宇宙戦艦ヤマト2199 第17話「記憶の森から」  古代 進 ♂ 真田志郎 ♂ 森 ユキ ♀ 新見 薫 ♀ 岬百合亜 古代 守 ♂ 沖田十三 N +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ N 「古代は、ビーメラ4に残された遺跡からイスカンダルの情報を待ち帰っていた。   滅びた文明の残した亜空間ゲートを活用することにより、一気に数万光年の大跳躍が可能になるというのだ。   一方では、森ユキの持っていたメッセージカプセルがイスカンダルの物であるがために、 森ユキがイスカンダル人であるという疑惑が艦内に蔓延していた。   そんな中、古代と真田、森ユキはゲートを再起動させるべくシステム衛星に乗り込むのだが・・・」 (BGM−[) 真田「ブービートラップの類はなさそうだ。   基地としてはかなり前に破棄されたものらしい。   慣性質量を感じるということは、死んでいる訳ではなさそうだな」 古代「さっさと終わらせましょう」 (x) 古代「どっちに行けばいいんだか」 真田「うむ」 ユキ「たしか、このシステムはガミラスより古い文明が作ったんですよね?」 真田「そうらしい」 ユキ「その人達は、「ガミラスに汚された」って思うのかな?」 真田「汚れちまった悲しみに、今日も小雪の降りかかる・・か・・・」 古代「何です?」 ユキ「中原中也ですね?」 真田「昔、この詩が好きな奴がいてね」 ユキ「たしか、20世紀の詩人ですよね?」 古代「200年前の詩人か・・・、    ! なぁ! それって」 ユキ「なぁに?」 古代「イスカンダルの人間が、その中原なんとかを知ってると思う?」 ユキ「えぇ?」 古代「そんな昔の詩人、イスカンダル人が知ってると思う?」 ユキ「あ、あ」 真田「しっ! 静かに」 N 「隠れる3人、いくつもある通路の一つの奥から、見張りロボットがやって来る」 古代「番犬を置いていったみたいですね」 真田「まだいるかも知れない。こっちだ」 N 「真田の後を追う二人。   ヤマト拘束室、ビーメラ4を第二の地球にへと反乱を企てた一員である新見薫が過去を振り返っていた」 新見「いつでも先生はそうでした。迷った時、いつも道を示してくれた」 (BGM-Q) 過去回想  新見「これ、頼まれていた資料です」  真田「ありがとう」  新見「異星人の艦隊は、火星軌道近くまで浸出して来てるみたいです」  真田「そうらしいね」  新見「内惑星戦争の地下シェルターを改造して、みんなそちらに避難するって噂も」  守 「心配無いって!」  新見「は? 古代くん!」  守 「今度、火星を絶対防衛線とした反攻作戦が始まるらしいんだ」  新見「どこの情報?」  守 「ひ・み・つ!」  新見「(ため息) で、何の御用? この研究室には許可を取らないと入れないんですよ」  守 「薫くんは許可取ってるの?」  新見「わたしは・・・、真田先輩に頼まれた資料を・・・」  守 「あは、オレと同じだな。これ!」  真田「ん?」  守 「この前、読んでみたいって言ってただろ」  新見「詩集・・・、ですか?」  真田「そうだが・・・」  守 「数式にしか興味が無いと思っただろ?」  新見「うん・・、いえ! 違います!」  真田「そんなことより古代、迎えが来ているぞ」  守 「あっ、しまった! 弟と約束していたんだ!  じゃ!」  新見「遠慮の無い人」  真田「あいつは自分に正直なんだ、キミも正直になった方がいい」  新見「・・・」 現実  新見「古代くん・・・」 (x) N 「同じように過去を思い出していた真田。ひとりつぶやく」 真田「自分に正直にか・・・」 古代「でもよかった、キミが地球人だって証明出来てさ、考えてみればそうだよな」 ユキ「でも、じゃぁなんで私は、一年前からの記憶しか無いの?   ユリーシャさんが一年前から行方不明になっているのは偶然の一致なの?」 