【トルボナス図】

【アントニオ・デ・トーレスSE60サウンドホールロゼッタとヘッド】

トルナボスは、ギターの表面板に開いたサウンドホールにはめられた金属性の円筒です。 (製作家により紙で作られたギターもあるそうです。)
ロマニリョス著の「アントニオ・デ・トーレス」には、トルナボスについて、次のように述べています。
「トルナボスの導入は、クラシック形態を変えることなく、ギター楽器の限られた音量を増大させる為に、19世紀に工夫された多数の新案の一つであった。」
「ギター重量の明らかな増加を別にすれば、この装置は楽器内部に隠されていて楽器の伝統的なサイズを損なうことなく音響の振動巾を増強させようとする製作家の実直な試みを示している。音量の増加は明らかだが、当時の現存する多数のギターには同種の例が発見されていないことから、この装置は、他のスペインギターの製作家たちには大して好まれなかったようである。」
「『トルナボス』という用語は、文字通り『方向を変えられた声(turned voice)』を意味し、それ自体でギター製作における真の目的とした役割への手がかりを与えるに十分明白なものである。それは主として、声(即ち音)を恐らく共鳴空間の方向へ反転させ、再度振動をもたらす結果として、余韻を長引かせるものだった。」
「トルナボスを備えたギターが暗い音色を獲得することには疑いがなく、そうした音が、うつろな箱や洞穴のようなものから発しているとの印象を与える。」
トロナボス装着のギターの欠点として、音に指向性を持たせたことで奏者に心地よく音が聴き取れないことや、高音が不明瞭になることが挙げられるようです。 トーレスは、トルナボスの長さを変えたり、接触面を工夫したりといろいろな試行を繰り返したものの、後期作品のほとんどから姿を消したようです。
ですが、一方で、20世紀初頭まで、一部の製作家たちは、時折、トルナボスを組み込んだギターを製作していたようです。
金属など、材質による変化について、この本では言及していません。 もともと整流・位相の問題ですから、質量が同じくらいなら、材質による変化はないのかもしれません。
ですが、まだまだその効果には不明なことも多い装置でもあります。