●法話「お墓のリボン」

 若葉に風薫る5月の夕方のことでした。
境内の墓地を見回っておりましたところ、ある家のお墓に赤いリボンと黄色いリボンが供えられておりました。

 一体なんのリボンだろうと近づいて見ました。 リボンには一等賞と三等賞と書かれておりました。

 その日は、近くの小学校の運動会だったのです。 去年亡くなったおじいちゃんのお孫さんがあげたのでしょう。  その子は、大好きだったおじいちゃんに自分が一等賞と三等賞をもらったということを、何とかして教えてあげたかったのですね。  きっと、お墓に供えればおじいちゃんに通じると思ったのでしょう。

 私は、そのリボンをみてその子の優しさに心がほのぼのとし、これがご供養の真(まこと)なんだなあと、感心させられたのでした。

 その子の真心は、亡きおじいちゃんに必ず通じたことでありましょう。

 ご供養の大切なことは、亡き人に対して生きているときと同じようにお仕えすることであります。  ですから、おいしい食べ物を頂いたときには御仏壇にお供えし、一緒に頂く。  うれしいことがあったときには、真っ先に報告し共に喜ぶ。  時には、悲しいこともありましょう。  それも、共に悲しみを分かち合いましょう。

 亡くなられた方は、いつも私たちを見守り話しを聞いてくれております。
 いや、そればかりではありません、亡き人の方からも、私たちに語りかけて下さっているのです。  静かに御仏壇に手を合わせ、亡き人を心から追慕するとき

  打ち鳴らす鐘の音に、亡き人のなつかしいお声を聞くことが出来ましょう !

  揺れ動く蝋燭の灯りに、亡き人の面影を偲ぶことが出来ましょう!

 ご供養とは真心を尽くすことなのです。



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