古代「それは・・・」 真田「偶然ではないよ」 古代「!」 真田「キミには伝えるべきだった」 ユキ「え?」 真田「キミとユリーシャは同じ事故に遭遇した」 (BGM−6) 真田「単なる事故か、あるいはテロだったのか、真相は依然藪の中だ。   だが、その事故でキミは記憶を、そしてユリーシャは意識を失ってしまった。   あらゆる手を尽くしたが、彼女の意識は戻らなかった」 古代「な、なんで黙ってたんです?」 真田「・・・、我々はいまだに、イスカンダルが大マゼランのどこにあるかを知らない」 古代「!」 ユキ「でも、イスカンダルから航路図が・・、」 古代「そうですよ、自動航法室にはそのデータがインプットされているんでしょう?」 真田「そんなものは無い」 ユキ「え?」 真田「彼女はイスカンダルへの道を示してくれる・・・、その筈だった」 古代「待って下さい。じゃ、ここまでどうやって」 真田「彼女の記憶をたどってね・・・」 古代「まさか・・・、それって」 真田「ん、自動航法室の中核は、ユリーシャなんだよ」 古代・ユキ「!」 真田「我々は彼女の記憶をトレースしてイスカンダルへ向かおうとしている」 ユキ「そんな・・・」 真田「道義的に許されないことをした・・・、 その責は負わねばならない。 そしてだからこそ我々は彼女を無事に故郷へ送り届ける、それもヤマトのミッションなんだ」 ユキ「じゃ、あのメッセージカプセルは? なんで私が・・・」 真田「それは・・・」 (x) N「油断している真田の前に、見張りロボットが現れた。古代はとっさに銃を撃ち込み見張りロボットを倒す」 真田「流石だな・・・。   では、そろそろ入ろうか」 古代「な、入るって」 真田「ここが目的地だ。システム衛星の制御区画だよ」 (BGM−4) N「真田とユキが協力して解析し、制御室の扉を開ける」 ユキ「開きました」 真田「ここから先は、私の仕事だ。キミたちはここで」 N 「突然、制御室の扉が閉まる」 ユキ「はっ!」 古代「副長、副長!」 N 「真田が内部より制御コンピュータを解析している」 古代(通信)「副長!」 真田(M)「思った通りだ・・・。   このシステム衛星を再起動すれば、亜空間ゲートを開くことができる」 ユキ「中からロックされた」 古代「!」 (x) 真田(通信)「古代、良く聞いてくれ。   どうやらこのシステムを再起動すると、大量の中性子が数秒間放出されるようだ」 ユキ「え?」 古代「それじゃ?」 真田(通信)「だが、この区画はシールドされている。つまりキミたちはそこにいれば安全だ」 古代「そっちはどうなんです、シールドされているんですか? されてるんですよね?」 真田「・・・」 ユキ「えぇ・・」 古代「何やってんだアンタ!」 ユキ「危険です、やめてください!」 (BGM−W) 古代「駄目だ、駄目だよ!」 ユキ「こっちでロックを解除してみる」 古代「開けてくれ! 真田さん!」 真田(思いつめて)「古代・・・、さっき中原中也の詩を口ずさんでいた友達がいると言ったろ?   あれは・・・、古代守だ・・・。 古代「!」 真田「おまえの兄、古代守なんだ」 古代「兄さんと真田さんが、友達?」 真田「あぁ・・・、親友だった」 N 「昔を思う真田、研究室に古代守が入って来る」 回想  真田「新見くんならいないぞ」  守 「例の隕石、今度はリオデジャネイロに落ちたらしい」  真田「明らかに、人為的に落されている。異星人は戦術を切り替えたようだね」  守 「なぁ、たまには外の空気を吸わないか?」  真田「え?」 (x) N 「丘に立つ二人」  守 「ひどい空だ・・・」  真田「核の冬が来るかも知れない。    卒業して、そのまま宇宙軍に入るのか?」  守 「ああ、お前は?」  真田「オレは・・・、軍には向かない人間だ。    だが、そんな自分にも何か出来ることがあるんじゃないか?    そう思ってる」  守 「お前なら出来る。