珈琲の二大伝説

１．僧侶シェーク・オマール伝説

アラビアのイスラム教徒アブダル・カディによって書かれた「コーヒー由来書」は、イスラム教説と呼ばれています。
１２５８年、イスラム教の僧侶シェーク・オマールがイエメンのモカで王の怒りに触れ、モカから追放されてしまいました。食べるものも無く、疲れて山の中をさまよい歩いていると、さえずりながら赤い実をついばんでいる美しい小鳥が目に入りました。お腹がすいていたオマールは試しにその赤い実を採って煮出して飲んでみました。すると不思議なことに疲れは無くなり、みるみる元気が戻ってきたのです。
医者でもあったオマールは、この赤い実を用いて病人達を救います。その後、罪を許されてモカに戻ると、コーヒーを発見したことで聖者として人々に崇拝されるようになりました。

２．ヤギ飼いカルディ伝説

もう一説は、レバノンの言語学者ファウスト・ナイロニによって書かれた、「眠りを知らない修道院」にある話で、キリスト教説と呼ばれています。
６世紀頃、エチオピア高原にヤギ飼いのカルディという男がいました。ある日ヤギ太刀がひどく興奮しつづけていて、その原因を探ると、どうやら赤い木の実にあることが分かりました。近くの修道院に行ってそのことをある修道僧に告げると、ためしに赤い実を食べてみようということになりました。すると気分はみるみるうちに爽快になっていきました。他の僧達と赤い実を食べることにより、この修道院では夜を通しての修行中に、僧達が睡魔におそわれることはなくなったということです。

３．エチオピアからヨーロッパ、そして日本へ！

原産地はエチオピア

私達に発見される以前からコーヒーの木はエチオピアの地に自生していました。温暖な気候で雨量が多く、コーヒーのみならず多くの植物が育成するのに適した環境で、今でも野生のコーヒーの木を見ることが出来ます。記録に残されているものより前に、すでに人々に食べられていたのかもしれません。
アラビアでは、疲労回復や薬用としてコーヒーの実をそのまま食べたり、発酵させてお酒にして飲んでいました。アラビアの医師ラーゼスの古い記憶によるとコーヒーの実はパン、煎じた液はバンカムと呼ばれ､胃に良いもので薬のように用いられていると記されています。
その後、イスラム教の寺院の僧達によって夜通しのお祈りをする時に､眠気を追い払うためにコーヒーが飲まれ、門外不出の特別な飲み物とされていました。
１４５４年に一般のイスラム教徒たちも飲むことが許されるようになると、寺院の近くにコーヒーの露店が数多く並び、人々はお祈りの前にコーヒーを飲むようになりました。この頃は嗜好品というより、儀式的なものとして飲まれていました。

ヨーロッパでの流行

１５世紀になるとコーヒーはメッカ、エジプト、ダマスカス、アレッポ、トルコとイスラム教圏に広がってゆきます。あまりのコーヒー人気にメッカやカイロでは、信仰の冒とく、人々が集うので危険であるなどの理由でついに、「コーヒー禁止令」がだされ、弾圧が起こりました。当時のエジプト王がコーヒー好きだったため、禁止令はすぐに撤回されましたが、以後も弾圧は何度か起こります。
１５５４年には世界で始めてのコーヒー店「カーネス」が、トルコのコンスタンチノーブル（現在のイスタンブール）にオープンし､コーヒー文化が栄えていきました。
その後ベネチア、ロンドン、アムステルダム、パリ、ウィーン・・・・・とコーヒーはヨーロッパの国々へ広がっていきました。
ロンドンではコーヒーハウスが次々と作られ、コーヒーを飲むだけでなく、人々が集まり情報交換が出来る場として人気を博しました。ビジネスや文化、政治の話がま交わされ、保険業や仲介業などが生まれていったのです。
パリにはカフェがオープンし､コーヒーはポピューラーな飲み物になっていきました。作家や詩人、画家が集まるカフェもあり、文化や芸術に重要な役割を果たしました。

日本のコーヒー

すでに日本では緑茶という嗜好品がありましたが、どのようにしてコーヒーが人々にうけいれられていったのでしょうか。
江戸時代の日本は鎖国状態にあったため､長崎の出島にコーヒーが伝わりましたが、ほんの一部の人しか飲むことが出来ませんでした。明治時代の文明開化によりコーヒーを口にする人は増えましたが、大衆化したのは大正時代になってからのことです。