お買い物



スーパーでカートとか押して、
「ねぇねぇ、よっちゃん、これ美味そうだと思わない?」
「ばかぁ。ダメよ、まーくん。せっかくよしこがゴハン作るのにぃ。お菓子なんか買っちゃダメぇ!」

とかやってるバカップルだの新婚夫婦だのを、いつも「バカかこいつら」と思って見てた。

なんていうの?こう、オンとオフの区別がないっていうか、ね?
てめぇらは二人の世界でいいかもしんないが、ここは公共の場所だ。暑苦しいんだよ、って。
かっこわりぃ・・・って思わない?
こう、ロックスター吉井和哉としてはさ、一生あんなふうにはならねぇぞ、って!

「っていうか、オマエがそれを言う?」

エマさん、その反応冷たい・・・。

「だってさぁ、一番オンとオフの区別が無いのって吉井じゃん」

そうかなぁ?
・・・はは、そうか。俺なんか仕事にも持ち込んでるもんねー!

「それって威張ること?」

ダメ?エマさん、そういうの嫌い?

「はは。嫌いじゃないけど、カッコ悪いのは嫌い」

カッコ悪いことはしてないよ!だって俺、かっこいいもん。

「じゃあ、自分の今の姿をよく見てみなよ」

俺の姿?

さらっと着流したシャツとグラサンという、往年のキメキメファッションでエマさんが数歩前を歩いてる。でも、その手にはカート。
籠いっぱいに酒やチーズ、サラダやハムなんかを乱雑に詰めて。

俺も久しぶりに柄シャツでキメて、グラサンかけて、二人はよくお似合い。でも、両手にリンゴとアイスを持って、「コレも買って!」と主張中。

「吉井、リンゴとアイスあったら、もうゴハン食べないからダメ」
「食べるよ。ちゃんと食べる」
「嘘。昨日も弁当半分しか食わなかったじゃん」
「だって・・・太るもん」
「今はツアーで体力使ってるんだから、食べないとダメ。だからリンゴもアイスも買わない」
「やだ。リンゴはダイエットに有効だよ」
「だからダメだって言ってんの」
「アイスー!貴重なタンパク質!」
「メシで取るの!そういうのは」

カッコ悪いを通り越して、既に親と子のような情けないやりとり。
今日はステージのあと、打ち上げもハネたが、飲み足りなくてみんなでホテルの部屋で飲むことにしたので、じゃんけんで負けた俺とエマがその買い出しなんだけど・・・。

うーん、確かにカッコ悪いな。
新婚夫婦というより、なんか親と子のようだ。

でも・・・。
楽しいんだ、コレが。

何気なくいっしょにスーパーで買い物してる感がさ!食料品売り場で!なんかこう、手でも繋ぎたい感じで・・・。スンマセン、浮かれてます。
だって流石に、今までこういうのはしたことないもんね。

「ダイエットサプリ、全部捨てたら買ってあげるよ」
「持って来てない」
「嘘だ。カバンの中にいっぱい入ってた」
「いつ見たの」
「昨夜、バスルームにパンツ持ってってあげたじゃん」
「あ、そうか」

最近はエマってば、甲斐甲斐しいんだから♪

・・・って、深夜で人が少ないからって、憚らずこういうこと話すしね。
バカップル丸出しか?

でも楽しいんだ。
一緒にいるのが楽しいんだ。
また一緒にいられるのが、嬉しくて仕方ないんだ。
こんな何気ない雑多な風景の中にも、エマがいる。

レジに向かおうとしたとき、エマが「あ」と小さな声を上げて、雑誌コーナーの前で立ち止まった。
そこには、スーパーなんかには珍しく、音楽雑誌のエリアがあって、俺が表紙の雑誌がひとつ、並んでた。

「・・・吉井、コレも買って」
「いらないでしょ、そんなもの」
「欲しい」
「もう持ってるじゃん」
「ダメ、ここにある3冊とも」
「何でぇ〜?」

エマはふっと悪戯っぽい顔で笑うと、俺をちょいちょいと手招いて、耳元に口を近づけて、心臓に直撃する爆弾を打ち込んだ。



「吉井に関するものは、何でも独占したいんだよ」



見るがいい、世間のバカップル、新婚夫婦どもよ。
こんないちゃつきかたが出来るのは、世の中広しといえども、そういるまい。


俺は赤くなって顔で、黙って雑誌を3冊、籠に滑り込ませた。
ポッキーの箱ひとつ隔てて、その横には、バニラアイスとリンゴが並んでる。



end



本家いちゃつき新婚ツアー(YOSHII-LOVINSON at the white room)記念。
最近の彼らは、妄想サイトに口を挟ませないほどのイキオイで、俺は嬉しいです。5年ぶりのリアルタイム萌えです。それにしても、吉井はダイエットしすぎですね。痩せてるの好きだけど。しかし、エマが一気に激痩せしたのには驚いた!彼のカッコつけとしてのプライドの高さに平伏した。

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