平成16年12月28日 岩手日報「紙上法話」に掲載
大晦日、除夜の鐘の音と共に今年一年間の心に積もった塵を払い、清浄な心で新年を迎えたいものです。 とは言え、 [掃けば散り 払えばまたも塵つもる 人の心も庭の落葉もという歌にあるように、「心の塵」=「煩悩」は生きている限り完全に無くすることは出来ません。 しかし、それに振り回されないようにコントロールすることはできます。「仏と衆生とは水と氷との如し」という言葉があります。 衆生とは煩悩にとらわれて心が氷のようにカチカチになってしまった私たちのことで、煩悩のないサラリとした水のような心をもっているのが仏ということです。 水も氷も成分は同じH2O、 氷った心を溶かして水の状態にすればするほど、仏の心に近づけるのです。 人は一人では生きて行けません。社会や自然、多くの人たちの支えによって生かされております。誰しもが持っている欲を、 自分一人が満足を得るためにだけ使えば、「我欲」となりますが、支えられている事への感謝と自らも他を支えようという事に使うならば、「欲」は「布施」の心に転じます。 自らの心を暖かい思いやりの心で溶かすような生き方、これこそが煩悩をコントロールする生き方に通じるのです。
イラスト:高澤公省 老師