The outline of belne's love
















BELNE'S LOVE第一部の物語
1970年代の初頭、既にスターダムを手に入れていた「ガードルード・レアモン」は、親友にして師であるシャンソニエ「スーヴヌィール・ド・アレキサンドリア・ヴェルネ」から、突然の引退を知らされ、伝説的な彼自身の名「薔薇の名前」を継がせるという若い男を託される。
 ロンドンの街路でガードルード・レアモンが見出したその男〔ヘンリィ〕は、少年期に父親に撃たれ、頭部にいつ死に至るか知れぬ致命的な傷を持っていた。彼は母親とその恋人との子であり、父は母を道連れに自死していた。
 スーヴヌィール・ド・アレキサンドリア・ヴェルネからその名を譲られた男ベルネ(ヘンリィ)はガードルードの助力で歌の世界に分け入ってゆくことになる。

  
ガードルードが見出した画家「アルドウ」もベルネと出会いベルネを描く。アルドウの描くベルネは神秘と示唆に満ち、やがてベルネもアルドウを強く意識してゆくことになる。
(蒼の男)
ガードルードは自分のステージの最後にベルネをステージに上げデビューさせる。その衝撃的なデビューはマスコミのフロントページを飾り、一躍ベルネは時代の寵児となる。

ガードルードはベルネの悲劇的な頭部の傷の真実を知り慄然とするが、「死は何れ誰の下をも訪れる、私を信じろ」とベルネに告げる。
強い信頼関係を以て音楽活動を続けるふたり。

(デスタン-)
だが、ある日ベルネはガードルードの眼前で倒れる。昏倒するベルネに為すすべもない自身にガードルードは強い衝撃を受ける。
医師「ブラス」の努力で生還したベルネだがその頭部から死の刻印が取り去られた訳では無かった。憔悴のままガードルードは自身のステージに上る。観客のざわめきの中ガードルードが見上げたステージにはベルネの姿があった。
(バラード-コメディ!- ダンス) 
すべてを擲ってベルネにかける決心をするガードルードは遂に事実上シーンを引退し、ベースギターとしてベルネのバックバンドに参加する。
ガードルードのデビュー当時から彼に忠誠を尽くすギタリスト「スタン・ナイト」はガードルードの音楽的停滞を警戒するが、スタンの心配をよそにガードルードとベルネは精力的に世界ツアーに乗り出してゆく。
ツアーに同行したアルドウは、ベルネへの愛情と、ベルネとガードルードの親密な関係との間で苦い感情を心底に抱きながら深く重くベルネへの想いを重ねて行く。ベルネもまた、アルドウに何か運命的なものを感じていた。
ツアーから戻って再びレコーディングに入ったベルネは、スタジオで倒れ、医師はガードルードに次の発作が多分最後になるだろうと告げるのだった。
(ラジオ-ク−ル-キャバレ)

早々に退院してきたベルネは、深夜ガードルードの寝室を訪れる。

スタジオに戻ったベルネは、薔薇の名前、その伝説の名に相応しい成就の歌「路上の花」を完成させる。
それは天才と呼ばれ、キングとさえ呼ばれるガードルードをも震撼させるものだった。
アルドウが美術を担当した映像には、あたかも神とも見紛うベルネが薔薇の花を踏みしだく姿が焼き付けられていた。
ガードルードの下を訪れたベルネは初めてガードルードに愛していると告げる。
すぐに世界ツアーがセットされ、歌は観客から歓喜を以て迎えられる。
大成功のうちに世界を回り、ファイナルの極東ツアーを目前にして、ベルネはシドニーの空港で静かにガードルードに別れを告げる。
ベルネには自分の死によってガードルードにもたらされる苦痛が耐え難いのだった。
ツアー最終の日本で二人は別れる。
ガードルードはロンドンで自らの音楽活動に、ベルネはアルドウと京都の街に漂泊の旅へと。

(doom -blond-razore )
静謐なアルドウとの日々の中でまるで既に失われた神話の中の存在の如く漂うベルネ。
そんなある日、精力的に音楽活動を再開したガードルードの新しい音と映像がスタンによって京都に送られる。
そのビデオに見入るベルネの中の情動を見てアルドウは、ベルネを置き去りに一人ロンドンに去ってしまう。
佳人「アントリニ・スインバーン」は、ベルネのバンドの若い鍵盤奏者であり、歯に衣着せぬ率直さと、真紅の目と髪とを持つ美貌を持つ。ベルネを心から愛する彼は京都に飛びベルネの下に訪れる。
自らの死がガードルードにもたらすものを恐れるベルネに、ガードルードがベルネの死を恐れるなら幾らでも、そうさせてやるべきだと訴える。「あんたは死んじゃうんだぜ」アントリニの言葉に強く動かされたベルネは遂にロンドンに帰る決心をする。
(rose-luck)
ベルネからの帰還の電話を受けたガードルードは、スタンに告げる。
「運など無い、必然だ。あの男は還ってくる。私の下に。」
ガードルードの復帰コンサートの初日の夜、コンサート会場の外の路上で二人は再会する。
沈黙の中に互いの存在を見出し、永遠に出会い続ける魂のように。
コンサートが終わり、楽屋でベルネはガードルードの腕を捉える。強く胸に抱き激しく接吻する。頬を涙でぬらしながら。
あたかも夕凪のように、二人は蜜月のごとき日々を過ごした。それは静かで日常的であり、音楽的なものに満たされていた。
(please-magenta)
 
ベルネもまた音楽活動を再会し、二人は1987年12月25日に、同じ夜を初日に、それぞれの世界ツアーに乗り出してゆくことになる。
幾分早く始まるガードルードのバックステージにベルネからの電話が掛かる。
「一年もの間あなたと離れていたのに、今あなたと一緒にいないのが苦痛だ。同じ夜にツアーの初日など止せば良かった」
苦笑して電話を切るガードルードはステージに赴く。そのステージはテレビで中継され、ベルネは自分のバックステージで、改めて自分のために今までガードルードが擲ったものの重さを実感していた。
やがてベルネのステージのスタート時間となり、ステージに赴いたベルネは一曲目を終えた直後ステージで倒れる。
知らせを受けたガードルードはまだステージ上にいた。
観客を擲って駆けつけるわけには行かない。
ガードルードは最後の曲を歌い終え、病院に向かう。
病室にはアルドウとアントリニが居た。
ベルネは気がつき、気分がいいと言う。
「とても気分がいい、歌いたい。」と。
病院の玄関に車を寄せたガードルードの車の電話が鳴る。
病室に駆けつけたガードルードにアントリニは「あなたを呼んでいたよ。」と告げる。
暗い病室で物言わぬベルネを抱きながらガードルードはつぶやく。「奇妙だ…何も感じない。」



記者会見でのガードルードは完全だった。
スタンの心配を拒むようにガードルードは一人屋敷に入りカギをかける。
 ガードルードは膝を折るようにソファに倒れ込んだ。冥府に赴く友の死を永遠の痛苦とともに噛み返すかのように…。
(no rose)

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