上を向いて


空がねぇ、青いんだよ。
まったくよぉ。

嫌んなるぜ。こんなに苦しいのに、世間は夏ってヤツよ。
しかも今年は酷暑だってさ。
東京の気温は観測史上初、なんて言われてる。

なのに、どうも。

昔の夏のほうが暑かったような気がするんだなぁ。


夏を。
4人で、いったいどれだけ乗り越えてきたんだろう。
そしてこの先、一人で乗り越えて行くのか?

「寒ぃ時期よりマシだったかな、確かに」

酷暑だとか言われてる今年の夏を、時折こうして肌寒く感じるのに、これが冬だったら凍死してたかもしんねぇぜ。

オイラはともかくよ。
アニーなんてアレで凹みやすいしなぁ。
エマは寒がりだし、特にだな。
ロビンのヤツは・・・・あー、あいつは1年中いつでも穴堀りやがるか。

あ・・・。
ふと可笑しくなっちまった。
俺たち、もう一緒にいないのに。
なのに俺、どうしてもなんか考えるとき、4人いっぺんに考える癖がついてんだな。


本当は決断したくなかったあの知らせが、何日か前に公になって、一部ではみんな混乱してる。
お前ら、今、どんな気持ちでそれを見てる?


「うぉーい!どうしてやがるよ、オメェらよ!」


振り仰いだ空に向かって大声を出す。
一緒に上ろうって言ったじゃねぇかよ。あの高いところによ。

道は別れてしまっても。
俺たちが戦友である事実には変わりねぇんだぞ?
そこんとこ、いつまでも忘れんじゃねぇぞ。なんかあったら連絡してこいよな!

・・・なんて、胸のうちで話しかける。
どうしたって生きていかなゃなんねぇんだから、オイラは上を向くぞ。
上を向いて歩いてく。
オメェらも俯いてんじゃねぇぞ?いいな?

頭上では、真夏の太陽が、ステージライトのように燦然と輝いていた。




ひーせおやびんの咆哮。なんか、これはありそうだな。

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