3.ボディ内部

左の写真はボディ内部のスライドジョイントの様子です。
3本のボルトのうち、2本が見えています。手前の銀色の金具がトラスロッドです。この部分は、トップ板はなく、指板がネックに乗っかっている状態です。
その下に見えている三層の板は、ネックブロックとスライドジョイントと「羽」のようなバックのトーンバーと組み合っています。基本的には、弦の張力に対して、スライドジョイントを支える役割を担っているように思いますが、同時に、これらが組み合うことで、マークシリーズで言えば、「ブロックフレーム」にあたる役割も担っているような気がします。サウンドホールから上のボディの余計な振動を抑えて、弦振動を集中させる仕組みになっていると思います。
バックについている「羽」のようなトーンバーですが、これは、内田ギターの「ヌーボー」についているボディ内の空気を整流する目的でつけられた「コーン」と同じ役割があるように思います。ブリッジ付近の空気の振動を効率よくサウンドホールから伝える工夫だと推測しています。
 クラインギターは、聞いた音と弾いた音の差が大きいギターですが、その理由の一つを作っているような気がします。
 ホールの上側の両脇にカーブしたブレースが見られますが、これは、トップの振動領域を指定するperimeter barと思えます。
クラインギターではこうしたperimeter barを高域側に置くことでスピーカーのツイーターの役割を担わせる事が多いようですが、この場合は、ホールより上を振動させないのが目的であるような気がします。
 カーブしたブレーシングは、まっすぐよりも強度が増すためとのことです。これらのバーには、スプルースとローズの合板が使われているようです。
 左の写真の右上に見えるのがブリッジプレートで、さらに右上にはフライングブレースを留めている薄いグラファイトにつながっています。
 このブリッジプレートを中心に、放射状にトーンバーが並んでいます。フライングブレースで強度を保っている為に、マークシリーズに比べて、比較的規則的なトーンバーの並び方をしていると思います。マークシリーズのトーンバーは同じ山型ですが、平らなものを使っていました。クラインギターの場合は尖っていますね。S36.9については、L45.7に比べてトップ面が狭い為でしょうか、ブリッジ周りの高域側にperimeter barは確認できませんでした。
左の写真の手前に見える帯状のバーがフライングブレースです。
左下の写真が、フライングブレースを支えるスプルースを補強するカーボングラファイト。
すぐ下の写真が、ブリッジプレートの一部です。クラインギター特有の弦留めピンの穴が見えます。
右下の写真がフライングブレースをサイドで支えている部分です。クラインギターのサイドブレースは、やはり、かなりがっちりとしたものが使われており、「太鼓の胴」の役割を担っているのがわかります。フライングブレースは、サウンドホールから見えるくらいの位置にあるブレースです。
 クラインギターにはバックブレースにも、補強の為ではないトーンバーが「米」の字のように置かれています。
 バックも音作りにとって重要な役割を担っているのがわかります。
 バックのちょうど真中を中心に、均等に分割してあります。バックの振動を一体化し、音を遠くに飛ばす効果を狙っているそうです。結果としてバック全体で振動することから低音も強調されるようです
この写真の手前に「羽」のようなスプルースとローズの合板と思われるトーンバー(?)があります。