桜の季節

桜の季節
 春を待てない中小企業経営者三人が散った。残したものは、死亡保険金で借金を返せとの業務命令書。そして誓いの乾杯をしたのかビールの空き缶。三人はホテルで首を吊った。
 一社は死亡保険金で息を吹き返したが、二社は社長の命むなしく倒産した。三人が命を捨ててまで守ろうとしたのは何だったのだろうか。愛?家族?それとも会社?。
 散り際は桜のようにというのが日本の美学。借金が滞っての銀行での土下座は見苦しい。
借金を「返さない」のは悪だ。しかし「返せない」のなら銀行にも責任がある。銀行はビジネスとして審査をし貸したのだから。
 開き直ろう。「返せない」との土下座姿だって命がけならいいじゃないか。命の引換え相手が 借金だなんて悲しい。死ぬことはない。
 桜の咲く頃には貸し渋りは止み、景気も良くなると政府は言っていた。そしてもう桜は散った。天国の三人はこの地上の桜を一体どんな気持ちで見たのだろうか。聞いてみたい。


国策だったんだから
 世の中には「不良債務者」とよばれる「国策による破綻者」がたくさんいます。内需拡大を目標とし、金利を下げて、お金をだぶつかせて、バブルをつくったのはまさに「国策」でした。その「国策」に従って金融機関は貸し込み競争をしました。世の中の空気をすべてバブルにしておいて、そこにお金までつけてくれたのです。それが「国策」だったのです。
 平成4年4月の大蔵省銀行局長通達「銀行経営のあり方」には「投機的不動産融資、過剰な財テク融資、不健全な先に対する融資、その他社会的批判を受けるおそれの強い融資等は厳に慎むものとする。」とあります。この通達を逆読みすれば、それら貸し込み競争がいかに激しかったかがわかります。
「才覚と勇気のある人」は当然のこととして、この「国策」に迷わず協力しました。借金アレルギーの「まじめな資産家」に対しては「借金による相続税対策」が提案されました。躊躇していた「堅実なサラリーマン」に対しては、「ステップ償還・ゆとり償還」という当初5年間だけは返済額の少ない住宅ローンまで用意して、バブル世界に迎い入れました。皆が「国策」にはまってしまいました。
 夢のようなゴルフ場に突然連れていかれて、ゴルフクラブを握らされれば、誰でもボールを打ってしまいます。マンション購入・不動産投資・相続対策・株式投資・海外投資・ゴルフ会員権・変額保険・絵画・・・・・・
 そして「国策」が変わりました。ゴルフ場のルールが突然変わったのです。あの時に打ったボールはすべてオービーにされていまったのです。
 今度の「国策」は「不良債権処理」です。かつて「国策」にのってしまい破綻してしまった人たち「処理」することになったのです。

借金自殺時代…ローン破綻で「死なないため」のアドバイス
バードレポート第272号1999年9月20日

「借金なんかで死なないで」
厚生省の人口統計で98年の男性自殺者は2万2千人で前年比4割増。特にリストラに直面の50歳代は6千人で前年比54%増。警視庁統計では負債失業等の経済・生活問題を苦にした自殺は前年比7割増です。(日経99.8.7)
5年間だけは特に返済額が少なく、6年目からの返済額倍増もある住宅金融公庫「ゆとり償還」ローンは93年94年でした。地獄の6年目に突入しています。
93年といえば既に雇用不安もニュースになりマンション価格も急落です。そんな時期に「住宅政策」としてではなく「景気対策」として「ゆとり償還」を建設省は始めたのです。この無謀なローン制度はどれ程の人を苦しませ、どれ程の人を死に追いやるでしょうか。
エイズ薬害で厚生省は陳謝しました。しかし、残念ながらこちらの体質はいまだ変わっていません。現在も住宅ローン減税による「景気対策」続行中で、自殺予備軍拡大中です。
景気回復のニュースを目にしますが、「雇用なき景気回復」「リストラによる景気回復」です。
こんな時代にぎりぎりのローンを抱えてもいいのはリストラ・賃下げ・収入ダウンにならないという自信のある方だけです。

