BGM-ー) N1太田「高度2400(ふたせんよんひゃく)、大気速度28000(ふたまんはっせん)」 島 「地球大気圏離脱、第2宇宙速度に切り替える」 古代「この地球を救えるんだろうか・・・」 島 「自信がないのかぁ? 戦術長」 古代「そんなんじゃない」 ユキ「 右舷(みぎげん)前方に艦影(かんえい)友軍(ゆうぐん)です」 N2相原「貴艦の健闘と航海の無事を祈る」 (x) 沖田「本艦はこれより月軌道を抜け巡航速度で火星軌道に向かう   火星宙域に達したのち、メインスタッフは中央作戦室に集合   ワープテストのブリーフィングを行う・・・以上だ」 N1兵士 「こちら着弾観測隊、テロンの宇宙船が衛星軌道を離脱します」 N1シュルツ「ん〜〜・・・」 N2ガンツ 「艦隊を差し向けますか?」 N1シュルツ「いいや、様子を見る」 N2ガンツ 「えっ?!」 N1シュルツ「太陽系を出ることすらままならぬ劣等種族が、たった一隻で何を企むのか・・・      それを見極めるのだ」 沖田 「諸君、イスカンダルへの旅は光の速度で航行しても、    往復33万6千年という時間を費やすものとなる。    それを我々は1年という限りある時間の中で消化しなくてはならない    その為には光速の壁を突破する、「超光速ワープ航法」が必要なのだ」 真田 「ワープとはこのようにワームホールを人為的に発生させ実質的に光速を越える航法です」 徳川 「わしにはよくわからんが、本当にそんなことが出来るのかね?」 真田 「理論上は可能です、    ただ、タイミングを違えると時空連続帯に歪みをうみ、    宇宙そのものを総転移させてしまうこともありえる」 古代 「・・・と言うと・・・つまり・・・」 沖田 「それだけ波動エンジンの運用には細心の注意が必要だということだ」 古代 「自信がないのか、航海長?」 島  「そんなんじゃない」 真田 「それと、もうひとつ・・・」 新見 「技術科情報長の新見(にいみ)です。    我々はその波動エンジンの莫大なエネルギーを応用した兵器を完成させ、    ヤマト艦首に搭載させることに成功しました」 ユキ 「兵器・・・?・・・ですか・・・?」 新見 「「次元波動爆縮放射器」(じげんはどうばくしゅくほうしゃき)    便宜上、わたしたちは「波動砲」と呼んでいます」 古代 「波動砲・・・、どんな武器なんです?」 新見 「簡単に言えば、波動エンジン内で開放された余剰次元を射線上に展開、    超重力で形成されたマイクロブラックホールが瞬時にホーキング輻射を放ち・・・」 N1南部「それってこの船自体が巨大な大砲ってことじゃ・・・」 新見 「当たらずとも遠からずね」 徳川 「わしにはさっぱりじゃな・・・」 真田 「この波動砲もいずれ試射を行わなくてはならないでしょう」 沖田 「ワープテストは火星軌道を越えた重力低干渉宙域にておこなう    テスト予定時刻は0130(まるひとさんまる)    万一に備えて全員船外服を着用・・・、解散!」 ユキ 「・・・サーシャは火星に眠っているのね・・・    ・・・たったひとりで・・・」 (BGM-W) 古代 「見ていてください・・・僕たちはあなたの故郷に必ず行きます。    遥か16万8千光年の彼方から、たった一人で地球を目指し、    その気の遠くなるような長い旅路の果て、僕らに生きる希望と勇気を与えてくれた、    あなたの心に必ず応えます」 (x) N2藪「おやっさん・・・時空を曲げちまうなんて本当にできるんですかね?」 徳川 「わからん!何事もやってみんことにはな・・・」 ユキ 「テスト開始2分前」 島  「ワープ開け座標軸確認」 N1太田「確認した!」      天王星軌道F8630(えふ はちろくさんまる)の空間点」 島  「座標軸固定する! 速度12から33エスノットに増速(ぞうそく)」 徳川 「両舷増速(りょうげんぞうそく) 出力!40から99まで上げい!    波動エンジン、室圧上昇中!」 島  「速度! 30エスノット!・・・33エスノット!」 ユキ 「テスト開始1分前」 N2佐渡「いやぁ〜〜、船は出てゆく煙は残る、残る煙がしゃくの種〜・・っときたぁ〜 っと・・・きたよ〜〜! 島  「速度36エスノット!」 