●法話「勇気ある謝罪」

 私たちは、失敗したり自分に都合が悪いことが起きると、つい言い訳をしたり他人や周りのせいにしてしまうことが多いです。

 ある本屋さんで万引きが起こりました。 万引きをしたのは中学生2人の少年で、店主に見つかり注意されました。

 しかし、彼らには反省の態度が見えなかったことから、それぞれの親に電話をしました。

 一人の少年の母親が慌ててやって来ました。 母親は「どうして万引きなんかしたの、お小遣いはあげているでしょう! 悪い友だちに誘われたの?」と一方的に喋りまくり、店主に謝ることもなく、お金を払って出て行きました。

 もう一方の親は、なかなかやって来ませんでした。 店主は、無責任な親に違いないと思いました。
 だいぶ経ってから、父親がやって来ました。 「大変ご迷惑をおかけしてすみませんです。」父親は子供を叱ることもせず、やがて、「ご主人、ちょっと奥の方へ」と言いました。

 店主は、お金で解決するつもりかと思いました。 ところが、店の奥へ行くと周りに他のお客がいるにもかかわらず、その場に土下座をしたのでした。

 店主も周りのお客も驚きました。 店主の言葉に促され、顔を上げた父親のその顔は、悲しみでゆがみ、涙でぐちゃぐちゃになっていました。 少年も泣いていました。

 さて、この二人の親たち、二人とも子供を愛する気持ちには変わりはないでしょう。
 しかし、母親の場合は、どこか責任を他になすりつけているように思えます。

 一方、父親は、万引きをする子供に育ててしまった責任は全て親の自分にあると、厳しく己を見つめています。

 詩人で書家の「相田みつを」さんの言葉に、「べんかいのうまい人間。あやまりっぷりのいい人間。」というのがあります。
 素直に反省する心を持ちたいものですね。



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