尻尾 |
吉井和哉には尻尾がある。 それは、よく下世話な話のときに比喩されるような某ではなく、文字通り本当に尻尾が生えているのです。 どうも。アニーこと菊地英二です。 ここまでの前フリで既に皆さんお判りの通り、それは気分によってピンと上を向いたり毛が逆立ったりするネコの尻尾です。 吉井和哉という男は、あれで感情を隠すのがヘタクソなので、俺たちTHE YELLOW MONKEYのメンバーは苦労が絶えません。 顔では冷静なフリをしていても、尻尾が全てを物語ります。 あ。 ほら、今も。 音楽番組の演奏前のトークで、いささか面白くない話題を振られました。 生なので編集はききません。吉井は顔ではにこやかに笑っていますが、既にご機嫌ナナメです。 ほら。 にょきっと出てきた尻尾が怒りを込めて毛を逆立てています。 やばいです。 以前、ライブ中に怒りの尻尾が出てきてしまい、俺たちが止めるまもなくキレキレのトークを繰り広げ、お客さんを激怒させたことがあります。TVでそれはまずいです。 こんなとき、宥める方法があるだろうって? いやぁ、皆さんよくご存知。 特効薬があるにはあります。 でもその特効薬はとても気まぐれな効力しか発揮しません。 特効薬は・・・今、吉井の隣にいるにも拘わらず、あさっての方向を向いています。 特効薬ことウチのお兄さんは、今現在、司会者のナナメ後ろに立っている新人アイドルのおねえちゃんに流し目中です。 そう。吉井の怒りの尻尾は、むしろそれが原因で逆立っているのです。 早くトークを終わらせて演奏に行ってしまいたい。そして、終わったら即拉致って、うちのお兄さんがお姉さん方に色目を使う暇を与えない気満々です。 けど、失敗しそうですね。ウチのお兄さんはそういう横暴な扱われ方は嫌いです。 このぶんでは吉井は本番が終わるなり躍起になってエマを連れて帰ろうとして、その気配を察知した兄貴に冷たくあしらわれることでしょう。そんな喧嘩は週に一回くらい見ています。 ああ・・・しかし、だからって。大の男がそんなに不機嫌に、尻尾を逆立ててどうするのでしょう。 漸くトークが終わりました。俺たちは急いでステージセットに移動します。 「みっともない・・・」 俺の横で、ヒーセがぽつっと言いました。 まったくです。 「だよねぇ・・・あの尻尾、ホントなんとかなんないのかなぁ」 俺が同意すると、ヒーセは何故かげんなりと俺を睨みました。 「オメェだ、オメェ!」 「え?俺?」 予想外です。 「オメェの尻尾だよ!ったく、エマと吉井がちょっとでも雰囲気よくねぇと、あからさまに嬉しそうに尻尾振るのやめろ!」 忘れてました。そう、俺にも尻尾があったんでした。 ウチのバンドのメンバーには、全員尻尾が生えてます。 吉井にはネコの尻尾。 俺には犬の尻尾。 ヒーセは金色に輝く狐の尻尾。 どれも感情をあらわに、ぱたぱた揺れたり。 もう一人、イマイチ本心が読み取りにくい兄貴の尻尾は、大きな丸いウサギの尻尾。 唯一の草食獣に、俺たちはいつも振り回されっぱなしです。 でも、間違えてはいけません。 一番獰猛なのは、実はウサギの尻尾の持ち主です。 あ、ほら。 あからさまな吉井の拉致作戦に勘付いて。 ほら、殴った。 ヒーセが俺の横で深い溜息をつきました。 俺の尻尾は、また嬉しそうに、ぱたぱた揺れてしまうのです。 end |
なんだこれ、なんだろう、この作品(笑) 本当は吉井は犬の尻尾、エマがネコの尻尾のほうが似合うと思うんだけどな。 はっ!誰も猿の尻尾を生やしてない! |