自殺しないための「順番
たとえ返済不可能の借金でも真面目な人ほどとことん無理して必死になって返済を続けます。
孫の預金までも解約し、返済を続けた方がいます。奥さんの実家を担保に加え、連帯保証人にまでした方がいます。友人仕事仲間への小口の支払いもせずに借金返済をした方がいます。
そこまでやっても最終的に返済できなくなれば終わりです。例えば自己破産でしょう。
しかし無理して返済した人には更にひどい地獄が待ってます。
食べなくてはいけません。孫の預金まで返済にあて一文無になり、生活をどうするのですか。破産するにもお金が必要です。
最後に頼りになるのは親戚です。実家まで破産の巻き添えにしたらだれも助けてくれません。
一度は破産しても立ち直らなくてはいけません。身近な友人や仕事仲間に不義理をしたなら、立ち直ることもできません。
破綻を意識したならば、迷惑をかけない順番・大切にする順番を決めましょう。
一番目は家族と親戚。苦しい時に生きるための同志であり、最大の応援団です。一番大切に。
二番目は、友人や仕事仲間。破綻後の再起に手を貸してくれる応援団。迷惑をかけぬように。
公的資金と低金利で守られる金融機関は最後でいいでしょう。
返済条件変更の相談にのってくれない金融機関でも返済を止めれば真っ当な対応が期待できます。(ただし危ないマチ金等は無理しても第1順位で返済を)
これが借金で自殺しないための順番です。そして必要不可欠なのが「見栄」を捨てる勇気です。

手元資金を厚くする時代
一部ファイナンシャルプランナーはいまだに預金取崩での住宅ローン「一部繰上げ返済」を勧めます。
余程の自信がない限りそんな愚かなことをしてはいけません。
虎の子定期預金の取崩しでローン一部繰上げ返済すれば、返済額の総額は確かに激減します。数字上で有利なのは事実です。
しかし虎の子預金がなくなったときに、リストラ・賃下げ・失業となったなら、一体どうするのでしょうか。即座に日々の生活に事欠くことになります。余裕金は必要です。
虎の子預金があれば、無収入でもしばらくは食べつなげます。苦しくなればローン返済を止めます。すぐ退去ということもなく、落ち着いたら返済すればいいのですし、競売になったとしてもそれまではタダで住めます。
無理な繰上げ返済の直後にリストラ直撃なら、即座に地獄の1丁目です。今は手元資金を厚くする時代です。こんな時代に繰上げ返済をしてよいのも今後の収入に不安のない人だけです。
目先の数字ばかりでなく時代の置れた状況を意識しましょう。

借金家庭崩壊…破綻から「妻子を守るため」のアドバイス
バードレポート第279号1999年11月08日

過大な借金で破綻寸前でも頑張り無理をするのが経営者です。でも無理をし過ぎると取り返しのつかないことになります。
妻子まで連帯保証人に入れます。しかしそこまでやってからの破綻では救いがありません。一家離散・夜逃げ・自殺…。

経済は急変します。今は心配なくとも最悪時のために借入リスクの管理を意識しましょう。

自宅持分を贈与してお
返済不能となり、金融機関が競売しようとしても、他人名義の不動産はてこずります。
配偶者が保証人でなく、自宅がまだ無担保なら配偶者贈与をしましょう。結婚20年経過なら評価額で2000万円分までは贈与税ゼロで共有持分の所有権移転ができます。
そうすれば将来「いざ競売」となっても他人名義が入っている不動産となり、なかなか競落されないで済みますし、競落されるまでは家族で住めます。最低競落価格も下がり、身内に競落してもらうこともできます。

破綻直前の贈与等は詐害行為として取消を求められますが、1-2年も前で確かな理由なら大丈夫なことも多いようです。
配偶者贈与は「20年間ありがとう」との気持を形にし、税法が定めた確かな制度です。いざの時にはありがたいものです。
もちろん贈与後に贈与分までも含めて抵当権を設定させては意味がありませんし、最近は共有持分を競落するプロもいますから万全とは言えませんが…。
なお、すでに抵当権が設定された不動産を所有権移転をしても抵当権者には対抗できません。

緊急避難への税務署の対応
過酷な債権者の取立から財産を守るために緊急に所有権移転登記をすることもあるでしょう。
このような登記に対して税務署は優しいようです。
債権者から追われての緊急避難目的での親族知人への形式的な所有権移転に対して「贈与課税する」などというヤボなことは言わないことも多いようです。

通称「名義変更通達」と呼ばれる通達に「やむを得ない理由による名義借用は贈与税をかけない」趣旨の定めがあります。
数年前までの国税局担当者による質疑応答集には「強制執行を免れるためで一定の場合はこのやむを得ない理由に該当する」と明確に書かれていました。
残念ながら現在の応答集にその記載はなくなっています。しかし通達改正されたのではありません。正々堂々と税務署に説明しましょう。税務署は金融機関に通知などしませんから。

<注意…一般の金融機関には通知されることはありません。しかし預金保険機構又は整理回収機構には通知されたり、あるいは預金保険機構又は整理回収機構の要請による税務調査もあるといわれています。2000.12.9.コメント追加>

妻子を連帯保証人から開放
ある借入についてのみ妻子が保証なら、無理しても優先返済して保証人をはずしましょう。
夫が破綻しても妻が保証人でなければ妻の預貯金等は救われます。そうすれば夫婦で何とかしのげます。妻子を守ることは自らを守ることにもなるのです。
やむをえず妻を保証人にするときも、何の連帯保証なのかよく見極めましょう。

