「借金なんかで死なないで」
厚生省の人口統計で98年の男性自殺者は2万2千人で前年比4割増。特にリストラに直面の50歳代は6千人で前年比54%増。警視庁統計では負債失業等の経済・生活問題を苦にした自殺は前年比7割増です。(日経99.8.7)
5年間だけは特に返済額が少なく、6年目からの返済額倍増もある住宅金融公庫「ゆとり償還」ローンは93年94年でした。地獄の6年目に突入しています。
93年といえば既に雇用不安もニュースになりマンション価格も急落です。そんな時期に「住宅政策」としてではなく「景気対策」として「ゆとり償還」を建設省は始めたのです。この無謀なローン制度はどれ程の人を苦しませ、どれ程の人を死に追いやるでしょうか。
エイズ薬害で厚生省は陳謝しました。しかし、残念ながらこちらの体質はいまだ変わっていません。現在も住宅ローン減税による「景気対策」続行中で、自殺予備軍拡大中です。
景気回復のニュースを目にしますが、「雇用なき景気回復」「リストラによる景気回復」です。
こんな時代にぎりぎりのローンを抱えてもいいのはリストラ・賃下げ・収入ダウンにならないという自信のある方だけです。
自殺しないための「順番」
たとえ返済不可能の借金でも真面目な人ほどとことん無理して必死になって返済を続けます。
孫の預金までも解約し、返済を続けた方がいます。奥さんの実家を担保に加え、連帯保証人にまでした方がいます。友人仕事仲間への小口の支払いもせずに借金返済をした方がいます。
そこまでやっても最終的に返済できなくなれば終わりです。例えば自己破産でしょう。
しかし無理して返済した人には更にひどい地獄が待ってます。
食べなくてはいけません。孫の預金まで返済にあて一文無になり、生活をどうするのですか。破産するにもお金が必要です。
最後に頼りになるのは親戚です。実家まで破産の巻き添えにしたらだれも助けてくれません。
一度は破産しても立ち直らなくてはいけません。身近な友人や仕事仲間に不義理をしたなら、立ち直ることもできません。
破綻を意識したならば、迷惑をかけない順番・大切にする順番を決めましょう。
一番目は家族と親戚。苦しい時に生きるための同志であり、最大の応援団です。一番大切に。
二番目は、友人や仕事仲間。破綻後の再起に手を貸してくれる応援団。迷惑をかけぬように。
公的資金と低金利で守られる金融機関は最後でいいでしょう。
返済条件変更の相談にのってくれない金融機関でも返済を止めれば真っ当な対応が期待できます。(ただし危ないマチ金等は無理しても第1順位で返済を)
これが借金で自殺しないための順番です。そして必要不可欠なのが「見栄」を捨てる勇気です。
手元資金を厚くする時代
一部ファイナンシャルプランナーはいまだに預金取崩での住宅ローン「一部繰上げ返済」を勧めます。
余程の自信がない限りそんな愚かなことをしてはいけません。
虎の子定期預金の取崩しでローン一部繰上げ返済すれば、返済額の総額は確かに激減します。数字上で有利なのは事実です。
しかし虎の子預金がなくなったときに、リストラ・賃下げ・失業となったなら、一体どうするのでしょうか。即座に日々の生活に事欠くことになります。余裕金は必要です。
虎の子預金があれば、無収入でもしばらくは食べつなげます。苦しくなればローン返済を止めます。すぐ退去ということもなく、落ち着いたら返済すればいいのですし、競売になったとしてもそれまではタダで住めます。
無理な繰上げ返済の直後にリストラ直撃なら、即座に地獄の1丁目です。今は手元資金を厚くする時代です。こんな時代に繰上げ返済をしてよいのも今後の収入に不安のない人だけです。
目先の数字ばかりでなく時代の置れた状況を意識しましょう。
過大な借金で破綻寸前でも頑張り無理をするのが経営者です。でも無理をし過ぎると取り返しのつかないことになります。
妻子まで連帯保証人に入れます。しかしそこまでやってからの破綻では救いがありません。一家離散・夜逃げ・自殺…。
経済は急変します。今は心配なくとも最悪時のために借入リスクの管理を意識しましょう。
自宅持分を贈与しておく
返済不能となり、金融機関が競売しようとしても、他人名義の不動産はてこずります。
配偶者が保証人でなく、自宅がまだ無担保なら配偶者贈与をしましょう。結婚20年経過なら評価額で2000万円分までは贈与税ゼロで共有持分の所有権移転ができます。