ユキ 「秒読みに入ります・・・   10・・・9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1」 島  「ワープ!」 (BGM-00) (x) 古代 「・・・!・・っあ!    ここは・・・ 真田 「木星!」 ユキ 「なんで・・・?」 古代 「おい!島!」 沖田 「航海長! 状況知らせい!」 島  「わ・・・わかりません!    時空座標の設定では・・・確かに・・・」 真田 「予定ルート上に未知の障害物を感知! 回避したのかもしれません」 N1太田「ヤマト! 木星の重量場に捕まっています!」 島  「駄目だ! どんどん引き寄せられていく・・・!」 (BGM-6) 島  「舵が効きません!」 沖田 「うろたえるな!    機関室・・・状況を報告せよ!」 徳川 「主エンジンからエネルギーがうまく回らんのです。    補助エンジンに切り替えてやってみます」 島  「補助エンジンに動力伝達! 安定翼展開!」 古代 「頼むぞ!島!」 島  「わかってる!」 ユキ 「レーダーに感あり・・、前方6万5千キロ・・・、船ではありません    大きすぎます!」 沖田 「拡大投影!」 真田 「赤外線映像に切り替え」 島  「・・・これは!・・・」 (x) (BGM-0) N1太田「この浮遊物体は、ほぼオーストラリア大陸と同程度の面積を持っている模様です」 沖田 「島! この浮遊大陸にヤマトを軟着陸させろ」 島  「了解!」 古代 「島! もう少しだ!」 沖田 「碇! 打ち込め!」 島  「撃て!」 (x) 島  「ふぅ〜・・・」 徳川 「艦長、エンジントラブルの原因が判りました    主エンジンの冷却機がオーバーヒートしとります」 沖田 「判った、直ぐ修理にかかれ」 真田 「古代君、甲板部(こうはんぶ)から船外作業班を編成してサンプル採取にあたってくれ」 古代 「はい!」 ユキ 「AUO−9(えーゆーおーないん)出番よ」 N2アナライザー「番号なんかで呼ぶな、私は自由なユニットだ」 古代 「!・・・こいつ、自立型だったのか・・・」 真田 「AUO−9(えーゆーおーないん)ヤマトの自立型サブコンピューターだ」 N2アナライザー「アナライザーと呼んでください」 ヒルデ 「お父さん、お仕事早く終わらせて帰ってきてね     お母さんもお父さんを心配・・・」 N2ガンツ 「シュルツ指令・・・」 (ヒルデの「心配」に掛るように) N1シュルツ「どうしたガンツ・・・」 N2ガンツ 「はっ・・・浮遊大陸のラーレタから報告が・・・」 N1シュルツ「第5惑星ズッピストのか?」 N2ガンツ 「はい・・・その大陸に例のテロン艦が着陸したとのことです」 N1シュルツ「馬鹿な、奴はまだ内惑星系(ないわくせいけい)をうろついてるはずだ」 N2ガンツ 「それが・・・ゲシュタムジャンプの空間航跡(くうかんこうせき)も観測されておりまして・・・」 N1シュルツ「まさか・・・奴がジャンプしたとでも言うのか・・・?!」 N2ガンツ 「い、いえ・・・それは・・・なんとも・・・」 N1シュルツ「・・・っむう・・・     浮遊大陸基地の艦艇は?」 N2ガンツ 「補給基地ですので現在、4隻程度です・・・」 N1シュルツ「それでいい。その戦力でラーレタに叩かせろ」 N2ガンツ 「はっ!」 (BGM-Y) ラーレタ「分かりました。直ちに戦闘艦艇を向かわせます」 ラーレタ「テロンの武器ではこちらの装甲を貫通出来ません。4隻でも多いくらいです」 (x) N2遠山「植物採取なんて小学生みたいなんだな・・・ N1榎本「ぶつくさ言うな!」 N2アナライザー「気温、大気圧ともに木星表面とは著しく異なる。          大気成分、メタン67%、窒素6%、二酸化炭素21%・・・          大気中にアセトアルデヒド及びエタノールを検出」 N2相原「アルコールかぁ・・・」 N1太田「そういや俺・・・なんだか・・・うっ!」 N2佐渡「こりゃあ・・・ワープ酔いじゃな」 N1加藤「・・・なんすか・・・それ?」 N2佐渡「まぁ・・・二日酔いみたいなもんじゃよ・・・飲むか? 迎え酒!」 N1加藤「い!