デジャヴ~キズナを書くにあたって



本当は前書きなんて不要なんだけれど、作品及び、私の思想について誤解されたくないと思ったので、すこしくどくどしく書きます。

2001年1月8日  東京ドーム公演後、THE YELLOW MONKEY活動休止。
2004年7月7日  THE YELLOW MONKEY解散。
2004年8月2日  公式発表。
2004年9月1日  ROCK JETにて、エマの解散インタビュー。
2004年9月30日 bridgeにて、THE YELLOW MONKEY 解散ソロインタビュー。

これがこの解散劇の間の、一連の流れ。
公式発表寸前にウラネコのお客さんたちと会ったとき、「早く帰ってきてよー」なんて言ってたのに、彼らはそのとき既に終わっていたことを8月に知らされ、恐ろしいほどのショックに、上っ面はヘラヘラしてても正直、心臓が苦しくて、今までに類を見ないほどの極限スランプな感じに悩み、CDは聞けてもビデオは見れない、特にライブビデオは・・・って状態に苦しみ(結構アップしてたけど、本当はかなりどれも消化しきれてない文章なんだ。ネタはいいと思うものはいくつかあるんだけどさ)、私生活においてもずっとものすごくマイナーだった今年の夏。はっきり言うと、あの公式発表以降、いつも私は心から楽しくなんかなかった。そんで、もういい大人がそんな自分の生活に直接影響してくるでもない、好きなバンドの解散ってだけでそこまで影響されてんのかと思うと、そういう自分が心の底から情けなくて大っ嫌いだった。
公式発表の際のメンバーからのお知らせは、本当に簡略な、紙切れ一枚。その少ない文字数の中からも、恐らく解散を言い出したのは吉井で、エマは納得しないまま、ヒーセとアニーは「仕方ねぇな」って感じなんだろうと見て取れた。
次いで発売されたJET。これはエマだけのインタビューで、彼がすごい弱ってるんだなと感じた。音楽活動の存続さえも心もとないような話の終わり方に肝が冷えた。エマはそのインタビューで「最後にみんなで何かを演奏したりできなかったのが残念」と言ってた。3年も集合してなかったのに、一緒に演奏することもなく、数時間の話し合いだけで解散するなんて、これはもしかしたら、あの仲の良かったバンドが、もう修復不可能なほど不仲になってしまったってことなんだろうか・・・と、心底悲しくなった。なのに、この期に及んで「みんなが吉井を悪く言うのって違うと思う」とか、エマは吉井をまだ庇っていて、それに同情するのと同時に、なんか歯痒かった。だってあんた、解散したくなかったんでしょ?なのにあの男はあんたらを捨てたってことじゃないの?って。 
そう。私は、恐らく「吉井VSエマ」なんだろうと思ってた。そこに何らかの亀裂があって、それが全員の不仲に繋がったんじゃないだろうか、って。もしくは、3対1で吉井と対立?ヒーセVS吉井?アニーVS吉井?それとも誰かと誰かで2対2?何にせよ、もう仲は悪いんだろう・・・と。

けど。

bridgeのインタビューがあった。
実は、読む前にRAYちゃんにネタバレしてもらった。(多分それが無かったら、怖くてまだ読んでなかったかもしれない)
「吉井とエマ、とりあえずまだ一緒にやるんだってさ」。

正直な最初の感想。

「――――――はぁ?(呆)」

だってそうでしょ。なんだそれって思うでしょ(苦笑)
本当に馬鹿なんじゃねぇかって、最初真剣に呆れた。
まぁ、それから喧々諤々と猿語りをしてたわけだけど、そのあと、bridgeを読んだ。

単純に流れだけ言うと、こうだ。

吉井から、やっぱり解散を言い出した。エマは納得してなくて「なんで解散なんだよ」ってモードだった。ヒーセは本当はまたイエローモンキーがやりたくて、だけど吉井がもうできないって言うんなら・・・と受け入れた。アニーはこの休止中、この次イエローモンキーをやるときのことを考えて叩いていたほどだったけど、全員の意見が揃わないなら、と諦めた。
と、まぁ、ここまでは予測してた通りだった。
けれど、誤算もあった。

