STEVE KLEIN S39.6 

  
カーシャ理論を受け継いだ最も革新的なギター。
突然、降ってわいた話しで、知人がボゾを個人売買したときに、相手の方に「他に売りに出しているギターはあるのですか?」と聞いたところ「クラインのハカランダモデルを出そうと思っています」とのことで、その日のうちに私に連絡が入り、購入することになったギターです。リーチを買ったばかりで、資金的にかなり苦しかったものの、簡単に手に入れられるものでないこともわかっていたので、値引きしてもらって無理して引き取りました。
ハカランダは黒っぽく完璧な柾目で、木の美しさを感じさせます。
音は本当に不思議な音です。トップのシトカの音が大きく響き、民族楽器のようにも思えますが、どこかヴィンテージマーチンの香りもしつつ、エレキのように感じたりもします。エフェクターをかけているように思えるほどサスティーンが長く、リヴァーヴ感も強いです。(特に大屋建さんにリセットして頂いてから残響は長くなったように思います。)フランジャーのかかったような宇宙的なサウンドに聞こえる事もあります。とにかく不思議なギターです。


左右独立型のインピーダンスマッチングブリッジ。もともとカーシャブリッジは、低音側と高温側のブリッジの質量を振動数にあわせて変える事により、低音はよりサスティーンを強く、高音は張りのある歯切れのいい音作りをする為に分かれているのですが、クラインの場合は、結果としてそれほど大きく違いが出ているようには思えません。
サドルがセパレートに調整できることと、弦の止め方が合理的になり、デザイン性も向上しています。


サウンドホールには、ファイヴァー製と思われる黒いリングがはまっています。ホールの中にはトーンウッドとしてのバックブレースやサイドブレースが見られます。マークシリーズでは、クラシックギターと同じ作りのバックやサイドのブレーシングまたは普通のアコギと同じ構造が見られますが、カーシャの理論ではバックを第二の反響板として考えてもおり、その発展型としてこうしたトーンウッドが採用されています。サイドのブレーシングは、振動をさせない為のもので、太鼓の胴にあたり、よりロスを少なくしているそうです。


有名なゼロフレットです。そのために起こる余計な振動を抑制するためと、理想的なテンションを得る為にヘッドの角度は大きいです。ナットと弦との接触面を増やすことにより、ゼロフレットより上で共振することを防いでいます。その他、ネックはデタッチャブル方式のスライドジョイントを採用し、ヘッド下からヒール部まで、均一の厚みになっており、ネック材の質量を全ポジションを通じて限りなく均一に近づけています。これにより、高音部のデッドノートが解消され、また、エレキから持ち替えたプレーヤーも、違和感なくプレーできるメリットを持ちます。


インレイはあっさりとしたなかに機能美を感じさせるもの。付属のカールトンケースは非常に重たく、「普通のケースをつけてくれ!」と叫びたくなるようです。飛行機にギター乗っけることなんて一生ないよ・・・。