服装について

 15世紀以降、ゴルフの発展に中心的役割をはたしてきたスコットランドのスチュワート王家に、次のような家訓が存在した。
「服装は我のために非ず、相手に対する礼儀なり」

 1744年に設立された最古のクラブ組織「アナラブル・カンパニー・オブ・エディンバラ・ゴルファーズ」では、運営に一定のルールが必要と考え、設立憲章の中にスチュワート家の家訓を持ち込むことにした。当時の鹿皮に書かれた会則の中に次のような文字が見られる。
「ゴルフにふさわしい服装とは、相手に不快な印象を与えず、上品、優雅な印象の中にも機能性が宿ること」

 設立から約250年経過した最古のクラブが、現在の「ミュアフィールド」というわけだが、当初からクラブハウスが重要な社交場として位置づけたため、「相手に対する礼儀なり」の一項目がいまも厳重に守られる。

・・・「人間だけが生まれたままの姿では歩けないのだ。着ることは神の命令、本人のセンスを知るヒントにされた。ゆえに服装は清潔で明るいのが1番。反対語の不潔、暗いものが、人から最も嫌われる」

・・・冠婚葬祭のすべても相手に対する礼儀であって、われのためだけなら私もドテラと浴衣で暮らしたい。しかし、衣へんに禁ずると書いて「襟(えり)」と読むが如く、襟はあるがままに正すのが礼儀だというのに、男女プロの多くが襟を立てて得意顔だ。プロがやればアマも真似するのがゴルフの道理、近ごろでは訳知り顔のいい大人まで平気でシャツの襟を立てる時代となった。もし日焼けがイヤだと言うなら、インドアスポーツに転向しなさい。・・・

夏坂 健 「GOLF TODAY」1-20 2000No.206 花があったら「アンプレヤブル!」Fより

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