4人とも、全然仲悪くないの。むしろ仲良しなの。
もしかしたら、休止に入る直前くらいの頃より、お互いのことを考えてるっていうか。
このままのイエローモンキーじゃいけない。でも、イエローモンキーっていう枷があると、みんなそこに依存して、誰も思い切って次の段階に踏み出せない。だからもう解散するしかない。みんなで成長するためには、それしかない。だって4人とも、メンバーを信頼しあっていて、お互いに大好きだから。それは、解散を言い出した吉井も勿論例外ではなく。
インタビュアーの渋谷さんも指摘したとおり、なんて判りにくい解散。
吉井の発言は、ずっと「俺が悪いんです」だし、他の3人は「吉井をもっとフォローできなかったのが悔しい」だし。バラバラにインタビュー受けてるのに、みんな同じこと言ってる。

変な人たち、と思った。
そしてそんな中で、吉井からなされた発表。

『実はエマとは(吉井の)ソロの1stアルバムのレコーディングの時とかも会ってて、2ndアルバムでは2人いるうちのギタリストの一人として参加してもらってる』
『来年考えてるツアーには、エマも一緒に来てもらうつもり』
『僕はエマを連れていって、一緒に苦汁を舐めてもらおうと思う』

・・・・なんだそれ。
それじゃあまりにも、ヒーセとアニーが可哀想じゃねぇか。しかも、休止中に目に見えて前進していたとすれば、それはヒーセだろう。吉井本人も発言していた通り、「3年も休んでたから、エマも病み上がりみたいな状態で・・・」って、それじゃあんたが求めていた状態と違うんじゃないのか、って思った。だから「なんでエマなんだろう?」ってなったのは当然だと思う。しかもレコーディングから参加してたんなら、解散する前じゃないか。だったら、あのJETでのエマの憔悴っぷりは何なんだ?

エマもエマだ。

『一人のものをやる前に、誰かと一緒にやりたいと思った。それが歌を歌う吉井和哉なら万々歳』
『二つ返事で受けた』

・・・おまえら、何をノロケあっとんねん。と、思ったことに反省はしない!(笑)
実際、吉井のインタビューではなんせずっと「エマが」「エマは」「エマと」って1ページでどんだけエマ言うねん、ってほど、エマのコトばっか話してる。今までは、特にここ近年、活動中でさえもエマのことはあまり言ってなかった吉井が、こんなにエマエマ言ってんのは珍しい。エマのほうも、解散の話はあれど、あの記事は殆ど『吉井について』だ。渋谷さんの意向もあるんだろうけど、吉井に至っては前半殆ど相槌のほうが多かったようなインタビューが、エマについて聞かれるとものすごく饒舌にどうでもいいことまで話し出す。

ロビエマ派としては、確かに嬉しいといえば嬉しい展開ではあれど、はっきり言って納得できずに他のメンバーもろとも、あの二人に置いていかれた気分になった。だから最初、素直に喜べなかった。

でも。
だけれども。
ここ数日で、私はbridgeを多分10回以上読んだ。昨夜に至っては、JETと並べて合わせ読みした。
そして他の人と話したりしてて、やっと自分の中で、それらが立体化してきた。

最初、あまりに衝撃的だったその不意打ち発言に幻惑されて、ヒーセとアニーが可哀想で仕方なかった。エマを選ぶんなら、ベースとドラムがあの二人で、何が不満なのよ?と。けど、何回も何回も読んでるうちに、なんでエマなのか判ってきたような気がした。それは、吉井やエマのところだけを熟読してたら思いもしない部分だった。

吉井は、イエローモンキーが大好きだメンバーを心から信頼し、愛している。
けれどあの時、彼が誘うことができたのは、エマだけだった。その理由は、精神論なんじゃないかと思う。
彼らはプロだ。
だから、いくらエマが病み上がりみたいな状態だったとしても、そんなものは打破して当然で、問題なのはテクや向上心なんかじゃない。そんなものは存在して、そして努力して当然なんだから。

