テーブルの真ん中で、今を盛りと咲き誇る大輪の薔薇が、誰かからのプレゼントであることを証明するように、隅っこのゴミ箱には淡い色の薄紙と、透明なナイロン、何本かの細いリボンが捨てられている。

部屋の中は、ひんやりと寒い。

そんな空間で、エマはうっすらと額に汗をかいていた。

ぎゅっと目を閉じて、痛みか苦いものを堪える表情を隠さず。
エマを苦しめてる言葉を放った俺のほうもまた、耐え難い苦悶を味わっている。

泣かせるのも、苦しめるのも嫌い。
エマには、こういう大輪の花か何かを捧げて、嬉しそうに微笑んだ表情が似合う。

だけど。

「・・・厳しいこと、これからも言うと思う」

あなたは、甘やかされるだけで、いつしか枯れていく花であってはならないから。
冷たい風も、灼熱の苦しみも、全部その身に受けて立てる人だから。
周囲の讒言や心無い流言になんか、絶対に心を動かされないで。

痛みは、俺があげる。
必要な痛みを、きちんと俺があげる。

「だけど、それは判って欲しい。ちゃんとエマと向き合うためのことだから」

飾られた大輪の薔薇は美しい。
でも、それは俺が心底欲しいものじゃない。

それよりも、俺はもっと。
深いところで、あなたの。
無邪気な仮面の奥の、ドロドロした情念の、更に奥にある、コットンのような無垢な『中心』に潜入したい。

「・・・ごめんね、吉井」

心弱った風情のエマの声は、まだあまり耳に馴染んでなくて。
胸が痛むけれど、それはある意味、『中心』に辿りついたということ。

「あんま、今まで・・・ちゃんと、考えてなかったね、俺」
「エマ」
「偉そうなこと言ってもさ、まだまだだなぁ、俺」

少し寂しそうに見える、その笑顔と、冷静を装った声と。
それから、あなたの中に滾る、熱いのを、俺にちょうだい。

「大丈夫だから」

距離を置いていた、ソファの対面から、エマの隣に移動して、項垂れる髪を撫でる。

厳しいことは、もう言った。
だから今度は、あなたに甘い劇薬をあげる。

必要な甘味も、全部俺があげる。

「ちゃんと言いたいこと言い合ってさ、やってこう?俺ら」
「・・・・・・・・・いいのかな」
「いいんだよ。気に入らないとこもあるでしょ、エマだってさ、俺に」
「まぁね」
「でしょ?全部好きだったら、どこが一番好きなのか判らないじゃん」

うん。
って、頷く仕草は、とても好きだよ。

薔薇には棘があるし、桜はすぐに散ってしまう。
それでも人が花を愛でることをやめないように、俺はエマが好きだよ。

「誰かになんか言われても、気にしないで。俺のことだけ信じてよ」

あなたはあなたのままで。
無理に自分を装わないで。

大丈夫。
俺はいつも、傍にいる。




end





これさ、意味わかんないよね(笑)
いやさ、吉井がエマんちに行ったときに、「エマのこういうところが嫌い」とか「これからはこういう厳しいことも言うと思う」とか話し合って、そんで一緒にやってるってのをちょっとどっかで読んでですね。
あー・・・なんか、『NATURALY』の歌詞みたいだなぁって思って。空想の翼が広がりまして、こう・・・吉井がエマに厳しいこと言って、拗ねちゃったエマを、あの曲のように口説いたとかだったら面白いなぁ・・・と。
ごめんなさい。もう腐り果ててます。

back