言われるままだと金融機関に「包括根保証」とされてしまいます。簡単に「保証書」と書かれたペラペラの紙に実印を求められます。よく読むととんでもない文言がかかれています。
「現在および将来負担するいっさいの債務について債務者と連帯して保証債務を負う。」
こんな書類に簡単に印鑑をつくのはもちろん厳禁です。
連帯保証をするにも、特定された債務、たとえば「何月何日の何円の金銭消費貸借契約」と特定するように金融機関と交渉しましょう。何も言わなければあちらのペースです。そしていざという時はもう遅いのです。

誰を守るか
現実の債務整理の場面で重要なのは「誰を破産から守るか」の判断です。「誰が保証人なのか」「何の保証人になのか」すら分からないことも多々あります。
誰が保証人かで返済や交渉も変わります。妻子は何があっても守りましょう。借入が多額ならば、平時から、また、平時こそリスク管理が不可欠なのです。


自己責任時代…地主さんへの「破産しないため」のアドバイス
バードレポート第266号1999年8月2日

言われるままに……
借金苦の地主さんの相談が激増です。ご相談を受けて思うのは、「地主さんには、何と無防備な人が多いのだろうか」です。
「『無借金だから相続税が大変なんですよ。借金を増やしましょう。借金を増やすのが目的だから、高くていいものにしましょう』と、営業マンが、相続税対策を勧めてくれたんです。
熱心で親切なので言われるままに借金をし建築をしました。 ところが家賃下落で返済不能となり、銀行には競売にかけるぞと言われています。」
「こんなひどいプラン、何も考えず、誰にも相談せずに、言われるままに実行したのですか?
そもそも借金を増やすことを目的にするなんて間違いに決まっているじゃないですか。」
「真面な営業マンだったんです。まさかこんなことになるとは・・・。バブルだったから仕方ないと思っていますが・・・。」
「そうですねぇ・・・」と言い、借金清算のご相談を受けますが、心の中ではこう思っています。
「・・・バブル崩壊が原因ではなく、何も考えず、誰にも相談せず、他人まかせでこんなプランを実行したあなたが悪い。あなたの自己責任です・・・。」
土地神話時代は多少の失敗も地価上昇で補填できましたが、今では一つの失敗で命取りです。


ただほど高いものはない
地主さんとは不思議な方々です。10万円までのお金にとても細く、億円単位のお金にはとてもおおらかな人が多いようです。
専門家からアドバイスを受けるための数万円の経費をけちります。一方、億円単位の不動産の話となると慣れない金額のせいなのか、言われるままです。
そんな地主さん相手にビジネス展開する仕組みがあります。
「専門家による無料相談会」です。 そこにいけば、相談料支払いの心配なしで、専門家からアドバイスを受けることができます。上手に活用しましょう。
ただしそこには「ただほど高いものはない」という構図もひそんでいます。 専門家は無報酬で相談にのっているのではありません。専門家は「無料相談会」の主催者から報酬をもらいます。
専門家は職業倫理を持っており、決して嘘はつきません。 しかし考え方によっては判断が分かれることもよくあることです。そんな時には、「お客様」の利益になるようアドバイスや誘導をしがちです。それはお客様から報酬をもらうためには当然のサービスとも言えます。こうして何億円が動き始めます。
ここで、専門家にとっての「お客様」とは地主さんではなく報酬をいただく主催者のことです。

何が目的で、何が手段か
賃貸マンションを建築する目的は何でしょうか。 安全で効率のよい賃貸住宅経営をすることが「目的」でしょう。建築とは賃貸住宅経営をするための「手段」です。
さて、誰に相談しましょうか。「手段」の専門家だけでなく、「目的」の専門家にも相談しましょう。その専門家は地元の賃貸管理業者・賃貸仲介業者さんです。
「この地域はこの間取りがよくて、こう募集し管理して、家賃はこのくらい。建築費はいくらなら採算が合う。」
「バストイレは一緒がいいか・宅配ロッカーは・BSアンテナは・オートロックは……」
特に賃貸管理業は完成後の物件の管理受託が仕事です。甘い条件で物件の管理を引受けると後で自分が苦しみます。地主さんに一番近い立場にいます。
最初にやるべきは「目的」である賃貸住宅経営のプランをつくることです。その後に「手段」となる建築プランを考えるのです。 箱(建物)が先に決まっていて、その箱にあわせて中身(賃貸住宅経営)をいれるのではありません。中身にあわせた箱をつくるのです。
そしてもし相続対策が「目的」なら、当然にまず相続プランからです。順番を間違えての失敗や破産がどれほど多いことか・・・。


  by   ちりも積もりて



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