じゃあ、なんでエマなのか?
むしろ、問題は依存度というか、遠慮心のようなものなんじゃないだろうか。
なんでそう思うかっていうと、本当に音楽性の違い、やりたいことが違うんなら、言いだしっぺの吉井に至るまで、あんな未練たらたらの解散になるはずも無く、再結成の可能性を仄めかしたり、本当はイエローモンキーやりたいと思ってた、なんて解散後のインタビューでまでメンバーが口を揃えて言わない筈だ。いい大人なんだから。いくらメンバーのことが好きでも、一人くらいは「仕方ないですよね。やりたい音楽が違うんだから」って言ってる筈だ。
でも、誰もそんなこと言わない。だからこそ、精神論なんじゃないかと思う。

たとえば、解散のときに於いても、「嫌だけど、吉井が言うんなら仕方ない」って受け入れたヒーセとアニー。だけどエマは「解散は嫌だ。納得できない」と抵抗した。結果的に納得したらしいけど、解散直後はやっぱり納得できてないような雰囲気で、それがJETの記事をああいう憔悴したものにさせたんだろう。そして、吉井が必要としたのは、エマのそういうところなんじゃないのかな。
ヒーセは外を向いて、精力的に活動をしながら、それでもミーティングの話が来た時に決めたというとおり、「もし吉井が解散というなら受け入れよう。バンドの創生者である吉井の話なら受け入れるよ」という姿勢で、アニーも「みんなの意見が揃わないなら・・・」という姿勢だった。でもエマはJETやbridgeで言ってたみたいに、「意識の持ち方を変えれば、違う結束ができるんじゃないかと思ってた。そうできなかったのは残念」と、明確に自分の意思を打ち出し、吉井の意向だから受け入れる、という姿勢は示さなかった。
メンバーは休止中も解散後も会ったり、連絡とったりしていて(吉井とアニーはそうでもなかったらしいけど、事務所を通じてどうしてるかは知ってたみたいだし)、会話の中にはこの解散劇の伏線が、それこそ無数にあったと思う。その中で、吉井はエマがすっかり自立してることを感じたんじゃないかな。他のメンバーの中にある、自分への遠慮っていう枷を既に取り払っている、と。
だからこそ、吉井はギタリストとしては自分にとって最良と思えるエマには声をかけることができた。(実際吉井はソロを始めるときに、バンドメンバーとして、イエローモンキー以上の人たちなんて考えられない、と発言し、実際1stは生ドラム以外全部自分で演奏しちゃってる)。既に完全に対等に立っているから。

フロントで、メインコンポーザーの吉井の、今まで背負ってきたプレッシャーって、想像できる範囲を超えてると思う。音楽的なものだけじゃないだろう。あれだけのビッグネームになったバンドを背負ってれば、当然ながら常に前作以上に売ることを考えなきゃいけない。けれど『SICKS』、シングルの『BURN』『球根』の頃を頂点に、売り上げは思うようにいかない。そして彼は一人でそれを背負い込む。そして、だからこそメンバーは彼への遠慮が先に立つ。そんな悪循環な経緯が崩壊へ向かわせたんじゃないだろうか。そう思えば、ソロになった途端、自由に詞が書けるようになった、という吉井の言葉にも納得がいく。(at the BLACKHOLE特典DVDより)

THE YELLOW MONKEYは、既に吉井一人で背負いきれるような存在ではなくなっていた。遠慮と信頼だけじゃなく、完全な同列に立って、一緒に苦汁を舐めてくれる人が、彼には本当は必要だった。そして休止を決定した当時、それはエマを含め、メンバーの中に、誰も居なかった。
そして今、完全に自立しているエマと、吉井は一緒に苦汁を舐めてもらいたいと思ったんじゃないだろうか。
今度は同じバンドのメンバーというわけではなく、エマはあくまでサポートだけれど、吉井の発言からは、もっと重いものを感じた。エマにしたって、単なるサポート以上の働きをしなければいけないことは、既に自覚してる。