オレには逆立ちしたって出来ないことでも、お前にはな。    ・・・詩と数式だな、おれたちは」  真田「ん?」  守 「道は違っても、この世界を守りたい。その気持ちは同じってことさ」  真田「フッ・・、ああ」  守 「汚れちまった悲しみに・・・ 真田(現在)「今日も小雪の降りかかる・・・」 N 「思いにふける真田に、古代が呼びかけている」 古代「真田さん!」 真田「親友だっていうのに・・・、オレは・・・、」 古代「!」 (BGM−7) 真田「オレは、   メ号作戦が陽動だってことを・・・、   艦隊がオトリだってことを・・・、   あいつに告げられなかった」 N 「メ号作戦前、出撃準備の古代守を真田が見送りに来ている」  守 「いよいよ明朝出撃だ」   真田「ん」  守 「どれだけの船がたどり着けるかわからない。    だが、必ず冥王星を叩いてみせる」  真田「新見くんには会ったのか?」  守 「・・・別れたんだ、おれたち・・・」  真田「そうか・・・」 N 「真田が詩集を出す」  真田「長いこと借りっぱなしだったな」  守 「やるよ! いや、お前に持っていて欲しい」  真田「繰り返し読んでみたんだが、オレには詩の良さがわからない」  守 「正直な奴だな、ハハハ・・・」 現在 真田「陽動であることは極秘だった。   親友に事実を告げる勇気もなく、ただ、命令には忠実に・・・。   オレはそういう男だ・・・」 (x) 古代「・・・、アナタからその事実を聞かされたとしても、兄は行ったでしょう。 どんな状況でも、どんな理不尽な命令だったとしても、やると決めたらやり抜いちまう・・・・、 兄は、そういう奴だから」 真田「そうだな・・・、そういう奴だ」   (守に)古代、弟は立派にお前の後を継いでいるよ」 (BGM−9) 古代「真田さん、オレは、オレは兄が詩を好きだったなんて知りませんでした!」 ユキ「あと少し」 真田「汚れちまった悲しみは、何、望むなく願いなく」   汚れちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れる」 古代「真田さん! 兄はどんなことに笑ったんですか、どんなことに悲しんだんですか」 N 「真田は、起動スイッチを押す」 ユキ「制御室内に中性子発生、中にいたら生きていられない・・・」 古代「真田さーん!」   N 「何とかユキが、ロックを解除し扉を開ける。中に飛び込む二人」 ユキ「副長!」 古代「どこですか、真田さん!」 古代「オレはもっと聞きたかったんだ・・・・、   オレの知らない兄さんの話を・・・・、   アナタ自身の話を・・・」 (x) N 「その時、制御パネル後ろの水路より、立ち上がる人影が・・・」 古代「!! 真田さん!」 真田(照れながら)「中性子は水を通りにくいんだ」 古代「まったく、アナタって人は・・・」 N 「古代は手を貸し、真田を水路から引き上げる。   三人は笑みを浮かべる、言葉は無くともそれぞれの思いは通じているようだ。   ヤマトに戻ると、艦長沖田の全艦放送が流れていた」 (BGM−P) 沖田(放送)「全艦に達する、ゲートは使用できるようになった。       これでヤマトは3万光年を跳躍することができる。    だが、その前に一つだけ明らかにしなければならないことがある。    本艦にイスカンダル人が乗艦しているというウワサがあるが、これは事実である。    ただし、乗組員の一人としてではない。    彼女は自動航法室で眠っているのだ」 N 「自動航法室では、森ユキがカプセルに眠るユリーシャを見つめてつぶやく」 ユキ「アナタが、ユリーシャ・イスカンダル」 岬 「いいえ、今は私」 ユキ「!!」 N 「後ろから不意に声を掛けられ驚くユキ。そこに立っているのは、士官候補生、岬百合亜だった」 岬 「私が、イスカンダルのユリーシャ」 第17話終わり 第18話へ続く