電話


もしもし・・・あ、エマ?
俺。
うん。久しぶり。元気にしてた?

んー・・・うん。結構忙しい。やっぱりねー、一人だと、思ってたより大変。
そうだね。…あはは、ちょっとだけね。
でも、充実してるよ。大丈夫。

何してたの?平気?
えー?優雅だなぁ。
なに、最近映画ばっかり見てるの?
ああ、はいはい。連載の記事用ね?そういうことにしておいてあげましょう。

っく・・・あはははっ
ごめんって。

そういえばさ、ヒーセの、聞いた?
だよねー、趣味丸出しだよね。いや、そうなんだけどさー。
え?俺のも?
えー?そうかなー?・・・そうかも。・・・そうです。

そんな笑わないでよ。酷いなぁ。

んー?
うん。
うん。
へぇ、そうなんだー。アニーも頑張ってんじゃん。

そうだ、この間ね、ラジオで地方行った時に、Yさんに会ってさ。
うん、エマのこと聞かれたよ。
何てって?
映画ばっかり見てますって言っといた。
ホントー?だってエマ、映画の話ばっかりしてるじゃん。・・・・あははは、ごめんってば。


うん。
知ってる。ごめんね?
だって言えなかったんだもん。会ってないって。
―――判ってる。俺が言い出したことなんだってことは。
うん。
・・・・泣きそうな声になんないで。ホント、俺が悪いの。ごめん。


え?
いや、その・・・。
用っていうか。


あのさ。
やっぱり限界だって言ったら・・・怒る?
・・・・・・・・・怒るよね。ごめん。

待って!切らないで。

もう少し、声・・・・・・聞かせて。



うん、雨だね。
・・・・・・・・・・うん。降ってる。小雨だよ。

・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。

なんか話してよ。
あはは、そうだね。変だね。

ん?今?
車の中。
運転はしてないよ。ホント。平気。



―――――――エマ。
エマ、エマ。


ごめん。正直に言う。
もうダメなんだ。気が狂いそう。
あんなに泣かせたのに、今になってこんなこと言いだしたら、軽蔑されるかもしんないけど・・・。

我慢できなくなって・・・。

窓、開けて。





だって、こうでもしないと会ってくれないから。


やっぱり、ダメなんだ。
別れるなんて、できない。
どうしても、あんたのこと・・・好きだから。



愛してる。


抱きしめたい。


ピッ----------------------------------------ツー・・・ツー・・・ツー・・・。




『別離』の約束を破って繋いだ見えない電波の糸。

切れた瞬間、
駈けてきたアナタを腕に抱きしめた。

それは、デジャヴュのような、ひそやかな霧雨の夜。



end




何なんでしょうねぇ、多分、休止直後に一回別れたっていう設定なんだろうなぁ。

back