1.ヘッド


    
MK72ヘッド       MK35ヘッド       MK53ヘッド

マークシリーズのヘッドは、ブリッジの意匠に合わせた耳張りのある5ピースヘッドです。ピックガードやロッドカヴァーとともに「M」のデザインを意識しているものの、これは、理想的なヘッド重量を調整するのに、とても都合のいいシェイプです。「M」のとがった部分の間隔を開いたり、曲線の曲げ方次第で自由に質量調整できる形です。もともとリチャードシュナイダーの個人製作ギターのヘッドの意匠だったものですが、彼の意図が感じられる部分です。
また、マイケル・カーシャはヘッドやネックに重りを埋め込んで、音にどんな影響がでるのかも実験しています。
耳張りのある形は近年、採用するビルダーも増えていますが、弦の引っ張り角度が中音弦でも小さくてすみ、ナットがスムーズになるメリットがあります。
MKシリーズのペグは、ヘッドが薄いために飛び出している、という意見もありますが、私はそうは思っていません。明らかにテンション調整をしていると考えています。その理由は、

1.私のMK53のペグはヘッドに合わせたものになっており、MK53が1975年2月製造(発売は’75末)という時期にも関わらず、その後のギターにわざわざ長いペグを取り入れていること。

2.これまで確認したほとんどのMKシリーズが、ヘッドを横から見ると1〜6弦まで弦がぴったり重なって見えるものが多い。これは、「ヘッドの角度」でなく、各弦の曲がる角度を調整したと考えるほうが自然。指板の厚さの分、ペグポストを高く設計されているように思える。(但しMK81はつき板の厚みのため、調整のうまくできていないものが多いです。81のつき板の付け方は、作業上のミスである可能性が高いです。テンションを緩くしようという意図は、はっきりと読み取れますが、マークシリーズの売れなかった一つの原因とも思います。)ちなみにMKではないが、私の持つリーチショーモデルは、ヘッドの肉厚の調整により1・6弦、2・5弦、3・4弦のペグポストの高さが約0.5mmづつそろって変わっている。横から見ると、やはり1〜6弦まで重なって見える。

3.MKシリーズは、ブリッジ側で、明らかなテンション調整をしている。にも関わらず、ヘッド側での調整がされていないのは不自然。

マークシリーズは、弱いテンションで充分に鳴るように設計されたギターだと思われます。シュナイダーは、スチィール弦のクラシックギターを作りたかったと思われるふしがあり、その為にはプレー上からもダイナミックレンジを広く取る意味でも強いテンションを避けたかったのではないでしょうか。
もっとも、ヘッドの厚さはつき板の厚みを差し引くと、マーチンの標準の設計と1mmも違いがないので、一見何mmも飛び出して見えるペグも、ほとんどかわりがない、とも言えます。

  リーチショーモデルのヘッド
1・6弦のペグポストが一番短く、3・4弦のペグポストが
一番長い。横から見ると、まっすぐにそろっている。
ヘッドの肉厚を調整してある。