そうすれば将来「いざ競売」となっても他人名義が入っている不動産となり、なかなか競落されないで済みますし、競落されるまでは家族で住めます。最低競落価格も下がり、身内に競落してもらうこともできます。
破綻直前の贈与等は詐害行為として取消を求められますが、1-2年も前で確かな理由なら大丈夫なことも多いようです。
配偶者贈与は「20年間ありがとう」との気持を形にし、税法が定めた確かな制度です。いざの時にはありがたいものです。
もちろん贈与後に贈与分までも含めて抵当権を設定させては意味がありませんし、最近は共有持分を競落するプロもいますから万全とは言えませんが…。
なお、すでに抵当権が設定された不動産を所有権移転をしても抵当権者には対抗できません。
緊急避難への税務署の対応
過酷な債権者の取立から財産を守るために緊急に所有権移転登記をすることもあるでしょう。
このような登記に対して税務署は優しいようです。
債権者から追われての緊急避難目的での親族知人への形式的な所有権移転に対して「贈与課税する」などというヤボなことは言わないことも多いようです。
通称「名義変更通達」と呼ばれる通達に「やむを得ない理由による名義借用は贈与税をかけない」趣旨の定めがあります。
数年前までの国税局担当者による質疑応答集には「強制執行を免れるためで一定の場合はこのやむを得ない理由に該当する」と明確に書かれていました。
残念ながら現在の応答集にその記載はなくなっています。しかし通達改正されたのではありません。正々堂々と税務署に説明しましょう。税務署は金融機関に通知などしませんから。
<注意…一般の金融機関には通知されることはありません。しかし預金保険機構又は整理回収機構には通知されたり、あるいは預金保険機構又は整理回収機構の要請による税務調査もあるといわれています。2000.12.9.コメント追加>
妻子を連帯保証人から開放
ある借入についてのみ妻子が保証なら、無理しても優先返済して保証人をはずしましょう。
夫が破綻しても妻が保証人でなければ妻の預貯金等は救われます。そうすれば夫婦で何とかしのげます。妻子を守ることは自らを守ることにもなるのです。
やむをえず妻を保証人にするときも、何の連帯保証なのかよく見極めましょう。
言われるままだと金融機関に「包括根保証」とされてしまいます。簡単に「保証書」と書かれたペラペラの紙に実印を求められます。よく読むととんでもない文言がかかれています。
「現在および将来負担するいっさいの債務について債務者と連帯して保証債務を負う。」
こんな書類に簡単に印鑑をつくのはもちろん厳禁です。
連帯保証をするにも、特定された債務、たとえば「何月何日の何円の金銭消費貸借契約」と特定するように金融機関と交渉しましょう。何も言わなければあちらのペースです。そしていざという時はもう遅いのです。
誰を守るか
現実の債務整理の場面で重要なのは「誰を破産から守るか」の判断です。「誰が保証人なのか」「何の保証人になのか」すら分からないことも多々あります。
誰が保証人かで返済や交渉も変わります。妻子は何があっても守りましょう。借入が多額ならば、平時から、また、平時こそリスク管理が不可欠なのです。
何が目的で、何が手段か
賃貸マンションを建築する目的は何でしょうか。
安全で効率のよい賃貸住宅経営をすることが「目的」でしょう。建築とは賃貸住宅経営をするための「手段」です。
さて、誰に相談しましょうか。「手段」の専門家だけでなく、「目的」の専門家にも相談しましょう。その専門家は地元の賃貸管理業者・賃貸仲介業者さんです。
「この地域はこの間取りがよくて、こう募集し管理して、家賃はこのくらい。建築費はいくらなら採算が合う。」
「バストイレは一緒がいいか・宅配ロッカーは・BSアンテナは・オートロックは……」
特に賃貸管理業は完成後の物件の管理受託が仕事です。甘い条件で物件の管理を引受けると後で自分が苦しみます。地主さんに一番近い立場にいます。
最初にやるべきは「目的」である賃貸住宅経営のプランをつくることです。その後に「手段」となる建築プランを考えるのです。
箱(建物)が先に決まっていて、その箱にあわせて中身(賃貸住宅経営)をいれるのではありません。中身にあわせた箱をつくるのです。
そしてもし相続対策が「目的」なら、当然にまず相続プランからです。順番を間違えての失敗や破産がどれほど多いことか・・・。