3.ボディ 


MK35 トップブレーシング(ブリッジ周り)
(ブリッジの真裏をがっしりとしたTTバーが通り、その周りに放射状にブレーシングが貼られている。短いものは全く支えにはなっておらず、音色の為に貼られたトーンバーであることがわかる。写真右上の端に見えるのがPPバーで、高音の周波数が強調されるように仕切る為のブレーシングperimeter barで、他のトーンバーと違った役割を持っている。一番手前がWAST BARである。これはカーシャのブレーシングパターンによってはないものもある。)


MK35 サイドの割れ止め      MK53サイドブレース


「マークシリーズの歴史」でも触れましたが、トップブレースは有名なカーシャ・ブレーシングです。弦振動をブリッジからトップ板に効率よく伝えるためのブレーシングであり、カーシャ理論の中核でもあります。MKシリーズはbrightness,brilliance,balance,power,wide dynamic range、全てを兼ね備えたギターであると私も思います。もし、この特徴ある音色を使うプレイヤー達が現れていたらアコースティックの主流になっていたのかもしれません。
トップブレースの特徴としては、
・ブリッジプレートを中心に細かなトーンバーを放射状に配置していること。
・高音側のブレーシングを低音側より増やして細かく仕切り、高音側で高周波を、低音側で低周波を強調していること。
・構造上、補強の為のブレーシングとトーンバー、しきりの為のperimeter barとに比較的、明確な役割分担されていること。特に、ブレーシングの形状が、その役割によって違っている。(MK35トップブレーシング・写真参照)
等があげられます。
私のMK53には、がっしりとした多くのサイドブレースが貼られています。形状もまるでクラシックギターを見るようです。
カーシャ理論では、クラシックギターと同じくバックを第二のサウンドボードとして考えており、その発展として、クラインギター等のバック・サイドにあるトーンバーが位置付けられます。
私のMK53を始め、初期のMKのサウンドホール上部には、「ブロックフレーム」と呼ばれる特に頑丈なブレーシングがあります。これは「限られた弦振動エネルギー」を効率よくサウンドホールから下のボディトップに集中させる為の工夫です。トップの振動を バックに効果的に伝える役目を兼ねているとも言われます。
ただ、製品版のMKシリーズのほとんどが、一般的な布製の割れ止めになっていることと、初期プロトのほとんどがスクエアーショルダーの一般的なボディで実験されたことから考えると、サイド・バックに関して、それほど影響のあるものとは考えていなかったようにも思います。
MK53をリペアして下さったリペアマンの方も、「作る側」としては特にサイドは影響のでる部分とは考えにくいという指摘をされています。ソモギも、サイドは「固定されている部分で振動はせず、バランス上、バックと同じ木を使っているが、違っても影響ない」とまで言っています。
製作家の大屋建さんにお伺いした所、考え方として、サイドはちょうど太鼓の胴にあたり、がっしりとしているほうが、エネルギーのロスが少ないのだそうです。
ボディシェイプはクラシックギターを大型にしたものです。ボディの厚さもドレッドノートより深くとり、容量を増やしています。但し、クラインによると、「ボディの厚みはさして重要なことではない」とマイケル・カーシャに教わったそうで、MKとのはっきりとした違いがでています。クラインによれば、胴の厚みが必要以上に深いと高音が出てこなくなるとのことです。クラインギターでは低音を出す為にトップ面の大きなボディを採用しているそうです。
実際に音色を聞くとやはり「全く別のギター」ですね。マークシリーズは優しい高音。クラインのは、歯切れや粒立ちのよい高音と感じます。
キソクラインは、ボディ形状もブレーシングも全く違うのですが、音量はやや小さいものの、マークシリーズに音色がよく似ています。これらを見るにつけ、音作りにはいろいろなアプローチがあるものだと感心させられます。