そして不思議な解散である極めつけは、何故かこの先に4人での活動の希望があることだ。吉井は「今はもうないと思ってるけど」とか言いながらも、随所で再結成も有り得るようなことを言ってる。これは休止中には逆に一切無かった。そして他のメンバーも、解散したことによって、それぞれが自分に足りなかったものに、やっと気付いたって感じがある。何より、人間関係はまったく抉れていない。だからみんな何となく4人での未来図を夢想してる。そりゃ、いつか誰かがもう一度『運命のバンド』と出会うことがあって、過去に囚われるのでなく、新しいバンドと骨を埋める覚悟なんだっていう心境になったりしたら、再結成というのは夢に終わるかもしれないけれど。(その可能性を含めて、特に吉井は『再結成はないと思う』って敢えて言うんじゃないかな。下手人を引き受けてるくらいだし、もうメンバーを縛りたくないんだろう。そうじゃなきゃ解散する意味がない。)だからヒーセもアニーも、ちっとも可哀想なんかじゃないんだ。ここから何かが始まる気がする。解散して初めて、やっと今から休止するんだっていう感じだった。だからもしも次の機会が生まれたときには、本当に最上のイエローモンキーという姿が、不安だったここ3年半よりも、もっと明確に描けるようになった。そして本当にそんな日が来たその暁には、本当に取り返しがつかないほどすごいバンドになるんじゃないか、って。

と、まぁ、これが私のノーマル視点での私的解釈というか憶測であり、当然ながら実際は違う可能性は高い。
しかも上記の思想からは、これから書く私の作品は少しずれると思う。だけど、それはあの二人がいけない。特に吉井さん、今度ばかりは全面的にあなたの所為にさせてもらいます。さっきも書いた『僕はエマを連れていって、一緒に苦汁を舐めてもらおうと思う』も相当だけど、
レコーディングに参加してもらったときは「あのエマが俺の曲を完全にコピーしてやってきたし、遅刻もしなかったし。なんか嬉しかったですね」とかさ、ノロケまくってたし、
ツアーにエマを連れてくつもりっていう発言での渋谷さんとの遣り取りに至っては、
***
渋「ツアーに参加してもらうつもりというのは)それはエマにも言ってあるの?」
吉「言いました」
渋「彼はなんて言ってる?」
吉「まあ、『ぜひやりたい』って」
***
って、おい!プロポーズしたんかオマエは!ってノリだし(笑)
「彼女と結婚しようと思います」
「え、マジ?それってもう言ったの?」
「言いました」
「彼女はなんて?」
「まあ、『是非したい』って」
って遣り取りと、何がどう違うんだ!言いながらの吉井の照れ笑いが目に浮かぶわ。
そして極めつけは吉井のインタビューのシメだよ。
「この間遊びに行って話したんですよ。『エマ、今度インタビューあるから、もう俺のソロで弾いてることも、シングルで弾いたりアルバムで弾いたりもしてるから、今までは喋んないとかそういうのやってたけど、もう言おうぜ』って。(省略)・・・っつったら『わかった』って。うん、だからこうやって話してるんですけど」
って・・・この際二人の仲をオープンにしようというのですか(爆笑)。しかも、遊びに行ったんですね。仕事では無く。(そしてこここそ、「遊びに行ったなんて言わなくても、会ったでいいじゃん。つっこまれるよ、吉井~」と、私は思った。あーあ、何して遊んだんでしょうねぇ、彼らは・笑)
そしてエマも、なんか解散発表の文面では「吉井のあほ。裏切り者」としか読めなかったけど(あれはやっぱり自分は既に吉井とやってんのに、なんで今更解散なの?って混乱もあったのかもなぁ)、今回はどう自虐目(?)に見ても「俺はやっぱり吉井和哉がいいんです」としか読めなかった。わかった。だったら恋愛込み解釈も作ってやろう!っていう勢いで創作してみたわけでございます。
(っていうか、今回で本当に、「この人らの信頼関係ってヤツは、本当に恋愛に近いものがあるな」と痛感したし)



だから、安心してラブストーリーを作ってみました、ということです(笑)
あんなシリアスなインタビューで堂々といちゃつかれたら、こりゃロビエマ作家としては黙ってられないでしょ(笑)

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