・・・いえぇ・・・」 N2(アナライザー)「地球に繁殖している未知の異星植物とのDNA適合率99.98%です」 真田 「つまり・・・この環境は太陽系外から人為的に持ち込まれた物だということです   将来地球をガミラスフォーミングするため、大陸ごと木星に移植したものと考えられます」 沖田 「だとするとここには・・・」 ユキ 「レーダーに感あり! ガミラス艦です!」 (BGM-U) 沖田 「全艦戦闘態勢!」 古代 「主砲発射準備!」 島  「だが古代! 機関の修理が終わらなければ主砲にエネルギーを回せないぞ!」 N1南部「三式弾なら実体弾なので射撃可能です!」 古代 「三式は射程が短い!    ショックカノンならロングレンジでも叩けるのに・・・!」 真田 「艦長、バイパスを通せばショックカノンも数発は撃てるはずです」 沖田 「う〜む・・・」 徳川 「修理はあと5分ほどで終わります・・・それまで何とかなりませんか?」 沖田 「事態は一刻を争うのだ    バイパスをつなげ! 主砲に動力伝達!    三式弾は副砲に装填して待機!」 N1南部「主砲! エネルギー来ました! ショックカノン撃てます!」 古代 「1番2番は、左舷(ひだりげん)の先行する駆逐艦を狙え!    3番は後方から回り込んでくる戦艦を叩く!」 N1南部「目標を補足した! 自動追尾よし!」 (BGM-I) 古代 「撃ち方はじめ!」 ユキ 「左舷(ひだりげん)魚雷接近!」 沖田 「対空防御!」 N1南部「敵魚雷排除!     敵艦、三式弾の射程距離に入った! 沖田 「副砲! 撃ち方はじめ!」 古代 「!・・・ってぇ!」 古代 「敵艦、撤退します!」 徳川 「こちら機関室、修理完了しました」 沖田 「機関始動! 碇あげぃ!」 N1太田「大陸外縁部に達します!」 (x) N1太田「浮遊大陸との距離23000(ふたまんさんぜん)キロ」 沖田 「古代、波動砲で浮遊大陸を撃て!」 古代 「えっ・・・」 沖田 「波動砲の試射を兼ねて敵基地をここで叩く」 古代 「・・・ん!」 真田 「波動砲の威力は未知数です、    効果が不確定な状況下での使用はリスクが高すぎるのでは・・・」 徳川 「やってみようじゃないか・・・真田君。    ここで駄目だったら先へ行っても駄目なんだ」 沖田 「総員準備にかかれ!    取舵(とりかじ)反転、艦首を浮遊大陸へ向けよ!」 真田 「艦内の電源を再起動時に備えて非常用に切り替える」 沖田 「航海長、操桿(そうかん)を戦術長へ回せ」 島  「戦術長に回します」 古代 「戦術長頂きました」 沖田 「森! 大陸の熱源は?」 ユキ 「大陸中心部の盆地に集中しています」 沖田 「うむ・・・座標を送れ・・・古代!」 古代 「了解! 艦首を大陸中心に向けます」 沖田 「波動砲への回路を開け」 徳川 「回路開きます・・・非常弁全閉鎖! 強制注入機作動!」 沖田 「安全装置解除!」 (SE-1) 古代 「セーフティロック解除!    強制注入機、作動を確認    最終セーフティ解除!    ターゲットスコープ、オープン! N1南部「薬室内、タキオン粒子圧力上昇!    86・・・97・・・100!    エネルギー充填120%!」 ユキ 「浮遊大陸、艦首方向23000(ふたまんさんぜん)キロ、相対速度36」 古代 「艦首、軸線に乗った!    照準、誤差修正プラス2度!」 沖田 「波動砲! 発射用意!    対ショック、対閃光防御!」 古代 「電影クロスゲージ明度20    照準固定!」 N1南部「発射10秒前!    9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1」 沖田 「撃てぃ!」 (SE−2) (x) 古代 「これが・・・波動砲・・・」 N1南部「すごい武器だよ!    これさえあればガミラスと対等に・・・いや! それ以上に戦える!」 真田 「いや、我々はガミラスの基地さえ潰せればそれでよかったはずだ・・・」    しかし波動砲は大陸そのものを破壊してしまった・・・」 沖田 「我々の目的は敵を殲滅(せんめつ)することではない    ヤマトの武器は、あくまで身を守るためのものだ」 沖田(M)「宇宙さえ滅ぼしかねない力・・・    我々は禁断のメギドの火を手にしてしまったのだろうか?”    いや、今は思うまい    これが試しであるならば、我々はその行動で良き道を示していくだけなのだ」 第3話終わり 第4話へ続く