「文学横浜の会」

 文横だより

<11月号>

過去の「文横だより」

平成25年11月3日


ハロウィーンと言う風習、
最近聞いたばかりと思っていたが、もう日本に定着したのだろうか。

キリスト教徒でもないのに何がクリスマスだ、
と親父は言っていたそうだ。
その親父も子供の嬉しそうな笑顔に負けてプレゼントを用意した。

ハロウィーンやらも衣料・お菓子業界の陰謀だとは考えず、
子供が喜べばいいのかなぁ。

ならばこの際、イスラム教の子供が喜びそうな催しはないだろううか。
それこそどんな神様でも受け入れる我が国の心の広さだ。

こんな事を言うと宗教に対して節操のなさ、
一神教の原理主義者からは「神への冒涜」と言われるのだろうか。

           ★

文横だより2013年11月号を送ります。

◆出席者
 浅丘、遠藤、金田、佐藤、篠田、山下

◆読書会テーマ
 「人間の運命」ショーロホフ、担当者(篠田)
 11月2日(土)18時〜

 いきなり私的話で恐縮だが、ショーロホフ(1905〜1984)というと、筆者が高校一年の冬に、当時文庫本で全八冊に及んだ代表作の長編『静かなドン』を読んだのが出会いである。冬休み中、世界の名作文学の文庫本を一日一冊読むことをノルマにして次々に読んだ中の一つであった。時代に翻弄されるコサックを描いたロシア大河小説の世界にどっぷり浸かって抜け出せなくなり、新学期の初日、わいわいがやがや賑わう教室の中で、ぼんやりとして、一時的に人と口がきけない状態に陥ったこと思い起こす。

 今回、そのショーロホフの短編『人間の運命』をテーマに選んだ。大袈裟なタイトルだが読むと頷ける。『静かなドン』完結から16年後、ショーロホフ51歳の円熟期の代表作だけあり、実に短編小説としての完成度の高い作品に思える。

 以下の概略の通り、何よりも活発に交わされたメンバーの感想こそが作品のテーマのほとんどを言い当てているようだ。
「生きる奴は生きる、死ぬ奴は死ぬ。戦争で生きるか死ぬかは運命というのがよく分かる。最後に戦争孤児を育てることになる部分が救いを与えている」
「帝政時代の崩れゆく儚さを描くロシア文学とはまた異なる世界を描いて成功している。ショーロホフの場合、土着性、風土性を生かしたところに価値がある。また、政治的な中立性を保っているがゆえに評価され、生き残ってきたのであろう」
「ロシア人の不撓不屈な側面や気の毒な人をいたわる側面をよく表現している。また、主人公が捕虜になった際のドイツ軍司令官とのやり取りのヤマ場の場面には、ロシア人にとっての歌舞伎十八番的な痛快さがあることが分かる。さらに、スラング的な表現が巧みで、民族的な賛歌、土着性がよく表現され、ロシアとはこういうものだ、という一つの側面を知ることができた」
「短編でありながらとても深みがある。表現も豊か。ロシア人全てを表している訳ではないだろうが、ドイツ軍司令官に銃口を向けられてもプライドを見せる点にロシア人の一つの特性が描かれているのが分かる。(短編集所収の他の作品なども含めて)情にもほだされるが無情に人を殺すという両側面を有している点を感じる。ショーロホフの実際に見て来た体験を振り返っているのではないだろうかと想像させる」
「大変な目にあいながら、主人公がとても逞しく見えた。『人間の運命』のタイトルがよく当て嵌まっている内容であった。(角川文庫版の)表紙のイラストが綺麗だと思った」

 僅か文庫本で50ページという短さなのに、戦争の悲惨さ、人間に内在する残酷性、ロシア人のもつ勇猛果敢さや労りなどの民族的特性、そして時代に翻弄される人間の運命といった、THIS IS 世界文学、と唸らせられる普遍性が宿っているように思われた。それでいて、悲劇、スリル、救い、といったヤマ場がドラマチックに展開され、ただ重厚なだけでなく面白さも充分に併せ持っている。

    以上、篠田記

◆次回
 12月7日(土)18時〜
 読書会担当者は山下さんです。  (テーマは[或る「小倉日記」伝]松本清張作、新潮文庫、他)
 入手は図書館、新刊書店またはAMAZON、「日本の古書店」等古書市場で。

◆その他
 ・次回12月は忘年会を兼ねます。
 ・1月の読書会担当者は佐藤さんです。
 ・45号の執筆者は福谷さん、遠藤さん、浅丘さん、堀さん、佐藤さん、篠田さん、山下さん、河野さん、そして金田です。
  約320枚、初校が届き次第郵送します。

(金田)


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