おでん汁
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掲載日 | 1998年12月14日 |
情報提供者 | AKILA |
「おでんの汁ください」 「え?」(・・? 時間は夜の10時過ぎ。 一見学生風に見えるその男は・・・やっぱりどこからどう見ても学生だった。(^^;) 「汁?」 「はい。汁です。」 私は一瞬自分の耳を疑い。再び少年にその疑問をぶつける。 「汁・・・だけ?」(゚O゚; 「はい。」 そう、彼は真剣だった。 しかしながら、いつの世も少年の純粋な思いは、往々にして大人達の作った「常識」という社会のルールによって踏みにじられるものだ。 「いや、おでんの汁も一応商品だからね〜。ちょっとあげるわけにはいかないなぁ。」 私にも立場というものがある。分かってくれ! そんな私の心を知ってか知らずか、なおも少年は食い下がってきた。 この少年にとって、おでんの汁とはそうまでしても手に入れたいものなのか。 昨今おでんを買いながらも「あ、汁いらないよ」という人や、おでんを食した後に汁を捨てる人が増える中、それを代価を支払ってでも手に入れたいというのだ。なんと感動的な少年だろう。 感動。そう、それは正に心を動かされた私を表現するのに、最もふさわしい言葉である。 私は自らの狭量を恥じ、少しだけ微笑むとおでんの容器を左手に、そして右手にお玉を持った。
そう言ったときのその少年の嬉しそうな顔を、私はきっと・・・忘れることはないだろう。 |
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