Trash 2013 winter Issue THE NEXT DAY を繙く試み |
How Does The Grass Grow |
駅のそばに墓苑がある なんという悲哀と悲嘆 もしも時計が逆戻りできるなら 死したる者等を忘るるなかれ yayaya… (くりかえし) 私は敗北のうちに そして君は眠りのなかで溜息をつく
(大意)
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【How Does The Grass Grow】 薄々でもなく、私はアルバムのオフィシャル邦訳を読んだ時に既に「重い怒りの錘り」がアルバムに吊り下げられているのを感じざるをえなかった。 草生す訳は何処にや 血なり血なり血なり 今、目の前にはカウチとTVがあり、窓の外には晴天があろうと、WEBによって、こんなにまでも小さくなったこの世界では、MacBookを開いただけで、戦争も血溜まりも、直ぐ、もう今此処に、この眼前に展開しているのだから。
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I’d rather be high |
いまやナボコフは太陽に晒されている クレアやレディーマナーズは飲んでいる むしろハイでいたい 砂に埋められた男達に銃口を向けるよりは テムズは黒く、塔は暗い (以下繰り返し) 私は17歳 みてくれ通り (以下繰り返し) ※ 表現主義の画家Isaac Grünewald 1889 -1946の「疫病・ビーチ」という絵がある。
(大意) |
【I’d rather be high】 ロシアの生んだ偉大な知識人であり亡命作家であるウラジーミル・ナボコフは、「ロリータ」の著者であり、思春期に至り掛かる少女の妖しい性的な魅力の陰りを難解な比喩で著し尽くし、今日我々が知る「ロリータ」という言葉にその意味を付与した作家である。ウィキペディアによればチェス・プロブレム(審美性を追求するチェスパズル)作者でもあった。 そして、ここにも墓地が現れる。 ここで縒りあわされた歌はその糾える根源へ到達する。 ヴィトンの贅を尽くした美しい(そして豪華なスリルの)CM映像とはうらはらの、前世紀のソルジャー達が軍靴で舞踏するPVも意味深長に…ここにもBOWIEの油断無き怒りが熾火となって、静かに燃え広がっている。
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極私的考察 |
難解ながら、イメージは氾濫する大河のように、私たちに押し寄せてくる。 今回も2編を友人の手を借りて抄訳してみた。 インターネットでは、日本の代表的ファンサイトElmoさんの「TVC15」とともすけさんのブログ「Silenceのほとりで散歩 by ともすけ」で歌詞の考察がされているので、熱心なBOWIEファン諸氏はそちらを当たられたい。 David Bowieが2年を費やし、10年ぶりに発表したアルバム。 ロンドンで行われている(8月11日が奇しくも最終日だ)大回顧展「DAVID BOWIE IS」は、世界を巡回している。 TVC15のElmoさん、ラストイベントにも参加したjojoさんからのお土産話でその展の意義の深さを垣間見た。 願わくば日本巡回が待たれるところである。 2014 1月1日 TRASH |